今見るべき一押しドラマ!
ダン・スティーヴンスは本当に才能溢れる俳優!『ブライズ・スピリット』エドワード・ホール監督に直撃

『ダウントン・アビー』でお馴染みのダン・スティーヴンスが主演する新作映画『ブライズ・スピリット~夫をシェアしたくはありません!』が9月10日(金)より公開となる。本作でメガホンをとるエドワード・ホールは、ダンと時期にズレはあったものの『ダウントン・アビー』のエピソード監督も務めている。今回はそんなホール監督に、作品の見どころはもちろん、ダンとの思い出や本作独自のアイデアなどを伺った。

本作の原案はノエル・カワードによる1941年初演の戯曲「陽気な幽霊」。発表当時だけで約2000回にわたって上演された名作で、1945年には映画化もされている。

〈あらすじ〉
ベストセラー作家のチャールズ(ダン・スティーヴンス)は、妻のルース(アイラ・フィッシャー)とハリウッドに行くことを夢見て、自著の映画化脚本の執筆に取り組んでいたもののスランプから抜け出せずにいた。そこで、霊媒師マダム・アルカティ(ジュディ・デンチ)に頼んで、7年前に事故死した最初の妻エルヴィラ(レスリー・マン)を呼び戻す。実は彼の小説は全て、生前エルヴィラが生み出したアイデアを書き留めただけのものだった。魅力的なエルヴィラとの"共同"制作のおかげで執筆は順調に進むが、チャールズ以外から姿が見えないのをいいことに彼女の行動は次第にエスカレート。ルースはマダム・アルカティの元を訪れ、エルヴィラの追放を画策するが...。

――今この時代に、すでに映像化もされている歴史ある戯曲を改めて映画化するきっかけとなったものはなんだったのでしょうか。

元々の映画からは結構時間が経っているし、女性キャラクターたちの視点をもっと掘り下げたらどうなるんだろうと思ったんだ。この素晴らしい物語を新しい観客に届けたかったし、そこがワクワクしたところかな。

――本作は1930年代を舞台にしていますが、チャールズとルースが暮らす豪邸は近代主義的なアール・デコ住宅ですね。原案の解釈とは少し違うようですが、舞台の演出も多く手掛けている監督だからこそ変えた点など本作独自のアイデアを教えていただけますか。

こういう物語だと、いかにも"英国風"という感じのコテージやカントリーハウスが舞台になることが多いよね。それをあえて避けたかった。視覚的に何か面白いものはないかなと思ったときに、ルースだったらこういったアール・デコの家を選ぶだろうなと。どの部屋も乱れたところがなくて、美学的には日本の禅を感じるような完璧さ。チャールズさえも、ルースの求める夫像としてコントロールされているしね。がっつりコントロールされているその空間にワイルドな幽霊が現れて全部ひっくり返すわけだから、ルースにとっては本当に大変な状況だけど、それがドラマ的にも面白いかなと思ったんだ。

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それから、霊媒師のマダム・アルカティは元の演劇よりも重要な役になっている。偽物なのではないかな?と思わせながら、物語が展開していくと、実は一番真実を体現しているキャラクターだということが分かっていく。そうやって重層的にすることによって、視覚的にも面白いものができるのではないかと思ったんだ。

舞台の場合、 小さなスぺースで観客は想像力を使って観る必要がある。でも映画はすべてを見せるわけだから、世界観を小さくしてしまうと息苦しくなるんじゃないかと思ったんだ。だから、より大きな世界観を出したくて夫婦の夢はハリウッドで映画を作ることで、アメリカンドリームを追っている。そういう設定にすることで、当時の英国と米国の映画業界も描いたんだ。

――ちなみに"日本的な"とか"禅"というお話が出ましたが、日本にいらしたことはありますか?

実は1年ほど住んでいたことがあるんだ! 去るときはとても悲しかったよ。

――食材を上からや寄りで撮影しているシーンが印象的でした。その意図を教えていただけますか。

チャールズがワインを注いでいるときも上からのショットだったよね。あの瞬間の彼は、妻が作り上げた美しい部屋、お皿、食べ物、ワイン、グラス、そういった美しい生活に自己満足して自惚れているんだ。なぜ、そう見せるかというと、最後の彼の結末との高低差を出したいからね。あと、人が食べ飲みしながら虚栄心を感じる時って、つい笑ってしまうんだよ。僕の作品には結構そういうキャラクターの描き方が多いんだ。

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――これまでは主にTVシリーズの監督として活躍してきましたが、長編映画とシリーズの撮影の違いや苦労した点はありますか?

TVシリーズはスケジュールが厳しくて、スタッフたちもすごく鍛錬されていて、すべての面においてコントロールされている。だから、その日その場でのクリエイティブな可能性というのがそれによって発揮できないこともあるよね。映画はその点、有機的なアイデアを盛り込む余地があったりもする。ただ、この作品に関して言えば撮影期間は6週間。絵コンテも全部事前に用意して、スケジュールも決めて、毎日終了時間ギリギリまでやっていたよ(笑) 準備は自由さがあったものの、撮影はコントロールされてタイトなところもあったかな。

――主演のダン・スティーヴンスをはじめ、アイラ・フィッシャー、ジュディ・デンチ、レスリー・マンの主要キャストの皆さんがぴったりの配役のように思いました。撮影にあたって、彼らに何かリクエストしたこと、期待していたことがあれば教えてください。

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まず、キャスティングについて触れてくれて本当にありがとう。すごく時間がかかる作業だったから、そう言ってもらえるとすごく嬉しいよ。ノエル・カワードやオスカー・ワイルドなどの機知に富んだ作家のセリフは、じっくり語るのではなくて軽妙な感じなんだ。水面に石を投げて跳ねさせる、ああいう空気を含んだ感じ。あとは、今回は関係性のドラマだからそれぞれのキャラクターが登場していない時の物語がどんなものであるのか知っていることと、人間関係がどんなものであるのかをクリアにしていった。

――『ダウントン・アビー』を監督した時にはダン・スティーヴンスはすでに降板していましたが、現場などで『ダウントン・アビー』の話をちらっとしたりしましたか?

してないね。彼を初めて観たのがジュディ・デンチも出演していた2006年の「花粉熱」(脚本:ノエル・カワード)という舞台だったから、その話をしたね。それから、僕も彼もクリケットが大好きだから、それですごく盛り上がったよ。

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――ダンとまたタッグを組むことがあれば、どんな役をやってほしいですか?

彼は本当に才能あふれる俳優で、何でも演じられるんだよ! そんな中で、ぜひスリラーを一緒にやってみたいかな。彼の資質ですごいなと思うことの一つは、道徳的にはひどい行動や選択をしたとしても、感情の上では「分かるよ、そういうふうになるよね」と観客に納得させることができるところ。だからこそ、ダークなキャラクターが面白いのではないかと思うんだ。物議を醸しだすような、葛藤を抱えた役どころがいいね。『ユーロビジョン歌合戦 ~ファイア・サーガ物語~』(2020)を見たんだけど、ダンが演じていたキャラクターはぶっ飛んでいて、あんなこともできるんだと感心したしね。

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ダンらの軽妙なセリフの応酬が魅力の『ブライズ・スピリット~夫をシェアしたくはありません!』は、9月10日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー。
公式サイト:https://cinerack.jp/blithespirit/

(海外ドラマNAVI)

Photo:

映画『ブライズ・スピリット~夫をシェアしたくはありません!』© BLITHE SPIRIT PRODUCTIONS LTD 2020