第88回アカデミー賞で作品賞・脚本賞を受賞した『スポットライト 世紀のスクープ』は、カトリック教会の神父による児童への性的虐待を追った新聞記者たちの姿を描いた真実の物語。全米映画俳優組合賞(SAG賞)でキャスト賞を獲得するなど、マーク・ラファロ(『アベンジャーズ』)、マイケル・キートン(『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』)、レイチェル・マクアダムス(『TRUE DETECTIVE/ロサンゼルス』)、リーヴ・シュレイバー(『レイ・ドノヴァン ザ・フィクサー』)ら豪華キャストが織りなすアンサンブル演技が見どころの一つとなっている。その一人が、ボストン・グローブ紙の《スポットライト》チームの上司、ベン・ブラッドリー・Jrを演じるジョン・スラッテリー。『MAD MEN マッドメン』の主人公の上司ロジャー・スターリング役でエミー賞に4度ノミネートされた彼は、本作でも上司役をリアリティたっぷりに演じている。ドラマファンにおなじみの彼からインタビューが届いた。
ジョンは、本作が彼の故郷で起きた出来事を取り上げていることについて、「僕はボストン出身だからこのストーリーにはとても感じるものがあったよ。叔父が(ボストンを本拠地にする野球チーム)レッドソックスの仕事をしていたから、野球場での撮影は嬉しかったな」とコメント。
また、実在の人物を演じるにあたって綿密な役作りを行ったことも明かした。「(モデルとなった)ベン・ブラッドリー・Jrには、ボストンで会って食事をしながら記事について、そして物語に出てくる他の記者たちの印象なども聞かせてもらった。当時の会社の様子や(リーヴ・シュレイバー演じる編集長の)マーティが着任した時の話など、自分が演じる役の背景を探っていったんだ」
ベンからいろいろと話を聞く中で、ジョンは新聞記者の極意も教わったそうだ。「長期にわたって取材する調査報道の記者たちは忍耐強くなければいけない。それから事件の核心を感じる力も必要らしい。どうすればそれを証明できる物を入手できるかを忍耐強く考えなければならない。信ぴょう性の高い記事には証拠が必要だからね」と説明している。さらに「この作品にはもう一つのテーマがある。新聞が衰退している現実だ。ボストン・グローブ紙も事件当時の2001年に比べるとおよそ半数になるほど人員削減をしたそうだ。調査報道も昔とは違う。今の人たちはネットでニュースの見出ししか見ない」と現在のジャーナリズムに対する懸念も述べた。
そして最後に、「トム・マッカーシー監督と脚本家のジョシュ・シンガーは記者たちから仕入れた山ほどの情報をこの物語に凝縮した。報道がテーマの作品だけど、楽しめる内容だ」と、一見固いテーマを取り扱いながらもエンターテイメント作品に仕上がっていることを強調している。
セクシーな白髪で"シルバー・フォックス"と呼ばれるジョン。『MAD MEN』でダンディでクールな上司を演じていた彼が本作ではどんな上司キャラを見せてくれるのか注目だ。
2001年の夏、ボストン・グローブ紙に新しい編集局長のマーティ・バロンが着任する。マイアミからやってきたアウトサイダーのバロンは、地元出身の誰もがタブー視するカトリック教会の権威にひるまず、ある神父による性的虐待事件を詳しく掘り下げる方針を打ち出す。その担当を命じられたのは、独自の極秘調査に基づく特集記事欄《スポットライト》を手掛ける4人の記者たち。デスクのウォルター・"ロビー"・ロビンソンをリーダーとするチームは、事件の被害者や弁護士への地道な取材を積み重ね、大勢の神父が同様の罪を犯しているおぞましい実態と、その背後に教会の隠蔽システムが存在する疑惑を探り当てる。やがて9.11同時多発テロ発生による一時中断を余儀なくされながらも、チームは一丸となって教会の罪を暴くために闘い続けるのだった...。(海外ドラマNAVI)
Photo:『スポットライト 世紀のスクープ』
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