豪華キャストで何度も映画化された「ケープ・フィアー ―恐怖の岬」(文春文庫)のドラマ版『Cape Fear(原題)』で、ハリウッドを代表する二人の巨匠、スティーヴン・スピルバーグとマーティン・スコセッシがタッグを組む。両者がドラマシリーズで手を組むのは初めてのことで、買い手が殺到していると米Deadlineが伝えている。
映画版に関わった両者がドラマ版の製作総指揮者に
ダブルストライキがようやく終わったハリウッドのドラマ界では現在、新作をめぐる大規模な入札合戦が起きている。そんな中、古典スリラーを再構築し、ともにアカデミー賞受賞監督であるスピルバーグとスコセッシが製作総指揮を務める『Cape Fear』は複数の買い手が狙っているという。
入札はまだ初期段階で、HBOやNetflixも興味を持っていると報じられているが、可能性が高いと見られているのがApple TV+。スコセッシは2020年にAppleと映画・ドラマのファーストルック契約を結んでいる。
原作は、1957年に出版されたジョン・D・マクドナルドの小説。妻子と幸せに暮らす弁護士サムの日常は、マックスという男が刑務所を出所したことで一変。重い犯罪で長い間服役していたマックスは、こうなったのもサムのせいだと逆恨みし、彼と家族に向けた復讐を開始する…というストーリーだ。
1962年に『恐怖の岬』というタイトルで映画化されたバージョンは、当初メガホンを取るはずだったアルフレッド・ヒッチコックの絵コンテをもとにJ・リー・トンプソン(『ナバロンの要塞』)が監督を務め、グレゴリー・ペックとロバート・ミッチャムが競演。1991年にはスコセッシ監督がリメイクした『ケープ・フィアー』が公開され、ロバート・デ・ニーロ、ニック・ノルティ、ジェシカ・ラングなどが出演。主人公サムの一人娘を演じたジュリエット・ルイスは18歳でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされた。
ショーランナーを務めるニック・アントスカ(『Channel ZERO』)は幼い頃から1962年・1991年バージョンの映画がいずれも好きで、7年前からドラマ化の企画を持ち込み、アピールし続けていた。今回のドラマ版は、21 世紀におけるアメリカの犯罪に対する執着を検証する、緊張感のある現代的なスリラーになるとのこと。
ハリウッドを代表する名監督にして長年の友人でもあるスピルバーグとスコセッシ。1991年の『ケープ・フィアー』はもともとスピルバーグが企画しており、スコセッシはその間『シンドラーのリスト』に取り組んでいたが、二人は最終的に監督する作品を交換。出来上がった作品はいずれも高い評価を受け、『シンドラーのリスト』でスピルバーグはアカデミー賞の作品賞と監督賞を手にしている。2009年にスピルバーグがゴールデン・グローブ賞のセシル・B・デミル賞(生涯功労賞)を贈られた際には、4歳上のスコセッシがスピルバーグの経歴を紹介した。スピルバーグが設立したAmblin Entertainmentがドラマ版の製作を担うが、同プロダクションは1991年の映画版も担当している。原作の世界観を知り尽くしている巨匠たちが参加するとあって、本格的な作品になるのではと期待が高まる。
(海外ドラマNAVI)
参考元:米Deadline
Photo:スティーヴン・スピルバーグとマーティン・スコセッシ(2009年のゴールデン・グローブ賞授賞式) ©PAULINE FRENCH/FAMOUS