Netflix『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』のラヴァーン・コックス&ウゾ・アドゥバ インタビュー

リッチフィールド女性刑務所に収監されている女性たちの姿をブラック・ユーモアたっぷりに描いた『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』。登場するのはいずれも強烈な個性を持ったキャラクターばかりの本作で、やはり強烈なインパクトを持ったソフィア役のラヴァーン・コックスとスーザン(クレイジー・アイズ)役のウゾ・アドゥバが来日。昨年のエミー賞では2人ともゲスト女優賞にノミネートされ、ウゾは受賞。さらに今年のエミー賞にもウゾが助演女優賞でノミネートされているなど、演技面でも高く評価されている彼女たちに、ドラマの魅力を直撃した。

 

――この作品の登場人物はいずれも強烈な個性を持った人物ですが、お2人が演じるソフィアとスザンヌはどんな人物なんでしょう?

ラヴァーン:ソフィアには特徴的な事がいろいろあるの。彼女は刑務所内でヘア・サロンを営んでいるけれど、基本的に刑務所内ではバーター取引だから、彼女は他の人は持っていないような美容用品を取引したり、それを物々交換して収入の足しにしているの。この美容グッズがあってこそ、ソフィアの独特な容姿が創られているのだけど、彼女は見た目だけではなくて、性格も特徴的なのよ。ソフィアは性転換してまだあまり時間が経たないうちに刑務所に入ってしまったから、"女性である事"を刑務所の中で少しずつ学んで行っているのよ。彼女を演じていて気付いたんだけど、ソフィアは刑務所内で仲間内といる時と、家族と一緒にいる時では別人なの。それは彼女が刑務所で生き延びるためのサバイブ術なのよ。

ウゾ:スザンヌのキャラクターがかなり強烈なのは言わずもがなよね(笑)。私がスザンヌの一番好きなところは、彼女が"言葉"を通して自分自身を表現しようとしているということなの。彼女は言葉との間に強い絆のようなものを見出していて、刑務所内でも小説を書いていたり、シェイクスピアの言葉であれ、詩であれ、とにかく"言葉"が彼女にとって最も大事な自己表現の方法になっているのよ。それと、周りが受け入れようと受け入れまいと、彼女はいつでも「自分はこうだ」というものを持っているの。ありのままの自分でいる事を恐れないところも、彼女について私が大好きなところね。刑務所という場所は全員が同じ囚人服を着ていて、どうしても一括りにされてしまいがちだけど、そんな環境でも彼女は少し変わった髪形をしていたりして、とてもユニークな個性を持っているの。

 

――様々な過去を秘めた受刑者に囲まれた環境の中で登場人物は緊張感や不安感を持って生活をしていると思いますが、実際の撮影現場の雰囲気はどんな感じですか?

ウゾ:クリエイターのジェンジ・コーハンによって描かれたストーリーの中にはもちろん登場人物同士の対立も織り込まれているし、シーズン2ではそうした対立がとりわけ明確に描かれているの。例えばヴィーとレッドという2人の間には因縁の歴史があって、それが刑務所に入った現在にまで持ち越されていたり。でも幸い、キャストたちは彼女たちとは全く違うわ。因縁の歴史が今にまで持ち越されているなんてことはないわよ(笑)。作品の中ではソフィアとスザンヌはこっち、ニッキーとローナはあっち、という風に人種ごとにグループができている。でもビックリするかもしれないけど、キャスト間にはそういう事は一切なくて、むしろ活発な異文化交流が起きてるのよ(笑)。

ラヴァーン:NETFLIXと日本でもそんな交流が起こるといいわね!(笑)

――刑務所という閉鎖された空間の中で、多くのキャラクターが登場するこのドラマではアンサンブルが重要になってきますよね。劇中の会話はとてもリアルで、ウィットに富んだシーンも多いですが、脚本とアドリブのバランスは実際どうなっているのでしょう?

ラヴァーン:キャラクターによってはたまにアドリブをする場面もあるけど、大半は素晴らしい事にあらかじめ脚本に書かれているのよ。ジェンジは「頭の中で声がする」って言っていて、それぞれのキャラクターを演じる俳優を思い描きながらシーズン1の脚本を書き上げたそうよ。それってとてもエキサイティングな事よね。

――ストーリーが展開するにつれて、それぞれのキャラクターの過去が少しずつ明らかになってきますが、自分が演じるキャラクターの背景は役が決まった時点で知らされていたのですか? それとも脚本を読んで初めて知ったのでしょうか?

ラヴァーン:脚本を読むまで何も分からないのよ。だから私もソフィアについてはまだ知らない事だらけなの。でもジェンジが優秀なクリエイターなのは知っていたし、パイロットの脚本は最高だったから、思い切って挑戦する事にしたの。おかげで今こうして世界中にこの作品を届けられているのよ。

――この作品は世界中で大ヒットしているだけでなく、賞レースでも脚光を浴びて、お2人もエミー賞を始めとした賞を受賞したりと高く評価されていますが、やはりこれまでとは環境は変わりましたか?

ウゾ:もちろん変わったわ。全て良い風に変わったのよ。これだけの規模の作品に出演できる事をとても嬉しく思うし、キャラクターの描き方とか、ストーリーの展開とか、どれも期待を裏切らないのよ。シーズンを追うごとに視聴者の期待にちゃんと応えてくれるし、俳優としても、演じ甲斐のある脚本になっているの。そんな素晴らしい作品に携われたということは何よりも素晴らしい事だと感じてるわ。そう思える役を私たちに与えてくれたジェンジやNETFLIXには私たち全員がとても感謝していると思う。私の生活はもちろん変わったし、俳優業はもちろん、それ以外の面でも可能性が大きく広がった事は本当に幸運な事だわ。作品に出演し、それが可能性やチャンス、夢を広げてくれた事に対して、とにかく感謝してもしきれないわ。

ラヴァーン:私は似たような質問をされる時、毎回つい考えずにはいられない事があるの。3年前、この作品に出演する前の私は家賃を滞納して裁判所にいて、危うくアパートを追い出されるところだったの。でも嬉しい事に今では滞納していた家賃も支払う事ができるようになったし(笑)、夢のような生活を送っているわ。賞に輝いたり、人から注目されるようになっただけじゃなく、人々の人生に良い意味で影響を与えられる機会が得られたりと、この番組のおかげで素晴らしい事がたくさん起こったの。マダム・タッソーの館には私のろう人形があるし、私の部屋にはエミー賞やSAG賞のトロフィーが飾ってる。でもなにより私が演じるソフィアというキャラクターが視聴者やファンに影響を与える事ができた、それこそがとても嬉しい事だったわ。ソフィアを見て、人生が変わったという人にも多く出会ったわ。そう言って貰えた事こそ、私にとって最高のギフトなの。

 

――すでに世界中に多くのファンがいる『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』ですが、この作品をこれから見る日本の人々に向けて、作品の見どころを教えて頂けますか?

ウゾ:一言で言えば『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』は刑務所というまったく異質な環境に放り込まれた、とある若い女性の物語と言えるわね。主人公のパイパーは当初、塀の中にいる女性たちから何も学ぶ事はないし、何一つ共通点もないだろうと感じている。でもドラマが進むにつれて、自分が他の人々と似ているという事を発見し始めるの。刑務所という環境の中で生き延びようとする中で、彼女は刑務所の仲間たちと自分との間に意外に共通点があるって気付いていくのよ。こうした事を基盤にちゃんとユーモアを散りばめながら、とにかく面白く描かれているの、ここ重要よ!

ラヴァーン:『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』はとても複雑な話ではあるけれど、コメディとドラマを要素を融合して、リッチフィールド刑務所に収監された多様な女性たちの姿を描いているの。シーズン1のキャッチフレーズは「すべての判決にストーリーがある」というもので、この番組の一番の魅力は刑務所に入っているがために、少なくともアメリカではロクデナシと考えられている人たちを、きちんと"人間"として描いている部分だと思うの。フラッシュバックや見事なユーモア、リアリズムを通して、多様な女性からなる集団の物語を伝えるこの作品を見た視聴者は、彼女たちとの思いもよらない共通点を見つけたり、共感を覚えたりして、彼女たちが大好きになっていく、そんなシリーズなの。

 

『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』はNetflixで好評配信中。


Photo:ラヴァーン・コックス&ウゾ・アドゥバ
『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』
(C) Netflix. All Rights Reserved.