日本人だけが知らない米の新TV事情~日本のバラエティ的思考が米TV番組に定着

昨年のエミー賞で司会だったジミー・ファロンが自身のトーク番組で、「MTVの『Silent Library』っていう番組に出たんだ。日本の番組を元にしていて、すごくバカバカしいことをやるんだよ」

『Silent Library』なんて聞いたことがなかったので調べてみると、日本のバラエティ番組『ガキの使いやあらへんで』の1コーナーから企画を頂戴した番組らしい。もうシーズン4だから、たいした人気だ。『Silent Library』は、図書館(のセット)内で、トランプのドクロマークを引いた人がお題として出された罰ゲームをやるというところまで、『ガキ使』とまんま同じ。MTVのおバカ番組『ジャッカス』と比べてもはるかに安上がりに出来そうだ。なるほどシーズンが続くはずである。

私はMTVのウォッチャーじゃないのでよく知らないけれど、MTVは他にも『ガキ使』など日本のバラエティ番組の企画を使っているらしい。MTVはリアリティーショー人気で、最も元気のいいケーブル局の一つ。そのパワーに日本のバラエティ番組が貢献しているとは、なんとも誇らしい。それが、ある一定(大多数?)の視聴者層にはあきれられてしまうような内容だとしても...。

3年前にABCが『I Survived a Japanese Game Show』という番組を放送し始めたときは本当にびっくりした。素人のアメリカ人出場者が、日本のTV番組に出たら...というコンセプト。よく日本のバラエティ番組でタレントがやらされる、しょうもないゲームを競うのである。いや、ゲーム自体はもっとバカバカしく誇張されている。どうせやるならなんでも派手にビッグにというのがアメリカ流なのだろう(番組自体はシーズン2で終了打ち切り。ちょっと時代が早かったかも?)。

日本のバラエティ番組が"公式に"元ネタとなっている番組の中で、一番知名度が高いのは、こちらもABCの『America"s Funniest Home Videos』。21シーズン目を迎え、まだまだ長寿を重ねそう。米の視聴者は日本の番組(『加トちゃんケンちゃん ごきげんテレビ』の1コーナー)が元となっているなんて、誰も知らないだろうけど。

今は『Shark Tank』(ABC)が人気だ。元ネタはもちろん『マネーの虎』。5年前にも『アメリカン・アイドル』のサイモン・コーウェルがプロデューサーとなって『American Inventor』として放送されたけれど、こちらは失敗。リアリティーショーのクリエーターとして名高いマーク・バーネット(『サバイバー』)が、2年前に生き返らせたのが、この『Shark Tank』だ。ビジネスのピッチ(プレゼンテーション)力に関しては、多分アメリカ人の右に出る国民はいないだろうし、個人事業家率の高い国だけあって、『Shark Tank』は米の国民性にあった企画だと思う。

また、最も人気のあるリアリティーショーの一つで、非公式ながら日本の番組が元ネタとなっていそうなのは、『Wipeout』(ABC)。これが『風雲たけし城』『SASUKE』とは関係ないなんて、よく言えたものである。米製作側はTBSと係争中らしいから、いつか『Wipeout』にTBSの名前がクレジットされることを信じている。

こうした日本のバラエティ番組人気の影のMVPは、Youtubeを始めとする、インターネットの映像サイトだろう。それまでにも米の業界関係者には日本の番組の企画の売り込みはあったのだろうが、映像サイトのおかげで、一般人にも「日本のTV番組はバカなことばっかりやってるけれど、想像力豊かだ」という認識が広まりつつある。米のドラマやシットコムでも「日本の○○みたいに××」(たとえば「日本のゲームショー(視聴者やタレントによる競技番組)みたいに、バカバカしい」)という台詞を時々耳にするようになった。映像サイトを見ない人にも「日本の○○は××なんだなあ」という刷り込みが、その番組を見る米及び世界中の視聴者にも広まるわけだ。

バラエティ番組に続き、最近、ふと思う。「米のTVコマーシャルが時々、日本チックである」と。フジヤマ、ゲイシャ、サムライじゃない。発想が日本ぽいのだ。米のTVコマーシャルは商品名連呼か感動系が多いから、ひねった笑いの日本的TVコマーシャルは米の視聴者には新鮮に見えるのだろう。

これまでは、米からの一方的な輸入超だったTV文化。今後は日本からの輸出がどんどん増えることに期待したい。

■『ジャッカス2.5 封・印・解・禁』
【発売元】パラマウント ジャパン
【価格】3,129円(税込)
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