乗ったら最後、弾丸列車は止まらない!怒涛のアクション『ブレット・トレイン』は屁理屈抜きで楽しもう

ブラッド・ピットが涙目になりながら高野山東京別院で大ヒット祈願したアクション大作『ブレット・トレイン』。9月1日(木)に公開されたばかりだが、各サイトでレビューがたくさん上がっているところを見ると、護摩祈祷が効いたのか、興行的にかなりウハウハのスタートになったと推察される。肝心のレビューは賛否両論? いや7対3の肌感覚で「面白い!」が勝っているような気もするが、好きか嫌いかに分かれるこの映画、筆者はもちろん大好物。つまらん要素がどこにあるんだ?というくらい何度もお代わりしたくなる快作だ。【映画レビュー】

伊坂幸太郎の小説「マリアビートル」を映画化

伊坂幸太郎の小説「マリアビートル」を『デッドプール2』のデヴィッド・リーチ監督が映画化した本作は、東京発→盛岡行の新幹線を(たぶん日本をよりシンボリックに描きたかったのだろう)東京発→京都行の超高速列車に舞台を変え、続々と乗り込んでくるワケありの殺し屋たちが狭い車内でとにかく暴れ倒すというスーパークレイジーアクション。

リアルとおふざけが入り混じった日本の風景は、これはもう確信犯。ここまで突き抜けたら、「日本はいまだにこんな風に観られているのか!」とマジでキレるのはナンセンス。チケット買って乗っちまったら、この“弾丸列車”をとことん楽しまないともったいない。

空気を一変させる真田広之

ブラピも、共に来日したアーロン・テイラー=ジョンソンも、列車に乗り込んでくる殺し屋たちは、基本ドジで、間抜けで、クレイジー。彼らの軽妙なやり取りを観ていると、「この映画はアクションという衣装をまとったトタバタコメディなんだ」ということがよくわかるが、そんな中、唯一、シリアスな味を出していたのが真田広之。

復讐に燃える日本人親子のおじいちゃん(もうそんな歳かよ!)エルダーを渋く演じ、オバカ一直線の空気を一変させる。“ザ・日本人”の佇まいは、威厳に満ちていて、アクションも衰え知らずのキレを魅せるが、見方を変えると、「さすが!」という誇らしい気持ちとともに、一人孤高の存在感を醸し出す真田が妙に浮いていて、ちょっと面白い感じになっているのは気のせいか? これはあくまでも私見だが、そこもわかって真田はどこまでも真摯にエルダーを演じ切っている気がしてならないのだ。

元スタントマンのリーチ監督が心血を注いで作ったアクションシーンは、動きも、撮り方も、物語と相乗するバランスも実にお見事。とにかく、ジェットコースター感覚で楽しんでほしい痛快作『ブレット・トレイン』。遊園地へ行って、「ただスピード出して、ワァーキャー言って、何が面白いんだバカヤロウ!」という人はいないけれど、映画になると、なかなか許してくれない風潮があるが、ここはひとつ、広~い心でスーパークレイジーアクションをとことん楽しんでいただきたい。

映画『ブレット・トレイン』は、全国の映画館で公開中。

(文/坂田正樹)

Photo:映画『ブレット・トレイン』