【お先見】なんと、あのジョン・マルコヴィッチがTVドラマで海賊役に初挑戦!『CROSSBONES』(原題)

"CROSSBONES(クロスボーンズ)"というのは、よく海賊の旗に描かれているドクロ・マークのこと。実在した海賊の頭領"黒ひげ"と、彼の命を奪うべく派遣された大英帝国からの暗殺者トム・ロウを取り巻くアドベンチャー・ドラマなのですが、同じ海賊ものでも映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』とはかなりおもむきが違って、歴史ドラマ的な色合いが濃いばかりか、かなり残酷なシーンも多くて結構シリアスなタッチ。

何を隠そう、私は「黒ひげ」というキャラを、おとぎ話に出てくる架空のパイレーツだと思っていたんですが、なんとれっきとした歴史上の人物で本名はエド・ティーチというんです。このドラマ・シリーズでエドは、海賊業で栄華を極めていた頃に使われていた呼び名「黒ひげ」ではなく、「コモドア(=大佐)」と呼ばれることを好み、部下を使って海賊業を続行し、本人はバハマの孤島セント・カンパリで、流れ者ばかりを集めた島国の独裁リーダーとして君臨しています。有能な(!?)部下たちのおかげで略奪や密貿易の景気も文字通り順風満帆、英国王に進呈するための秘密の品を積んだ帆船もまんまと略奪。その船に政府から護衛として配属されていたスパイ兼アサシン(=暗殺人)のトム・ロウも捕らえられて、コモドアの住む孤島に連れて行かれる...というところからこのドラマが始まります。

今回、TVドラマで海賊に初挑戦のジョン・マルコヴィッチはむしろ映画スターとして名を馳せているため、アメリカでドラマ・シリーズに主演するのは初めて。最近は、有名映画スターもこぞってTVドラマに進出しているここハリウッドで、ついに天下のマルコヴィッチ様もメジャーでTVにお出まし、といったところです。

『CROSSBONES』放映の話を聞いたとき、マルコヴィッチ・ファンの私は、見るのが待ちきれませんでした。とくに、映画『ザ・シークレット・サービス』『コン・エアー』などで最高の悪役を演じたジョンが悪名高き「黒ひげ」を演じると聞いてワクワク!しかし予期せぬ落とし穴が...!!

このドラマの出演者のほとんどがイギリス人であるなか、ジョンは数少ないアメリカ人。だけど有名俳優ジョン・マルコヴィッチたるもの、イギリス・アクセントなど悠長にこなすと思っていたらこれがとんでもない的外れ。どうせならアメリカ・アクセントで通してしまえばいいのに、現れては消え、消えては現れるジョンの偽イギリスなまりは気が散るのなんのって! 随分前に、ケヴィン・コスナーが映画でロビンフッド役を演じたとき、彼のイギリスなまりのひどさが槍玉に上げられましたが、まさか天下のマルコヴィッチ様のイギリスなまりがこれほどつたないとは意外でした。

落とし穴がこれだけだったらまだなんとかなるのですが、ストーリー展開にどうも切れがない、というのもヤバいです。話の中心となる"秘宝"というのが、発明されたばかりの最新鋭航海用コンパスというのも、どうもロマンに欠けるというか退屈というか...。まあ、そのコンパスが英国政府の手に入ってしまうと海賊たちのアジトや動きなどが非常に突き止めやすくなって、パイレーツの略奪ビジネスも上がったりということになってしまうので、コモドアたちにとっては一大事なのですが、見てる側にはな~んとなくピンとこないんですよねえ。やっぱこれって、娯楽ギッシリだった映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』の見過ぎでしょうか。

でも、この『CROSSBONES』にはすごい大金がかかっているのがありありとわかるくらい、ビジュアル面では退屈しないことうけあいです。特に、登場する帆船のゴージャスなことといったら...。番組に登場する「黒ひげ」の帆船は、現在、海を実際に航行できるコンディションにある、唯一のガレオン級帆船で竜骨が48メートル近くもある「エル・ガレオン」という名の大帆船なんです。この船を長期撮影用に借りるのにいくらかかったか知りませんが、18世紀を再現したコモドアの屋敷の内装や村の様子、登場人物の素敵な衣装の数々...。贅を尽くしたプロダクション・デザインは目の保養になること確実!...っといっても、やはりストーリーがついてこないことには、いくらマルコヴィッチ様が主演でも番組として成り立たないので、これからドラマがググッと盛り上がっていくことを祈っています!

Photo:ジョン・マルコヴィッチ、リチャード・コイル - filmstill (c)amanaimages