『ロスト・イン・トランスレーション』や『ヴァージン・スーサイズ』などで高い評価を得たソフィア・コッポラ監督が、Apple TV+とタッグを組んで製作予定だったドラマシリーズの企画が頓挫した経緯を語っている。また、このミニシリーズには、ホラー映画『ミッドサマー』やマーベル映画『ブラック・ウィドウ』で注目されたフローレンス・ピューが出演交渉中だったことも明らかとなった。
スタジオ幹部は主人公のキャラクターを理解できなかった
2020年5月、ソフィア・コッポラがイーディス・ウォートンの小説「The Custom of the Country」を映像化し、初のドラマシリーズを手掛けることが発表されたが、2021年末に企画は打ち切られた。
1913年に出版された小説では、美貌を武器にニューヨークの上流階級で成功を目指す、中西部出身のアンディーン・スプラッグを主人公に描かれる。米New Yorkerによると、フローレンス・ピューがアンディーン役で出演交渉中だったそうだが、正式にキャスティングされていた訳ではなかったようだ。
米New Yorkerのインタビューで、コッポラはプロジェクトが打ち切りになった件に言及し、「Appleが企画の資金提供を止めたんです。それには本当にウンザリしました。スタジオには無限のリソースがあると思っていましたから」と、当時を振り返った。
さらに、コッポラはAppleが資金を提供してくれなかった理由として、「スタジオ幹部はアンディーンのキャラクターを理解できなかったんです。彼女を“好きになるのが難しい”からです。でも、それってトニー・ソプラノ(『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』の主人公)もですよね!」とコメントしている。
全5話になる予定だったミニシリーズの製作予算については、自身が監督を務め、製作費が4000万ドルだった『マリー・アントワネット』を引き合いに出し、ドラマ版『The Custom of the Country』の予算は、『マリー・アントワネット』の5本分だっともほのめかしている。ということは、その製作費は2億ドルにも上り、ドラマシリーズとしては破格の数字となる。もしかしたらApple TV+は、幹部らが共感できないキャラクターを主人公に描くドラマシリーズに、それほどの資金を投入することに及び腰になってしまったのかもしれない。
Apple TV+との決裂についてコッポラは、「おそらく、少し前に別れるべきだったと分かっていた関係のようなものでした」と例えていた。「The Custom of the Country」のプロジェクトがキャンセルとなった後にコッポラは、エルヴィス・プレスリーの元妻プリシラ・プレスリーを描く映画『Priscilla(原題)』を監督しており、日本では4月に公開予定だ。
(海外ドラマNAVI)
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