『Empire』タラジ・P・ヘンソン、ジャシー・スモレット、ブリシャー・グレイ インタビュー!

全米で社会現象化するほど大ヒットしている音楽ドラマ『Empire/成功の代償』で、ライオン家のクッキー、ジャマル、ハキームを演じるタラジ・P・ヘンソンとジャシー・スモレット、ブリシャー・グレイが揃って来日。ドラマさながらにエネルギッシュな3人は、全員揃ってのインタビューでもパワルフさを炸裂。親子役を演じる抜群のチームワークで、ドラマの魅力について語ってくれた。

 

―― 『Empire』はアメリカでも社会現象化するほどの人気になっていますが、このドラマのどこがそれほど多くの人を魅了したのだと思いますか?

タラジ・P・ヘンソン:やっぱりファッション性だったり、音楽性、それに昼メロのようなドロ沼劇でありながら、そこにはしっかりとしたリアリティがあるところじゃないかしら。

ジャシー・スモレット:彼女の言葉に乗っかって言うと、そこに家族の物語が描かれているところも重要なんじゃないかな。家族の話にはみんなどこかしら共感できる部分があると思う。家族の中での葛藤だったり、ケンカだったり、愛だったり。どこに惹かれるかはそれぞれだろうけど、このドラマが家族の物語だというの事が魅力のひとつになっていると思う。

ブリシャー・グレイ:その通り!(笑)2人が全部言っちゃったんだけど(笑) そこに加えるなら、このドラマのフレッシュさとか、音楽もどんどん良くなっていくところもあるんじゃないかな。

―― タラジさんは役作りの上で、ご自身の父親のイメージを取り入れているそうですが、それはどういったところなんでしょう?

タラジ:父はキツいお酒をストレートで飲むような、思った事をオブラートに包まずそのまま言ってしまうような人だったの。正直若い頃は父のそういうところを恥ずかしいと思った事もあったんだけど、年を取ってくると、社会に対してちょっと疲れちゃったり、慣れきってしまって言いたい事も言えずに縮こまってしまう事があると気付くでしょ? そんな時、実は父のように正直な人こそヒーローなんじゃないかと思ったの。それに父も何かあると返事がすごく早くて、面白い答えがすぐさま返ってくるような人だったのよ(笑) クッキーはみんなが言いたい事をはっきり言ってくれるところが本当にすごいと思う。多くの人がクッキーの役作りには女性をモデルにしていると思っているんだけど、実は父親なのよ(笑)

―― お二人は役作りで参考にした人などはいますか?

ブリシャー:ハキームという人間は突拍子もなくて、何をするか分からないところがあるんだ。それにすごく甘やかされてるしね。僕自身はあそこまで裕福な家庭で育ってないから、あんなに甘やかされてないから、ちょっと想像力を使って自分だったらどうだろうと考えて役作りをしていったんだ。でも音楽的な部分で言えば、彼は完全に僕自身だよ。

ジャシー:......。あ、僕の番か! ゴメン、日本語がまるで音楽のように聞こえて聞き入ってたよ(笑)僕は演技をする時に真実を伝えたいと思っていて、それがこのドラマではジャマルの音楽性だったり、作品の中でのジャマルの人間性だったりするんだけど、人間性で言えば、人は誰でも傷を抱えていると思うんだ。人種だったり、年齢だったり、宗教だったり、性的指向だったり、何かしらの事で差別を受けたりしていると思うから、そこの部分をみんなが共感できるように誠実に伝えたいと思っているんだ。

―― 番組がヒットしてみなさんの生活はどういう風に変化しましたか?

タラジ:(ションボリした様子で)もう気軽にスーパーにも行けなくなってしまったわ......。ターゲットが大好きなのに!(笑) でも本当に常に人の視線にさらされる事になってしまったから、オフの時に遠くの友人に会いに行きたくても飛行機にも一人で乗れないの。いつもたくさんの人がガードしてくれていて、常に人に囲まれている状態だから。そういう意味では人生がちょっと複雑になってしまったわね。車も自分で運転する事も出来ないし、ちょっと遊び心で窓を開けてハっと顔を出すと、見つけた通りがかりの人が興奮して寄ってきてしまう。こればかりは自分ではどうしようもないから、運転は人に任せて、ウィンドウにはスモークを張って、私はディーヴァのように後部座席に座ってるのよ(笑)

ブリシャー:ドラマに出演する前はピザハットで働いてたんだけど、今はそこから脱出してTVに出てるから、ピザを作らなくても済むようになったよ(笑)

ジャシー:本当にすごく変わったよね。今は街を歩いてたらみんなに気付かれる生活だよ。実は今朝ヤズ(ブリシャーの事)と一緒に散歩してたんだけど、誰も寄ってこなくて、それが逆に不思議な気分になってしまったんだ。思わず通りすがりの人を捕まえて、「僕の事、分かる?」って聞きたくなっちゃったくらい(笑) でもそれが新鮮ですごく楽しかったな。アメリカでは常に人に見られているから、間違いを起こしちゃいけないって、常にきちんとしているよう意識してしまうから。突然パパラッチが飛び出して来たりね。でもドラマの役が僕と同じように音楽で人前に出ていく役だから、ある意味でそれが私生活でのトレーニングになっている気がするよ。

 

――クッキーの名セリフなど、見どころの多いドラマですが、みなさんの好きなエピソードやシーンはどれですか?

タラジ:クッキーがルシウスとのデートだと思ってレストランに向かうシーンかな。あのシーンでクッキーはゴージャスなコートの中は下着だけで張り切ってレストランに行ったんだけど、実はあれ、アドリブだったの。もっと前にアニカが箱から出てくるシーンがあって、それとちょっとリンクさせようと思ったの。彼女に対抗するならもっとちゃんとしたものを見せなくちゃ!(笑) クッキーは直情的で思いついたら即行動してしまうところがあるし、視聴者がまだ見ていないクッキーの一面を見せたいと思ったのよ。でも何も知らなかった二人は本気でビックリしてたわね(笑) 思わず「お母さんのお尻をそんな風に見ちゃダメでしょ!」って言っちゃった(爆笑) それが日本語でどんな風に言われるのか、すごく見てみたいわ!

(ブリシャー&ジャシー いいもの見せてもらったとばかりに思わずピース)

ジャシー:僕のお気に入りのシーンもタラジと同じだよ。あの時、僕たちは何も聞いてなかったけど監督にはちゃんと話が通っていて、まず僕らのアップから撮影したんだ。だからドラマでの僕らのリアクションは演技じゃなく素だったんだよ(笑) 思わずあんな顔で見ちゃったけど、実際のタラジは僕のお母さんじゃないからしょうがないよね(笑)それ以外に挙げるとしたら、アンドレがエレベーターの中でおかしくなってしまうシーンかな。兄弟3人揃っていて、彼を落ち着かせるために3人で歌を歌うんだけど、あれは本当に素晴らしい瞬間だったと思う。

ブリシャー:僕は幼いジャマルがゴミ溜めに投げ込まれるシーンだな。とても悲しいシーンなんだけど、あの出来事がシーズン1の要になっていて、バックストーリー的に流れているものだったので、いろんな場面で影響を与えていたと思うし、音楽的にもすごくインパクトがあったと思う。あのシーンではジャマルはもちろんなんだけど、クッキーもルシウスも傷を負ってしまっているんだよね。

――『Empire』では音楽も重要な要素ですが、ドラマと音楽との親和性について、それぞれどう感じていますか?

タラジ:このドラマで出てくる音楽は、あくまで普通なところがいいの。何かのシーンが終わって、急に「ハイ、次は音楽!」って切り替えるんじゃなくて、音楽が物語の中に美しく織り込まれているの。すごく自然に音楽がドラマの中に存在していて、そういう音楽の描き方というのは今までのドラマにはなかったものだと思う。もちろんショーの場面ではミュージカルに近い演出もされているけど、それ以外の場面ではあくまで自然体なのよ。

ジャシー:このドラマは今の時代のモダンなミュージカルだよね。リアリティに基づいた形で音楽が存在していて、まるでひとつのキャラクターのようにストーリーを進めてくれる。曲によっては直接内容に関係していないものもあるけど、それでもストーリーを進める役を担っているんだ。それにドラマと切り離しても、楽曲そのものが素晴らしいから、単なるTVのBGMではないんだ。タラジだって、彼女自身が歌っているわけではないけど、とてもオーガニックな感じでドラマ全体をまとめてるよね。

ブリシャー:彼が言った通り、番組から切り離しても、普通にラジオから流れてきそうな音楽ばかりだよね。でも同時に他のドラマよりも、登場人物たちの感情を伝えてくれるものになっていて、それがキャラクターのパーソナルな部分を上手く表現してくれているんだ。

―― 実際『Empire』は音楽面でも高い評価を受けていて、今回グラミー賞にもノミネートされてますよね。

タラジ:(ジャシーに)今グラミーって言ったわよ

ジャシー:そうだ! みんなでステージに立たなきゃね!

――(笑)ノミネートされたと聞いてどう感じました?

タラジ:え? ゴールデン・グローブの事?(笑)(注:インタビュー時は授賞式前。その後タラジは見事ドラマ部門の女優賞を受賞)

ジャシー&ブリシャー:素晴らしい!(拍手)

 

―― グラミーのノミネートについてです(笑)

ジャシー:もう少しで泣きそうだったよ!

ブリシャー:僕は「グラミーにノミネートされたよ!」って速攻で母親に電話したよ。何が嬉しいって、これがみんなでノミネートされた事だよ。このドラマに出演して、本当に嬉しい事ばかりなんだ。グラミーにノミネートされて、若干22歳で(タラジに向かって)こんな美しい女性と一緒に仕事ができて、それまで母親と一緒にTVで見ていた人と、今は一緒に仕事をするようになっているんだから、本当に感激だよ。

タラジ:私は歌ってないんだけど(笑)、みんなの事をとても誇りに思っているわ。でも番組のサントラがノミネートされたんだから、つまりは私もノミネートされたって事になるんじゃない?(笑)

ジャシー:ならないよ(笑) でもいいじゃない。前に『ハッスル&フロウ』で歌った曲がアカデミー賞にノミネートされてるんだから(笑) タラジは歌ってはいないけど、みんなのラッキーチャームなんだよ。

タラジ:それもそうね(笑)

ジャシー:シンガーとしてもそうなんだけど、今回ドラマのサントラには作曲で参加している曲もあるし、そういう意味では受賞しようがしまいが、ノミネートされたという実績がついてくるわけだから、すでに勝利を手に入れたようなものだよね。

 

(Photo:yoshiokamakoto)

■DVDリリース情報
『Empire/エンパイア 成功の代償』シーズン1
2016年3月9日(水)レンタル配信、2016年4月2日(土)DVDリリース、2016年4月13日(水)DVDレンタルスタート
発売元:20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン