『ブレイキング・バッド』アンナ・ガン、ファンからの攻撃にコラムで応酬!?

全米で大ヒットしている衝撃のアンチヒーロードラマ『ブレイキング・バッド』。本作のとりこになった大勢のファンは、ドラマにのめり込むあまり、キャラクターと役者の区別がつかなくなっているのかもしれない。妻スカイラーを演じるアンナ・ガンが、ファンに異常なほど嫌われているのだ。

ドラマ公式サイトの掲示板やフェイスブックなどでは、「スカイラーはビッチ(サイアクの女)だ」といった内容から、「アンナ・ガンの居所を教えて。そうすれば殺せる」といったコメントなど、キャラクターのみならず役者本人を攻撃するまでにエスカレートしている。これに対し、アンナは米ニューヨーク・タイムズ紙にコラムを寄稿。その思いを綴った。

ドラマでは、ブライアン・クランストン演じる主人公ウォルターが末期がんを宣告され、残される家族を思い、ドラッグ精製という犯罪に手を染める。家族のため...とはいえ、妻スカイラーは夫ウォルターに疑問を抱き、とがめ、様々な行動に走っていく...。アンナは、こうした反夫的な姿勢が、世の反感を買ったのではないかと指摘する。同様に、アンチヒーローの主人公の妻を演じた、『MAD MEN マッドメン』のジャニュアリー・ジョーンズや、『ザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア』のイーディ・ファルコと似たパターンなのだろうと分析する。

「男性キャラクターでは、このように辛らつな言葉を浴びせたり、嫌悪感がエスカレートすることはないかと思います」と綴った上でアンナは、「掲示板では、スカイラーの話題だったはずが、直接私個人への否定的なコメントにすり変わっていました。女優として、視聴者の皆さんが見ているドラマのキャラクターを好き好きに語るのは自由ということはわかっています。ですが、一人の人として、これほど多くの人々がスカイラーについて、ここまでの憎悪を持って反応することは気がかりです」とコメント。「スカイラーは、(余計なこと言わず、男についていくといった)人々を安心させる昔からの女性像とは一致しないため、社会に対する"ロールシャッハテスト"のようなものになっている。つまり、性について、その人がどのような考えを持っているか、彼女に対する反応で見えてくる」とアンナは語っている。

アンナが演じるスカイラーは決して悪役ではない。ごく普通の妻なのだ。年の離れた夫の庇護の下に、障害を抱えた息子を育て、さらに小さな赤ちゃんを抱えたごく平凡な妻だった。多少、年上の夫に任せきりで、世間知らずな面もあるが、そこもまたかわいいところ。だからこそ、アンナ自身もそこまで嫌われ者だと思っていなかったようだ。ここまで嫌われるようになったのは、"夫の思いも知らないで、勝手なことばかり言う妻"という構図を同シリーズではあまりにも容赦なくリアルに描いているからではないだろうか。

必要なことを説明しない夫と、心配になって余計なことばかり言ってしまう妻...それは、夫婦であれ、カップルであれ、男女間のすれ違いとして、多少誰でも身に覚えがあることだろう。自分のイヤな面を人は見たくないもの。自分とイヤ面が同じ人を嫌うものだ。アンナ・ガンは、感情を抑制するブライアン・クランストンのウォルターの演技とは対照的に、感情的なスカイラーを見事に演じている。嫌われれば嫌われるほど、彼女の演技がすばらしいという証拠になるのではないだろうか。(海外ドラマNAVI)

Photo:『ブレイキング・バッド』ブライアン・クランストンとアンナ・ガン