『トーチウッド 人類不滅の日』放送開始記念! "地球まるごと"の大異変を描いたTVドラマを振り返る

キャプテン・ジャック・ハークネス英BBCと米Starzの共同製作で昨年話題を呼んだ『トーチウッド』の最新シーズンが、いよいよ日本でも、WOWOWプライムにて7月13日(金)にスタートする。「世界中でだれひとり死ななくなる」という異常事態を描く本作にちなんで、今回のコラムでは、地球規模の大異変を連続ストーリーで描いた最近のTVドラマを振り返ってみよう。

地球規模の大異変といえば、映画では、隕石落下のパニックを描いた『アルマゲドン』や『ディープ・インパクト』、地球が氷河期を迎えてしまう『デイ・アフター・トゥモロー』、子どもがひとりも産まれなくなってしまう『トゥモロー・ワールド』など、数多くの作品を挙げることができる。

一方、連続ドラマの場合、映画よりも長いスパンで、登場人物のサバイバルストーリーや、人間関係・社会の変化を描かなければならない。なかなかチャレンジングな企画であり、それだけに作品数も限られるようだ。

では、地球人類のだれもがビックリ仰天するような大事件を、連続ドラマで描いた例としては、どんなものが挙げられるだろう。筆者がまっさきに思いつくのは、やっぱりあの...(アルファベットひと文字)。

★エイリアンがやってきた!
→『V』オリジナル版(1983年:米NBC)
→『V』リメイク版(2009年:米ABC)

Vリメイク版

世界各国の大都市の真上に、ある日、巨大円盤が出現した。乗っているのは、ニコニコと笑みをたたえた宇宙人"ビジター"たち。友好関係を結びたい、先端科学も教えましょうというので、人類は大喜びだ。無垢なティーンエイジャーたちは、目を輝かせて巨大円盤に招かれ、イケメン・美女のビジターに胸をときめかせる。でも、美味い話には裏があった。人類の見えないところで、ビジターは地球占領計画を着々と実行に移していたのだ...。

マスメディアを味方につけるなど、巧妙な手口を用いて、人類の気をそらすビジター。でもこういうことって、意外と身近でも起きているような気がする。目を欺かれて、本当の危機を見過ごすことがないように気をつけなければ...。

さて、次に登場するエイリアンは、ビジターよりずっと凶暴だ。

★エイリアンに占領されてしまった!
→『フォーリング スカイズ』(2011年:米TNT)

フォーリング スカイズ

大挙して本気で襲いかかってくるエイリアン。アメリカの各都市はすっかり廃墟と化し、残った人類は隠れ場所で身を寄せ合い、食料や武器を探し求めながら、エイリアンとの戦いを繰り広げる。そう、本作は『インデペンデンス・デイ』や『宇宙戦争』で描かれた大規模攻撃の「その後」を描いているのだ。

しかも、エイリアンは大規模破壊にくわえ、何ともいや~な手段で人間性を崖っぷちに追いやる(ネタばれになるのでくわしくは明かさないが)。文明社会が崩壊し、人間性までもが変質を迫られるなかで、何にすがって人は生きていけばいいのか? そんなことを考えさせるのがこの作品だ。

★みんな未来が見えた!
→『フラッシュフォワード』(2009年:米ABC)

大異変はなにも、隕石や宇宙人ばかりではない。アイデア次第で面白い出来事が編み出せる。カナダの作家ロバート・J・ソウヤーのベストセラー小説をベースにした本作で描かれるのは、なんとも奇妙な異変だ。世界70億人の全員が、2分17秒間のビジョンで「半年後の未来」を垣間見てしまう。

本来、人は、未来に起こることを確実には知りようがない。この先起こることを予測しながら不確実な日々を送り、それが当たり前だと思っている。ところが、半年後の出来事が確実にわかってしまったらどうだろう。例えば、夫と仲むつまじく暮らしていた女性が、浮気をしている未来の自分をヴィジョンで見てしまったら?

ビジョンを見て希望を見いだす人もいれば、何も見なかったために「もしかして自分は死ぬのでは」と不安にかられる人もいる。未来を知ることで、人の生き方や人間関係に変化が訪れるのはまちがいない。たいへんに興味をそそられる題材で、放送開始時は注目を集めたが、視聴者の興味を維持することは難しく、シーズン1で打ち切りになってしまったのは残念だった。

フラッシュ・フォワード

★動力が通じなくなった!
→『Revolution』(2012年:米NBC)

これは今年の秋にアメリカで放送がスタートする、アクションアドベンチャー作品。ヒットメーカーのJ・J・エイブラムズと、『SUPERNATURAL スーパーナチュラル』のクリエイターであるエリック・クリプキが製作総指揮を務め、しかも、『アイアンマン』のジョン・ファヴローがパイロットを監督するので注目が集まっている。

本作の舞台となるのは、電気からクルマのエンジン、バッテリーにいたるまで、世界中でなにもかもが動かなくなった世界。移動や通信の手段を失ったことで都会のビルやハイウェイは用済みとなり、草木が生い茂っている。予告編を見たところ、政府は崩壊し、将軍や民兵がのさばる世界に変貌してしまうようだ。生き延びるためにはアーチェリーの練習をしておいたほうがよいかもしれない。

★子どもたちが変だ!
→『秘密情報部トーチウッド』シーズン3(2009年:英BBC)

さて、ここからはいよいよ『トーチウッド』の話。本作のシーズン1、2は基本的に一話完結だったが、シーズン3は5話編成、シーズン4は10話編成のミニシリーズ仕立てになった。そして、英国ならではの発想というべきか、シーズン3、4ともに、とてもユニークな異変が描かれている。

もし、世界中の子どもたちがいきなり、示し合わせたように動きをピタリと止めてしまったら。どんなになだめたりすかしたりしても、反応しなかったら。そしていきなり、「We are coming! We are coming!」と声をそろえて叫びはじめたら...大人たちはどう対処したらいいだろう?

「チルドレン・オブ・アース」と題されたシーズン3は、子どもの安全を気にかける大人社会の盲点を容赦なく突いたドラマだ。子どもたちのためにと口では言いつつ、私たち大人は子どもを犠牲にし、自己保全の道を選んでいるのかもしれない、という気持ちにさせられる。少子高齢化の問題に、いまだ本気で取り組んでいない日本にも通じるテーマかもしれない。

★みんな死ななくなった!
→『トーチウッド 人類不滅の日』(2011年:英BBC)

トーチウッド 人類不滅の日

人や社会が抱える闇を冷静に見据えてきたことで定評のある『トーチウッド』。最新シーズンでもその姿勢はきちんと貫かれている。

冒頭でも述べたように、今シーズンでは、世界中の人間がだれひとりとして死ななくなるという異常現象が発生する。一見よいことのようだが、実際は地獄のような時代の到来だ。なにしろ、不治の病や致命傷を負っている人は、ずっとそのまま苦しみから解放されることなく、永久に生き続けなければならないのだから。

そして当然のことながら、人口増加はこれまで以上のペースで加速する。食料や医療の供給はたちまち尽きてしまい、大パニックが起きる。医療ケアの問題をめぐってアメリカで起きた論争も視野に入れながら、人が死なない"if"の世界を冷徹に描写してみせているのが本シーズンだ。

もしかしたら、今シーズンで描かれる「人類不滅の日」は、今回紹介した異変のなかでも、私たちにとってもっとも衝撃的な出来事かもしれない。命の線引きができなくなったときに人がとる行為を目の当たりにしたら、あなたの心はきっと恐怖に打ち震えることだろう。

ドラマで描かれる地球規模の大異変は、身近な現実からかけ離れたものとは限らない。むしろ、いま私たちが抱えている社会や環境、人間性にまつわる問題について、新たな視点を提供してくれる格好の教材なのだ。

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20120707_c06.jpg『トーチウッド 人類不滅の日』は、7月13日(金)からWOWOWプライムにて放送スタート!
【二カ国語】毎週金曜夜11:00~
【字幕】毎週月曜深夜0:10~

Photo:『トーチウッド 人類不滅の日』(c)BBC Worldwide Limited 2011/『フラッシュ・フォワード』(c)ABC Studios/『フォーリング スカイズ』(c) 2010 Empress Media Asset Management, LLC/『トーチウッド 人類不滅の日』(c)BBC Worldwide Limited 2011