今年はなかなかの粒揃いだったネットワーク系新ドラマ。NAVIでもスクリーニングのレポートをお届けしたが、実際にオンエアがスタートした結果はどうだったのか!? 9月に幕を開けたプレミア・シーズンから約2か月が経ち、そろそろ各作品の状況が見え始めた今日この頃。早くも打ち切りが決まった作品があるかと思えば、速攻でフルシーズン製作が決まった作品ありと、相変わらず熾烈なサバイバルを繰り広げている。
今シーズンはとりわけ女性が主人公の作品が多いのだが、そんな中、真っ先にフルシーズンの製作が決まったのが『ブラザーズ&シスターズ』のエミリー・ヴァンカンプ主演の復讐ドラマ『Revenge』。毎回テンポ良く進むストーリー展開で安定した視聴率をキープし、早くも日本上陸が決定。真田広之が出演することでも話題になったばかりだ。コメディの方でも『(500)日のサマー』のズーイー・デシャネルが、不思議ちゃん系ヒロインでまたまたキュートな魅力を炸裂させている『New Girl』と、元お嬢様と貧乏娘が金持ち目指してのし上がっていく姿を描いた『2 Broke Girl』がフルシーズンの製作を決め、まさに女性主人公大活躍だ。
さて、今シーズンはいくつか特徴的な傾向を持った作品があったが、そのうちのひとつが『The Playboy Club』と『PAN AM』の60年代ドラマ対決。しかし『The Playboy Club』の方はわずか3話で打ち切りに。高級会員制クラブを舞台に男と女の欲望と殺人を巡るミステリーを描くという割に、エロもエゴも決定的に手ぬるかったのが敗因と分析。
一方の『PAN AM』はプレミアで高視聴率をたたき出して好発進! ...だったのだが、現在はちょっと迷走中だ。放送局のABCも力を入れていた作品だけになかなか慎重で、5話追加と小刻みにバックオーダーをして様子見が続いている。60年代の花形職業パンナムのスチュワーデスたちのロマンスや、米ソ冷戦を舞台にしたスパイ合戦のミステリーなど、いろいろ見どころは盛りだくさんなのだが、盛りだくさんすぎちゃったか? 旅好きの筆者としてはなんとか頑張って欲しいところなのだが...。
対決といえば『Once Upon a Time』と『Grimm』のメルヘン対決にも大きな注目が集まった。いずれも10月末からと他の作品よりスタートが遅かったが、『Once~』はプレミアでも高視聴率を記録し、3話を待たずにフルシーズンの製作が決定。実際、回を追うごとにどんどん面白くなっている印象だ。一方の『Grimm』は単純に視聴率だけ比べれば『Once~』の圧勝というイメージ。だが『Grimm』は視聴率の墓場と言われる金曜日の放送、しかも初回はワールド・シリーズの裏という大きなハンデを持っていたことを考えると、大健闘と言ってもいいだろう。方や白雪姫とプリンス・チャーミングの娘がヒロイン、方やグリムの末裔が主人公と、同じグリム童話というモチーフを使いながらも、ミステリーとクライム・ドラマできちんと住み分けが出来ている点も評価したい。
反対におそらく共倒れになりそうな雰囲気なのが、『チャーリーズ・エンジェル』と『第一容疑者』のリメイク対決。『チャーリーズ・エンジェル』に関しては既に日本でも報じられている通り、既に打ち切りが決定。これに関してはリメイクものの企画にありがちな危険な香りが初回から漂っていたが、なんと言っても新旧ファンを敵に回したボスレー若返り作戦が決定打だろう。映画版のエンジェル、ドリュー・バリモアが製作に名を連ね、全米で人気のセクシー女優ミンカ・ケリー主演とキャッチーな要素は多かったが、ファンを敵に回しちゃ生き残るのは無理というもの。一方の『第一容疑者』も低空飛行を続けている状態だ。男社会で孤軍奮闘するヒロインをマリア・ベロが熱演しているのだが、いかんせん時代錯誤がすぎる。これでバックオーダーが入ったら驚き、というのが正直な印象だ。(なんて思ってたらNBCがキャンセルを発表。やっぱり。)
ちなみに一通り新ドラマを見た筆者の今シーズンのベスト3は1.『Once Upon a Time』、2.『New Girl』、3.『Grimm』、次点『PAN AM』なのだが、こうしてざっとさらってみても、面白くて秀作なドラマが多かった割に、ビッグヒットと言えるほど飛びぬけて成功した作品が見受けられなかったのは残念なところ。というのも今シーズンのプレミアは、とにもかくにも一連のチャーリー・シーン騒動で注目を集めた新生『ハーパー★ボーイズ』に完全に話題をさらわれてしまったから。チャーリーに変わって主役に抜擢されたアシュトン・カッチャーも文字通り体を張って頑張ったが、9年目にして脅威の2770万人という視聴者数をたたき出した原動力はチャーリー以外の何者でもない。あれだけ暴言の限りを尽くして辞めさせられたにも関わらず、結果として番組最高視聴率に貢献するとは恐るべし、チャーリー。
そんなハプニング(なのか!?)に見舞われたとはいえ粒揃いなシーズンなことには変わりない。ネットワークのドラマはもちろん、ケーブル局に目を向ければ、ライアン・マーフィーの『アメリカン・ホラー・ストーリー』や、クレア・デインズ主演のサスペンス『HOMELAND』、ガス・ヴァン・サントが製作する『BOSS』など、いずれも高い評判を呼んでいる。さらにミッドシーズンにはスティーブン・スピルバーグ製作のミュージカル・ドラマ『SMASH』や、J・J・エイブラムス製作の『Alcatraz』、キーファー・サザーランド主演の『Touch』、映画『ザ・ファーム』をベースにした『The Firm』やアシュレイ・ジャッドとショーン・ビーンが共演する『Missing』、夢と現実の二つの世界を行き来する男を描いた『Awake』、『グレイズ・アナトミー』のクリエイター、ションダ・ライムズが製作する『Scandal』など、むしろこっちが本命? と思えるような話題作が続々登場。
まだまだ今シーズンのドラマからは目が離せそうにないのだ。
Photo:エミリー・ヴァンカンプ (c)Manae Nishiyama / www.HollywoodNewsWire.net マリア・ベロ (c)Thomas Lau/www.HollywoodNewsWire.net アシュレイ・ジャッド (c)Kazumi Nakamoto / www.HollywoodNewsWire.net