俳優はオーディションの報酬を支払われるべきか?元キャスティングディレクターが語る

5月初旬に始まった全米脚本家組合(WGA)のストライキは先日、およそ5ヵ月後に終結したが、7月中旬に始まった全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)のピケは今も続いている。そんな中、「俳優に対するオーディションの報酬支払いを強制化するべきなのか?」という話題が注目されている。

得る権利は70年以上前からあるけれど…

米Deadlineによると、1947年以来、SAG-AFTRAとの契約で、俳優はオーディションの報酬を請求する権利を保持しているのだという。

「俳優はオーディションの報酬を支払われるべきなのか?」との問題に一石を投じたのは、『バーン・ノーティス 元スパイの逆襲』や『プリティ・リトル・ライアーズ』などでキャスティングディレクターを務めたサマンサ・スティグリッツだ。

現在は演技コーチに転身している彼女は自身のInstagramに投稿した動画で、「本質的に、“就職面接”に当たるオーディションで俳優に報酬を支払うのは“問題がある”」としながらも、近年では俳優が自身の演技を撮影した「セルフテープ」をオーディション用に送ることが一般的になっており、その制作に費やす時間やエネルギーを考慮すると、「支払われるべきではないだろうか」との結論を出している。

しかしスティグリッツは、俳優がオーディションの報酬を受けることで生じるであろう問題にも言及。その問題とは、スタジオが審査を受ける俳優全員に報酬を支払うことになれば、コスト削減のために募集枠を狭め、集客を期待できて、そこそこ知名度があって実力が分かっている俳優ばかりをオーディションに呼ぶようになること。その結果、才能にあふれた無名俳優のチャンスを握り潰すことになりかねないと述べている。

一方、SAG-AFTRA交渉委員会のメンバーでもある俳優のシャーン・シャルマ(『ミスター・メルセデス』)は、このテーマに異なる意見を呈している。俳優はオーディションの報酬を請求する権利を保持しているものの、その請求要求はキャスティング・エージェンシーやスタジオに記録として残るため、報酬を求めたら印象が悪くなり、二度とオーディションに呼ばれないかもしれないと心配し、報酬を請求しない俳優が多いのだという。

とはいえ、最近ではセルフテープ制作の負担が大きくなっていることもあり、以前に比べるとオーディションの報酬を請求する俳優が増加傾向にあるとのこと。よってシャルマは、俳優が報酬請求に伴うリスクを心配することなく、出演料と同じように自動的にオーディションの報酬も支払われるシステムを作るべきだと訴えている。

またシャルマは、SAG-AFTRAにより進行中のストライキの交渉で、全米映画テレビ制作者協会(AMPTP)が全プロジェクトのオーディションでセルフテープを業界基準とし、その見返りとして報酬を支払わないとの“最終手段”に出るのではないかと恐れているという懸念を表していた。

なお、WGAの組合員は9月27日(水)より仕事を再開しており、それに続く形でSAG-AFTRAのストライキも近いうちに終結することが期待されている。(海外ドラマNAVI)

参考元:米Deadline