夏といえば娯楽映画、娯楽映画といえばハリウッド! コロナ禍の閉塞感から解放されつつある今、ポップコーンとコーラ片手に気楽に楽しめる作品でパーッと明るく行きたいところ。映画『ザ・ロストシティ』はそんなささやかな夢をドカーンと叶えてくれる、待ってましたのザ・ハリウッド・アクション・アドベンチャーだ。何より、サンドラ・ブロック(製作・主演)のもとに集結したチャニング・テイタム、ダニエル・ラドクリフ、ブラッド・ピットら豪華俳優陣によるぶっ飛びキャラ合戦は、どんなアクションシーンよりも観る者をゾクゾクさせてくれる。【映画レビュー】
『ザ・ロストシティ』あらすじ
あらすじはこんな感じ。ベストセラー作家のロレッタ(サンドラ)は、新作の宣伝ツアーに無理やり駆り出され超不機嫌。さらには本の表紙を飾るチャラ男のモデル、アラン(チャニング)との共演にイライラを募らせるが、そこに突如、謎の大富豪フェアファックス(ダニエル)が現れ、ロレッタを連れ去ってしまう。
困ったアランは救助のプロ、ジャック・トレーナー(ブラッド)を雇い、ロレッタ救出作戦を決行するが、たどり着いたのは大自然に覆われた不気味な孤島。思わぬトラブルが次々と襲いかかる…。
女性作家が秘境の地でトラブルに巻き込まれる物語といえば、『ロマンシング・ストーン 秘宝の谷』(1984)を思い浮かべてしまうが、本作は爆破あり、銃撃戦あり、カーチェイスあり、なんでもありのアクションに加え、キャラ暴走の“笑い”も見どころの一つ。
まずは、水と油の関係からスタートするロレッタ(サンドラ)とアラン(チャニング)の行方が気になるところだが、夫を亡くした悲しみを抱えるロレッタにとって、スター気取りのお調子者アランは地雷を踏みまくる問題児。
ところがアランの方はロレッタが思うほどチャラ男ではなく、どちらかとえいば“バカ”がつくほどピュアなナイスガイ。ロレッタのために命懸けで救出に向かう姿は好感さえ持てる。ただし…イメージタレントの盲点というか、筋肉は立派だが人を殴ったこともなければ、肝っ玉も小さく、やることなすことズッコケまくり。「助けに来たぜ!」の威勢の良さは最初だけ。二人で逃亡する姿はどこか滑稽で、スリルよりも“笑い”が上回る。
対照的に、ダニエル演じるフェアファックスは、“伝説の古代都市探し”という富豪の遊びに興じながら、その狂人ぶりをどんどん加速させる敵役キャラ。そのダークな存在感が本作をより面白く味付けしている。『ホーンズ 容疑者と告白の角』(2013)や『スイス・アーミー・マン』(2016)など一筋縄ではいかない役にご執心のダニエルにとって、まさに真骨頂。ロレッタの小説が古代都市を舞台にしているというだけで、著者を誘拐してしまう(しかもとんでもない荒技で)クレイジー野郎をあそこまで潔く演じられるのは、彼の大きな武器であることを改めて思い知らされた。
最後にカメオ出演と言われていたブラピの存在。かつて、映画製作でサンドラに助けてもらった貸しを返すカタチで出演したらしいが、これが胸のすくようなカッコよさ! スマホ一つでやって来る謎のお助けマンという漫画みたいなキャラなのだが、孤島に乗り込んだ際、役立たずのチャニングに代わって獅子奮迅の活躍を見せるその姿はファンならずとも歓喜したくなる。華麗な銃さばき、スキのない肉弾戦、相手を舐めたニヤケ顔…、わずか15分程度の出演にもかかわらず、圧倒的なカリスマ性で爪痕を残すブラピの凄さ。もしかすると、彼の出演シーンは本作一の見せ場かもしれない。
映画『ザ・ロストシティ』は、6月24日(金)より全国公開中。
(文/坂田正樹)
Photo:『ザ・ロストシティ』©2022 Paramount Pictures. All rights reserved.