今度はなんと脱獄犯?! あの大ヒットドラマ『刑事ジョン・ルーサー』が映画になってカムバック!

ゴールデングローブ賞、エミー賞など数々の栄誉に輝いた英BBCの大人気TVシリーズ『刑事ジョン・ルーサー』が、なんと映画になって完全復活! サスペンスアクション大作『刑事ジョン・ルーサー:フォールン・サン』が3月10日よりNetflixにて配信をスタートし、久々にイドリス・エルバが大暴れする。しかも、今回は姿なき殺人鬼の陰謀によって刑務所にぶち込まれ、犯人逮捕に燃えるルーサーの脱獄計画から始まるという破天荒な展開だ。【映画レビュー】

『刑事ジョン・ルーサー:フォールン・サン』あらすじ

連続殺人犯がロンドンを恐怖に陥れる中、若い清掃員が誘拐される事件が起きた。捜査に乗り出したルーサー(イドリス)は、鋭い洞察力で事件の背後に“導く者”の存在を感じるが、数日後、何者かに不正逮捕の過去を暴かれ、刑務所に入れられる。服役中、犯人がかつて取り逃がしたサイバーサイコパス、デヴィッド・ロビー(アンディ・サーキス)であることを知ったルーサーは仲間のサポートで脱獄を計画。悪夢を断ち切るために、一世一代の大勝負に出る。

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よくよく考えると、もはやルーサーは刑事ではない。厳密に言えば、『脱獄犯ジョン・ルーサー』なのだが、警察の目をかいくぐりながら捜査するという極めて孤独な環境が、ルーサーのはみ出し感、荒くれ感にちょっとした哀愁をプラスし、キャラクターの魅力をさらに際立たせる。個人的には、フーテンの寅さんのように(例えが変か?)時々現れては不穏な空気を流すルーサーの友?アリス・モーガン(ルース・ウィルソン『ローン・レンジャー』)が回想でも亡霊でもいいからサプライズ登場しないかな?と願ったが叶わず(いや、気付かなかっただけかも…)

ドラマ版を知らなくても100%楽しめる

とはいえ、ドラマ版を全く知らなくても(筆者もTVシリーズを全制覇しているわけではない)、本作は1本のサスペンスアクション映画として成立しているので、バックボーンやほかキャラクターとの関係性がわからなくても100%楽しめるので心配無用。ルーサーvs.サイコパスの核だけ分かればそれで十分だ。今回は、標的となった男たちの“死に匹敵するほどの弱み”を握り、彼らを脅迫しながらその家族にも近づくというウルトラ変態野郎が敵となって現れるが、やや嗜好が複雑で歪(いびつ)すぎる点は気になるものの、サンダーバード顔(これも例えが変ですみません)のアンディ・サーキスが不気味を極めた怪演で恐怖感を牽引してくれるので、ルーサーを苦しめる相手としては合格点と言えようか?

ファンが一番観たいイドリスを表現

ドラマ版『刑事ジョン・ルーサー』に続き、監督はジェイミー・ペイン(『ニュー・アムステルダム 医師たちのカルテ』『クワンティコ』)、脚本はドラマ版『モスキート・コースト』のニール・クロスがそれぞれ務め、息の合ったところを見せているが、イドリスの魅力を知り尽くした二人は、ファンが一番観たいイドリスを今回も表現してくれる。最近では、映画『アラビアンナイト 三千年の願い』(公開中)で魔法のランプの魔人に挑戦したりして、これはこれでウィル・スミスには出せないセクシーさを発揮しているが、やっぱり、イドリスといえば、ジョン・ルーサー。本作を観て、興味が湧いたらドラマ版全5シリーズを後追いしてみるのも面白い。

ちなみに若き日のシドニー・ポワチエやデンゼル・ワシントン、ジェイミー・フォックス、再度登場ウィル・スミス、最近ならマイケル・B・ジョーダンと…黒人俳優の中にも痺れるイケメンが大勢いるが、個人的にイドリスはダントツ1位。あのごつい体と相反するちょっと悲しそうな目で見つめられたら、男の筆者もイチコロだ。

(文/坂田正樹)

Photo:『刑事ジョン・ルーサー』©John Wilson/Netflix