スターチャンネルEX配信直前!『ハリー・パーマー 国際諜報局』見どころポイント

レン・デイトン原作の人気スパイ小説シリーズを映像化した新作ドラマ『ハリー・パーマー 国際諜報局』が、いよいよ日本で放送・配信スタートになる。放送に先がけて全世界のメディア向けに行われた記者会見イベントでのコメントを紹介しながら、今作の見どころについて取り上げていきたい。

TVシリーズ版『ハリー・パーマー 国際諜報局』とは?

『ハリー・パーマー 国際諜報局(原題・The Ipcress File)』は、レン・デイトンのスパイ小説『ハリー・パーマー』シリーズの一作目『イプクレス・ファイル』をもとにしたもの。軍事刑務所で8年間の服役を免れるために、特別諜報機関WOOC(P)で 諜報員としての活動を始めることになったハリー・パーマーの活躍を描く全6話のスパイサスペンスだ。マイケル・ケイン主演によるスパイ映画『国際諜報局』(1965年)のTV版リメイクであり、57年ぶりに新キャストで映像化されたことも話題を呼んだ。

ハリー・パーマー役は英俳優のジョー・コール(『ピーキー・ブラインダーズ』)。共演はルーシー・ボーイントン(『ザ・ポリティシャン』)、トム・ホランダー(『キングスマン:ファースト・エージェント』)、アシュリー・トーマス(『NYPDブルー』)。

映画『トレインスポッティング』のジョン・ホッジによる脚本で、ジェームズ・ワトキンス(『ブラック・ミラー』)が監督を手がける。

英民放ITV 局が、Netflixやアマゾン・プライムなどの有料会員制動画配信サービスに対抗すべく、2022年一番の話題作として総力体制で製作したドラマだ。

見どころ1 ジョー・コールがハリー・パーマーに挑む

『ハリー・パーマー 国際諜報局』の一番の注目といえば、主人公ハリー・パーマーの役作りだろう。何しろ、ハリー・パーマーといえばマイケル・ケインというように、映画版を演じたケインの黒眼鏡姿はアイコニックなスタイルになっている。それについて、ハリー役のジョー・コールはプレッシャーを感じなかったのだろうか。

「正直言うと、ハリー・パーマーのキャラクターについてはよく知らなかった。本は少し読んだし、映画も少し見た。だけど、自分でも気がつかないうちに、マイケル・ケインの物真似をやることになるんじゃないかと気がついた。そこですぐに映画の記憶を消去して、自分の直感に従って、自分のスタイルを作りだすことにした。マイケル・ケインの二番煎じは避けようと心がけた」と素直な心境を話している。

ハリー・パーマー=マイケル・ケインというイメージをジョー・コールがどのように払拭し、オリジナルのハリー・パーマー像を作り上げていくかが見どころのひとつになる。

見どころ2 1960年代と現代に通じる共通点

ジェームズ・ワトキンス監督が「本作はスパイ物語であると同時に、社会的流動性や、レイシズムとの戦い、女性の扱いについての問題を含む作品だ」と話しているように、『ハリー・パーマー 国際諜報局』では1960年代のイギリスを描くと同時に、現代にも通じる問題を提起している。

イギリス社会の階級構造もそのひとつだ。今作のハリー・パーマーは、労働者階級出身の庶民派である。料理が得意で、スーツは安物の既製品、経費を請求するために領収書も集める。オックスフォード大学やケンブリッジ大学出身のエリートばかりの英情報部のなかで、パーマーは異色の存在であり、中上流階級を相手に素手で殴り込みをかけていくような、ワーキングクラス・ヒーローでもある。もともと原作小説は、「007」へのアンチテーゼとして執筆されたというのも興味深い。

また、ルーシー・ボーイントン演じるジーン・コートニーは、情報部で働く才色兼備のエージェントだが、米国人婚約者との結婚を控えて将来に悩んでいるという設定。

ルーシーが「男社会のなかで女性として働くことがどういうことだったか、あの時代の若い女性の経験を語る存在がジーンでもある。ジーンは当時の女性に期待される生き方と情報部員としての二重生活を送っている。それまで2つの世界をバランス良く生きていたのに、結婚式が近づくにつれ、現実に期待されていることがだんだんとわかってきた」と語るように、ジーンの姿に現在の女性たちが共感できる部分も多いのではないだろうか。

さらに、本作は人種差別についても取り組む。アフリカ系米国人のCIA捜査官ポール・マドックスを演じるアシュリー・トーマスは「1960年代は黒人に対して人種的抑圧があった時代で、この問題をちゃんと扱いたかった。当時は黒人というだけで、能力があるのに関わらず、機会が奪われた時代だ。ポールがこの役職に就いているということは、非常に能力がある人物だったということ。敬意をもって彼を演じた」と話している。

見どころ3 本格的なスパイ・サスペンス

『ハリー・パーマー 国際諜報局』の舞台は、西側諸国(資本主義陣営)と東側諸国(社会・共産主義陣営)が対立していた冷戦下の1963年。冷戦というと、米国とソ連の間という印象が強いが、イギリスもソ連と対立しており、MI6などの諜報機関が、情報の収集、工作活動などを行い、ソ連情報部KGBとの情報合戦で二重スパイが暗躍した。映画『裏切りのサーカス』や『クーリエ:最高機密の運び屋』の世界は、まったくのフィクションではないのだ。現在、ロシアによるウクライナの軍事侵攻により、冷戦後のヨーロッパの安全保障の転機を迎えるなか、ハリー・パーマーの世界がよりリアルに感じられる。

なお、今作では、レン・デイトン原作とも映画版とも異なるストーリー展開になっているのも目が離せないポイントだ。

見どころ4 1960年代を再現

『ハリー・パーマー 国際諜報局』では、硬質な色合いの映像が、冷戦下の重苦しい空気と古き良きスパイ映画のハードボイルドな雰囲気を醸し出している。

また、スウィンギン・シックスティーズのファッションもスタイリッシュだ。ワトキンス監督も「1960年代のファッションをいろいろ調べ、単にクールに見えるだけでなく、キャラクターの性格も組み込んで考えた。Netflix『クイーンズ・ギャンビット』でもコスチュームが上手く使われていた。今は誰もがつらい経験をしている時だから、現実逃避かもしれないが、エレガンスな世界を楽しんでほしい。ジーンのビンテージドレスやダルビーとハリーのスーツの着こなしの違いなどにも注目して」と話している。

『ハリー・パーマー 国際諜報局』配信・放送情報

『ハリー・パーマー 国際諜報局』 は、5月6日(金)より「スターチャンネルEX」にて配信開始。6月7日(火)より「BS10 スターチャンネル」で独占日本初放送(6月5日15:00より第1話先行無料放送)。

(名取由恵 / Yoshie Natori)

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