次代の世継ぎである王女レイニラ・ターガリエンと“海蛇”の息子であるレーナー・ヴェラリオンの婚儀から10年の時が過ぎた。王都(キングズ・ランディング)では、レイニラが3人目の子供を今まさに出産しようとしている。王都にとって男児が産まれることはこれ以上ない喜びであったが、素直に喜べない理由もあった。(※本記事は第6話「王女と王妃」のネタバレを含みますのでご注意ください)
レイニラの息子の父親は?
純粋な古代ヴァリリアの血を受け継ぐレイニラとレーナーの子供であれば、もちろん髪色はプラチナ・ブロンドであろう。しかし、息子のジェセアリーズとルケアリーズの2人は黒髪だった。これに疑問を抱いたのが、何を隠そう、王妃のアリセントだ。
10年前の婚儀の席で宣戦布告めいた行動を取り、レイニラに想いを寄せるサー・クリストン・コールをその手中に収めている。息子エイゴンを鉄の玉座に座らせるために、本格的にレイニラを陥れる作戦を開始していた。
10年のタイムジャンプで環境に変化
10年という年月がレイニラの立場を大きく変えている。
レイニラはすでにサー・クリストンとの関係を解消し、新たに“王の手”であるライオネル公の息子サー・ハーウィンと関係を持っており、息子たちは彼の子供であることが伺える。
関係を絶たれてしまったサー・クリストンは、レイニラに対して言いようのない怒りを抱えているように見える。かつて愛した女性を、陰で“アバズレ”と揶揄し、現在の愛人であるサー・ハーウィンには並々ならぬ嫉妬の炎を燃やしている。
あれだけ清廉潔白な戦士だった男が、ここまで堕落してしまったことが悲しくて仕方ないが、善良な人間が闇堕ちするのは『ゲーム・オブ・スローンズ』ではよくあることだ。アリセントからは疑いの目を向けられ、夫であるレーナーは王宮で男遊びにふけり、王女として生活するレイニラの立場は日に日に危ういものへとなっていく。
一方、別の角度から玉座を狙う王弟デイモンもまた、10年という月日によって大きく変貌を遂げていた。レイニラと同様にヴェラリオン家の令嬢レーナを妻としたデイモンは2人の子供に恵まれ、ペントスの地で、三頭市(トライアーキー)の襲撃からペントスを守るために同盟を組むことを提案される。すでにデイモンは自らの人生に失望するかの如く覇気を失っているように見え、性格的にも少し穏やかになったようにさえ見える。
このペントスという都市は、『ゲーム・オブ・スローンズ 第一章:七王国戦記』で、デナーリス・ターガリエンを庇護していたイリリオの館がある場所でもある。そのため、ターガリエン家とは何かしらの同盟もしくは強固な絆があると考えられる。
さらに、デイモンに転機が。3人目の子供を出産することができなかったレーナが自ら命を絶ったことで、彼がどのような行動に出るのか、ここからシーズンフィナーレまでの注目ポイントと言えるだろう。
謀略を企てるラリス
そして、今回のエピソードにおいて最も衝撃的だったのは、やはりライオネル公のもう一人の息子であるラリス公の行いであろう。
王妃アリセントを傀儡とし、裏で様々な謀略を企てるラリスは、あろうことか父ライオネルと兄のハーウィンが向かったハレンの巨城に火をつけ、自らの手を汚すことなく2人を焼き殺すことに成功。これをあたかもアリセントの望みだったと言わんとする。
ラリス公が浮かべる信用ならぬ不敵な笑みは、『ゲーム・オブ・スローンズ』で策略に次ぐ策略でのし上がった“リトルフィンガー”ことピーター・ベイリッシュを彷彿させるが、今後、彼がターガリエン家にどんな災いをもたらすのか、こちらも目が離せない。
間もなくヴィセーリス王は命を落とすことは間違いないだろう。ヴィセーリス亡き後のキングズ・ランディングで鉄の玉座に座するのは誰になるのか? ドラゴンストーン城を本拠地として構える決意を固めたレイニラの運命は? そして、前任の“王の手”であるオットー・ハイタワーが舞い戻ることも匂わせており、さらに継承者争いは激化しそうな予感である。
『ドクター・フー』デヴィッド・テナントの息子が出演
最後にトリビアを一つ。本エピソードよりヴィセーリスとアリセントの息子エイゴンを演じているのは、タイ・テナント。イギリスの長寿SFドラマ『ドクター・フー』で10代目ドクター役に扮したデヴィッド・テナントの息子である。ちなみにデイモン役のマット・スミスは11代目ドクターとして有名。『ドクター・フー』ファンにとっても『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』は見逃せない作品となっている。ドラカリス!
『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』は、U-NEXTにて毎週月曜日に新エピソードが配信中。これまでのエピソードは特集ページからチェック。
(文/Zash)
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