シーズン2にエイダンが戻ってきた経緯とは?『AND JUST LIKE THAT... / セックス・アンド・ザ・シティ新章』クリエイターインタビュー

米HBOで1998年から2004年まで放送された大ヒットドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』の続編である『AND JUST LIKE THAT... / セックス・アンド・ザ・シティ新章』がU-NEXTで配信中だ。同シリーズからキャスト&スタッフのインタビューを全4回にわたってご紹介! 1回目に登場するのは、25年前から同シリーズに携わってきたクリエイターのマイケル・パトリック・キング。いかにリアルに、いかにディテールにまでこだわって作品が作られているかや、シーズン2で帰ってくるエイダン、サマンサについて語ってくれた。(※シリーズのネタバレを含みますのでご注意ください)

「死」があったから「生」も描ける

――シーズン2は前シーズンからどのように続くのか教えてください。

シーズン1でキャリー・ブラッドショーは最愛の人(ビッグ)を失い、彼なしでこれからの人生をどうするのか、シーズンを通してその答えを探し続けました。彼女はビッグの遺灰をパリで撒いて彼に別れを告げた後、ポッドキャスト番組のプロデューサーであるフランクリンとエレベーターの中で自然にキスをする、というところでシーズン1が終わりました。そこからシーズン2が始まります。

私たちにとって、キャリーの人生の流れをできるだけ細かく描くのはとても重要なことなのです。シーズン1では「死」が多く語られていたので、暗く、冬のようだったとも言えます。でもシーズン2では春が訪れ、今までの生活に戻り、新たな成長と人間関係が始まります。そして新しいキャラクターたちの活躍の場も増え、彼女たちへの理解も深まります。新シーズンは「成長」についての物語。そして、作品を通して訴えたいメッセージは「人生は短い。だから生きよう」です。

――それは私たちみんなが心に留めておくべきメッセージですね。

ドラマで「死」を描く時の唯一の希望は、その後に続く「生」を描けること。現実だとそううまく切り替えられませんが。ドラマの中のキャリー・ブラッドショーは、視聴者の25年来の友人とも言えます。視聴者はこれまでキャリーがつまづきながらも進む姿を見守ってきました。そうやってドラマや本などを通してほかの誰かの生き方を知ることで、私たちは自分自身の生き方を見つめることができるのです。

AND JUST LIKE THAT... / セックス・アンド・ザ・シティ新章

――シーズン2の序盤、ミランダはロサンゼルスにいます。でも、彼女はロサンゼルスという柄ではないですよね。

おっしゃる通り、ミランダがロサンゼルスにいるというのは本当に場違いなんです。脚本家たちの会議中もそのことは分かっていました。ミランダ・ホッブスは新しい性的指向を持って、新しい環境で、ドラマの主演に起用されるような人とともに、LAで最高の人生を築こうと奮闘します。堅苦しいタイプの弁護士だったミランダの、生き生きとした姿を描くのはとても楽しい作業でした。

シーズン1で、ミランダは精神的に大きな問題を抱えていました。スティーブとの結婚が破綻し、もがきながら出口を探していたところでチェと出会いました。運命的に出会ったとはいえ、相手の仕事に合わせてロサンゼルスについていくのはまた別の話ですけど。

これまでのミランダは、何かバカげたことがあるとそれを指摘するというかなりの皮肉屋でしたから。だからこそ、彼女を巨大な“感覚遮断タンク”に入れてみたのです(シーズン2第1話「メットガラで会いましょう」参照)。変化を求めてLAに移り、“感覚遮断タンク”を試す一方、「こんなのバカげてる。一体私は何をしてるの?」とも感じている。そのどちらもミランダです。

ミランダというキャラクターは、葛藤があればあるほど輝く性質を持っています。NYとLAは本当にまったく違う性質を持つ場所なので、彼女をLAに置くというアイデアはとても面白いものでした。視覚的にも全然違いますから。ロサンゼルスのミランダがタトゥーを入れるかどうか考えている時、ニューヨークにいるキャリーはクローゼットの中にこもっている。私たちは常にこのシリーズを変化させようとしているので、愛するキャラクターたちの環境を少し変化させることにしたのです。

AND JUST LIKE THAT... / セックス・アンド・ザ・シティ新章

女性の本心を描いているからこそのリアリティ

――女性の多くは、人生を変えたいという想いを抱く時期があると思います。ミランダはそんな感情を体現していますね!

ミランダは基本的に少し型破りなところがあり、本当の自分が出せない環境に置かれると、停滞気味になり、あまり良くない形で結婚生活に終止符を打つことになります。“自分自身を幸せにする”というのは『セックス・アンド・ザ・シティ』の大きなテーマでもありました。それは“自分が幸せになれるような結婚相手を探す”ということではなく、自分の人生に満足するということです。社会が何と言おうが、自分の幸せは自分で決める。ミランダはその選択をシーズン1で下しました。そしてシーズン2では、自身の在り方を追求していきます。

シャーロットも『セックス・アンド・ザ・シティ』の頃と比べて随分変わりました。もともとシャーロットは閉鎖的で、完璧主義者でした。でも『AND JUST LIKE THAT...』シーズン2での彼女は「妻になり母になった私は、一体何者なの?」と自問自答します。一緒に脚本を書いてる女性たちから同じような話を聞いてたので、シャーロットのこうした感情は多くの人の共感を呼ぶと思います。皆ある時期を過ぎると、妻や母となった自分自身に気づき「でも“私”も存在するよね?」という思いを抱くからです。

AND JUST LIKE THAT... / セックス・アンド・ザ・シティ新章

――ライターズルーム(脚本会議)はどんな雰囲気ですか?

ライターズルームはとても私的な空間です。というのも、参加している脚本家はみんな思慮深いけど陽気で、自分自身のことや社会のこと、そしてお互いのことをいつも面白おかしく話しています。浮かんだアイデアはすべて審議にかけられるので、ライターズルームは陪審員室のようにも感じます。

例えば、エイダンの再登場については審議にかけられて、意見を出し合い、それらのアイデアややるべきでないことについて話し合いました。つまり、あるキャラクターについて、一人の視点だけでなく脚本家6人すべての視点が加味されるのです。性別も、人種も、境遇も違う6人の意見が尊重され、その根底にある人間性を紐解いていくのです。また、セックスのどういった部分が笑えるのか?といった問いかけもみんなで話し合います。その問いはこのドラマにとって常に重要な要素となっています。

――本作から加わったシーマとリサは魅力的で、まるでずっと昔からいるキャラクターのようですね。

そう言ってもらえて嬉しいです。僕も、彼女たちはこの世界観にピッタリなキャラクターだと感じています。とにかく役者の才能が素晴らしいので、シーズン2ではますます二人から目が離せなくなると思います。シーマ役のサリタ・チョウドリー、ナヤ役のカレン・ピットマン、リサ役のニコール・アリ・パーカー、そしてチェ役のサラ・ラミレスは、本当に才能あふれる役者です。彼女たちのような役者が、時にコミカルに、時にシリアスに、身近に感じ勇気をくれる存在として、キャラクターの魅力を最大限に引き出してくれています。彼女たちは皆、仕事熱心で住まいや洋服にもこだわるので7人のキャラクター作りはとても楽しいです。

ドレスは有名デザイナーによるオリジナル作品

――ニューヨークの街角での撮影はいかがでしたか?

キャリー役のサラ・ジェシカ・パーカー、ミランダ役のシンシア・ニクソン、シャーロット役のクリスティン・デイヴィスの3人と僕は25年前から一緒に仕事をしてきたので、とても楽しめました。そこに新たに加わったニコール、サリタ、サラ、カレンはまだ1年しか経ってない中、この“列車”に追いつこうと必死で走ってくれています。僕たちの列車はもう25年も線路の上を走っているけど、いつだって予測不能です。

AND JUST LIKE THAT... / セックス・アンド・ザ・シティ新章

ニューヨークという魅力的なロケーションで撮影できるなんてとても贅沢である上、役者が着こなすファッションも素晴らしいです。特に新たに加わったキャストたちはこの作品のファッションの素晴らしさに興奮しているようです。例えば、ニコールがメットガラで着用したヴァレンティノの真っ赤なドレスは、このドラマのために特別にデザインしてもらいました。撮影の日、ニコールはドレスのラベルに「Valentino, Nicole Ari Parker, for And Just Like That...」と書いてあるのを見て自分のためにデザインされたのだと知ったんです。そして私たちはリサがパークアベニューを横切るシーンでそのドレスをうまく風になびかせ、いかに美しく見せるか、そのシーンで映るエキストラに至るまで熟考しました。あれは私たちにとって贅沢で素晴らしいひと時だったし、願わくば視聴者にとってもそうであってほしいと思っています。

――ディテールにこだわった撮影なんですね!

とてもエキサイティングでした。ただ、撮影チームの規模がとても大きいので簡単ではありませんでした。チームの中には製作総指揮のジョン・メルフィのように長年一緒に働いているメンバーもいます。その一方で、シーズン2から初めて組むメンバーもいて、撮影チームは常に変化がある環境で新鮮です。

――エイダンについても教えてください。エイダンはこのシリーズに復帰する予定だったんですか?

シーズン2の制作が決まった時、何が良いかを考え始めました。最初に浮かんだ言葉はエイダンでした。このドラマの長年のファンにとって、エイダンは話題になると思ったから。そしてキャリーとエイダンはとても複雑な過去があるので、今どうなっているかが分かったら興奮するだろうと思ったのです。10年以上会っていなくて、最後に関係を持ったのは20年以上前。そういった過去を踏まえて、今の年齢に達した彼らはどうなっているのか? どのような関係なのか? 過去は今の関係性にどのような影響をもたらすのか? 二人に未来はあるのか?と。キャリーはこれまで二つの素晴らしい愛に恵まれました。その一つを失った時、頭に浮かぶのはもう一つの愛だと思います。彼は今までどうしていたのか、そして再会した二人はどうなるのかを描くのは、脚本家としてはとてもやり甲斐があるし、役者にとっても演じ甲斐があると思っています。

AND JUST LIKE THAT... / セックス・アンド・ザ・シティ新章

シーズン3の可能性は?

――ドラマに出てくる秘密をお披露目まで外部に漏らさない秘訣はありますか?

ビッグの死を秘密にできたのは奇跡だと思っています。だからこそ、視聴者に大きな衝撃を与えることができましたが、今では隠すことはとても難しくなりました。シーズン2でもいくつかサプライズを用意していましたが、その一部はもう世に出てしまいました。それがエイダンとサマンサです。シーズン2ではキャリーがサマンサからのテキストメッセージを見るのではなく、もう少し近い形での二人が交流する姿を届けたいと思っています。

サマンサの登場は起こるべくして起こったとも言えます。今年は『セックス・アンド・ザ・シティ』放送開始から25周年を迎えましたし、僕としては『AND JUST LIKE THAT... / セックス・アンド・ザ・シティ新章』を制作中も、サマンサはドラマのパーツの一つとしてずっと頭に浮かんでいました。僕の個人的なイメージでは、ドラマで描かれないところでもサマンサ、キャリー、ミランダ、シャーロットの4人は会話したりメールでやり取りをし合っている。だから、今回それをスクリーンの上で実現できてとても嬉しいです。

――シーズン3制作の可能性はありますか?

シーズン2の素晴らしいところは、視聴者が新しいキャラクターたちを気に入ってくれていることだと思います。そしてもちろんオリジナルキャラクターたちも同様に。熱心なファンも沢山ついてくれています。そんなファンは例えばキャリーと同世代だったとすれば、キャリーが34歳の時にはそのファンも34歳、キャリーが56歳になった今はファンも56歳になっています。そういった連帯感がある作品というのは貴重だと思っています。僕たちも今回のシーズンをとても気に入っています。活気のあるシーズンでした。シーズン3でもそれが続けられることを願っています。

WEBメディア「U-NEXT SQUARE」では、毎話配信後にあらすじや感想・レビューを掲載中。特設ページ(https://square.unext.jp/article/AND-JUST-LIKE-THAT-s2)も。

AND JUST LIKE THAT... / セックス・アンド・ザ・シティ新章

『AND JUST LIKE THAT... / セックス・アンド・ザ・シティ新章』シーズン2 配信情報

【配信開始日】8月3日(木)16:00より第8話配信予定(毎週木曜日に一話ずつ更新)※字幕・吹替版同時配信予定
【視聴形態】見放題
【公式サイト】https://www.video.unext.jp/title_k/and-just-like-that
【視聴サイト】https://video.unext.jp/title/SID0086801

『AND JUST LIKE THAT... / セックス・アンド・ザ・シティ新章』シーズン1~2はU-NEXTにて見放題で独占配信中。(海外ドラマNAVI)

Photo:『AND JUST LIKE THAT... / セックス・アンド・ザ・シティ新章』©2023 WarnerMedia Direct, LLC. All Rights Reserved. HBO Max™ is used under license.