【やらなきゃよかったスピンオフ】番外編2:本当にやるの?ちょっと不安な新作3本

オリジナルドラマの人気にあやかり製作されるスピンオフドラマ。ゼロからスタートするよりも、認知度という点から有利として最近、ますますスピンオフへの期待が高まり、毎年、新しいスピンオフが登場している。しかし、本家が人気があるからといって、必ず成功するわけではない。米TV Guideが「ちょっと不安」だという現在進行中のスピンオフ企画を紹介しよう。

■『Better Call Saul』:『ブレイキング・バッド』のスピンオフ企画

『ブレイキング・バッド』の主人公ウォルターの顧問を務める悪徳弁護士ソウル・グッドマンを主人公に据えたスピンオフドラマ『Better Call Saul』。"悪徳"といっても、決して極悪ではなく、ハイエナのようにズルく、セコく、したたかに裏の世界を生き延びているソウルは、『ブレイキング~』を支えた名脇役だ。ソウル役を演じるボブ・オデンカークは、この役で一躍注目を浴びた。キャラクターとしても魅力的であり、『ブレイキング~』のクリエイターであるヴィンス・ギリガンと、ソウルの"生みの親"である脚本家・プロデューサーのピーター・グールドが脚本を担当することが決まっている同作。人気シリーズの人気キャラで、しかもクリエ―ターはテレビ界屈指の実力派...という鉄板企画に思えるが、それでは手放しで期待できない点があるとTV Guideは不安げだ。

その理由が、ソウル・グッドマンというキャラクターの立ち位置にある。緊張感あるシリアスなシーンが多い本家で、ソウルはちょっと笑える"息抜きキャラ"だった。マニアックなたとえ話と、愛おしいほどのセコさで、緊張感を緩める役割を担っていた。それが、一本立ちして主役になると、どうなのだろか。本家のクオリティがあまりにも高かっただけに、「予想どおり」や「期待どおり」では足りないかもしれない。「予想を裏切る」ぐらいのインパクトが必要だ。このスピンオフは、ほどほどに続くということはなさそうだ。大失敗か、傑作ドラマか。いずれかになるだろうとTV Guideは予想している。

■『ウォーキング・デッド・スピンオフ(仮タイトル)』

『ウォーキング・デッド』のスピンオフを製作するというニュースに、TV Guide陣は思わず爆笑したそうだ。ゾンビのごとく、脳みそがないのかと思うほど、無茶な企画だと一蹴。スピンオフには、主に2つのパターンがある。1つは、魅力的な脇役キャラを主人公に持ってくる。もう1つは『CSI』のように基本設定はそのまま、場所やキャラクターを変えてドラマにするもの。

この『ウォーキング~』のスピンオフを作るとなると、まず、主役になりそうなキャラクターがいない(たいてい、濃いキャラは死んでしまってる)。そして、次に場所を変えても、やっぱりゾンビと闘うことはまったく変わりなく、各地でひたすら同じような闘いをするだけ...そんなにゾンビネットワークを広げてどうするという話だ。確かに、本家はホラーが難しいと言われたテレビ業界に一石を投じ、一代ホラーブームを巻き起こしたドラマだ。しかし、ゾンビと闘うパターンはたかが知れており、本家ももはやゾンビとの闘いよりも、人間同士の闘いになってきている。その状況で、何を今さらスピンオフで描こうというのか。反対にそこがちょっと楽しみであったりする。

■『How I Met Your Father(パパと恋に落ちるまで)』:『ママと恋に落ちるまで』のスピンオフ企画

現在、企画進行中のスピンオフ。運命の女性と恋に落ちるまでの、長く険しい道のりを愉快に描いた30分ラブコメディー『ママと恋に落ちるまで(原題:How I Met Your Mother)』がいよいよシーズン8で終わりを迎えるということで、ここぞとばかりに持ち上がった企画だ。『How I Met Your Father(パパと恋に落ちるまで)』のとおり、"女性視点"で運命の恋を描いていくようだが、実は本家ファンからは早くも懸念の声があがってる。人気ドラマだけに、本家の"壁"は高いようだ。TV Guideも「企画中なら、すぐに中止すべきだ」と厳しい意見。スピンオフとはいえ、この企画は、コンセプトを女性に移しただけ。そもそも過去を美化する男目線だからこそ、ママはどんな人なのか、という面白さがあったわけで、過去をバッサリ忘れさりたがる女目線で、本家の面白さが踏襲できるのかという根本的な問題がある。独身女性たちが、未来の夫を探す婚活物語ならば、何もスピンオフにしなくても作れるというもの。確かに本家のキャラクターも絡まず、男を女に変えただけの安易な発想でスピンオフを作っても、ファンの反感を買いそうだ。この企画、本家の"壁"を越えるのはなかなか難しそうだ。

(海外ドラマNAVI)

Photo:『ウォーキング・デッド』
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