スティーヴン・スピルバーグが製作総指揮を手掛ける超大作SFミステリー『エクスタント』。ハリー・ベリーをはじめとする豪華なキャストが話題ですが、実は、日本語吹替版のキャストも超豪華! 今回は、吹替初挑戦にして主役のモリーを担当する女優の板谷由夏さんに、声の仕事の感想やドラマの魅力についてうかがってきました。
――吹替のお仕事は初めてだとうかがいましたが、実際にアフレコを経験されてみていかがでしたか?
板谷:正直言って、最初は大変でした。映像を見るだけでは、役者さん同士の距離感をつかむのが難しくて。どのくらい声量をコントロールすればいいのか、どのくらいマイクから離れればいいのか、コツをつかむのに苦労しました。おかげさまで、今はずいぶん慣れてきて、アフレコを楽しめる余裕が出てきました。
――声の仕事ならではの面白さはどんなところにあると思いますか?
板谷:ハリー・ベリーさんの体を借りながら、自分もドラマの舞台で実際に生きている感覚を味わえることです。そこに面白さを感じますね。
――板谷さんが演じる、主人公のモリーはどんな人物なのか教えてください。
板谷:非常に芯の強い人です。何事に対してもブレがなくて一貫しているところが魅力的ですね。しかも、強いだけでなく弱さもあわせ持っていて、その弱さを隠そうとせずに表現しようとしている姿にも共感します。自分の心の中の問題にきちんと対処していこうと、もがきながらもまっすぐに向き合うところもステキです。自分も彼女のようでありたい、そう思わせてくれる女性です。
――モリーにとってキーパーソンとなるキャラクターは誰ですか?
板谷:やはり、モリーの息子にあたるイーサンですね。また、シーズン終盤には別のキーパーソンも登場します。ネタバレになるので多くは語れませんが、そのキャラクターとの掛け合いを演じたときには、自分の気持ちが高ぶるのを感じました。ぜひそのキャラクターの登場を楽しみにしていてください。
もちろん、真田さん演じるヤスモトもキーパーソンの一人です。英語をしゃべるヤスモトよりも、吹替版で日本語をしゃべるヤスモトの方がより怪しく、凄味が増している点にもぜひ注目してください(笑)。
――板谷さんは、実際に真田さんとお会いになったのでしょうか?
板谷:はい。特番のインタビューというかたちでお会いすることができました。実際にお会いしてみて、本当に素晴らしい方だと実感しました! "人間力"の高さを感じましたね。紳士的だし、物事に対してまっすぐな考えをもっていらっしゃるし、仕事に対して真摯だし。真田さんはハリー・ベリーさんのことを「気遣いができるステキな女性」とおっしゃっていましたが、真田さんご自身もとても気遣いがお上手。会話の中でも、いつもこちらの意図を汲んだ言葉を返してくださるんです。役者としてはもちろん、一人の人間として尊敬できる方だと思いました。
――ハリーさんの人物像のほかに、真田さんとはどのようなお話をされたんですか?
板谷:『エクスタント』の撮影現場の雰囲気について教えていただいたり、お芝居についてお話ししたりしました。とてもためになるアドバイスもいただきました。
――真田さんのアドバイスとは、どのようなものだったのでしょうか?
板谷:アフレコを始めた当初は、ハリー・ベリーさんのお芝居に合わせなくちゃいけないという思いにとらわれていたんですよね。"こうあるべき"と決めてかかり、形から入ろうとしていたんです。でも、そうじゃないんだと気付かせてくださったのが、「ハリー・ベリーさんの体を借りながら、板谷さんなりの芝居をして、板谷さんなりのモリーを作り上げていけばいい」という真田さんの言葉でした。それを聞いた瞬間、パーッと心の中の霧が晴れたんです。それまでは、「口の動きに合わせなきゃいけない」「ハリーさん演じるモリーの表情に合わせた感情を作らなきゃいけない」と、そんなことばかり考えていたので。私なりのモリーを作っていけばいいんだと思うようになってからは、ずいぶん芝居がやりやすくなりました。
――真田さんとアフレコ収録でご一緒する機会はなかったとうかがいましたが、ほかのキャストのみなさんとは一緒に収録されているんでしょうか?
板谷:シーズンの前半はスケジュールの都合で別々に収録していたんですが、後半からはほかのキャストのみなさんと一緒に収録に臨んでいます。一人で悪戦苦闘しながら収録していた頃に比べて、みなさんと合流してからはより一層演じることが楽しくなりました。同じスタジオの中に、お芝居をする相手がいてくれるわけですから、気持ちも作りやすくなりました。
――スタジオ内はどんな雰囲気ですか?
板谷:みんなとっても仲良しです(笑)。和気藹々とやっています。最初は、畑違いの自分が受け入れてもらえるのか不安な部分もありましたが、みなさん本当に親切で。まだまだ分からないことだらけの私に、絶妙なタイミングで的確なアドバイスをしてくださるんです。とてもありがたいです。
――『エクスタント』とはどんなドラマなのか、板谷さん目線で教えてください。
板谷:スピルバーグ製作総指揮のドラマだけあり、SFとしてのクオリティがとても高い作品です。1本の映画にも匹敵するような内容が1話に詰め込まれています。毎回、怒濤のような展開で、最初から最後まで一瞬たりとも見逃せません。それが、今シーズンは全部で13話。こんなスケールの大きな作品はなかなかないと思います。1話を見たら必ず続きが見たくなる、そんな吸引力のあるドラマです。
――『エクスタント』が視聴者に送ろうとしているメッセージはどんなものだと思いますか?
板谷:SFミステリーでありながら、人と人との絆やつながりの大切さも訴えているドラマだと思います。親子に限らず、夫婦、同僚、友人など、さまざまなかたちで描かれる人間同士の関わりが、作品のテーマの一つになっているんです。
一方で、人間の暮らしにどんどん入り込んでいるコンピューターとの付き合い方についても問題提起しています。人間とコンピューターとの間でどのような線引きがなされるべきか、そういったことを考えさせてくれるドラマでもあります。
――最後に、海外ドラマファンへのメッセージをお願いします!
板谷:SF的な要素も魅力ですが、とにかく脚本が秀逸です。オープニングの5分間とエンディングの5分間では、まったく異なる世界に連れて行かれてしまったような気がするくらい、毎回、大胆な展開が用意されています。演じている私ですら、何が起きたのか分からなくなることがあるくらいです(笑)。この振り回されるような感覚を、ぜひみなさんも一緒に体感してください。
■スピルバーグ製作総指揮『エクスタント』WOWOWプライムにて放送決定!
<レギュラー放送>
4月4日(土)二か国語版・毎週土曜よる11:00~/字幕版・毎週水曜よる10:00~
※第一話無料放送
Photo:
『エクスタント』
板谷由夏
撮影:高橋将志
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