原作のエッセンスをさらに取り込み進化する『エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY』シーズン3

世界で最も有名な探偵シャーロック・ホームズと相棒ワトソンが、ロンドンを舞台に活躍するアーサー・コナン・ドイルの推理小説シリーズ。聖書の次に世界で売れている本とまで称されるほどの世界的知名度と人気から、現在でも数多くのシャーロック・ホームズが映像化されている。今回はその中でも、大胆なアレンジにより人気を博している『エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY』(以下『エレメンタリー』)の最新シーズンであるシーズン3に注目してみたい。

20160708_elementary_01.jpg

■舞台は現代のニューヨーク、ワトソンは女性という大胆アレンジ

近年、シャーロック・ホームズの映像作品は大人気。ベネディクト・カンバーバッチ主演のドラマ『SHERLOCK/シャーロック』や、ロバート・ダウニー・Jr主演の映画シリーズが挙げられる。その中で『エレメンタリー』は、舞台をヴィクトリア朝時代のロンドンから現代のニューヨークへと移し、相棒のワトソンを原作と同じく医者ではあるものの、ファーストネームがジョンではなくジョーンという女性へと設定。しかも演じるのはアジア系のルーシー・リューという新解釈で、シャーロキアンもビックリの設定となっている。そんな大胆なアレンジで注目を浴びた『エレメンタリー』だが、探偵ものとしても優れたドラマとして評価され、全米ではシーズン4が放送済み、シーズン5の制作も決定している人気作だ。

ちなみにタイトルの"エレメンタリー(ELEMENTARY)"は、シャーロック・ホームズを舞台で演じた俳優ウィリアム・ジレットのセリフ「Elementary, my dear Watson.(初歩的なことだよ、ワトソン君)」に由来している。原作には存在しないが、アメリカン・フィルム・インスティテュートが発表した「アメリカ映画の名セリフベスト100」にも入っている名ゼリフだ。

20160708_elementary_04.jpg

■シーズンが進むごとに原作ファンもより楽しめる

前述した通り、ワトソンを女性にするといったインパクトの強い脚色に注目が集まりがちな『エレメンタリー』だが、45分尺の一話完結型ということで、まるで原作の短編を読む感覚であり、原作ファンから、ドイルの世界を最も忠実に映像化したと言われるジェレミー・ブレット主演のドラマシリーズ『シャーロック・ホームズの冒険』を好む人にも見やすい作品となっている。また、そのバックボーンには、原作でも描かれているホームズとワトソンの友情関係がしっかりと存在している。これもまた原作にあるホームズの麻薬依存の克服と、本作オリジナル設定として、依存症のホームズを付添人として助けながら、同時に彼から探偵としての訓練を受けるワトソン。普通なら、ワトソンを女性にしてしまうとホームズとの恋愛関係が描かれそうなものだが、『エレメンタリー』でも彼らは大事な友人同士であり、安易に恋愛関係にならない点は好感が持てる。

設定面では、シーズン1は、ハドソン夫人、アイリーン・アドラー、セバスチャン・モラン、モリアーティという原作ファンお馴染みのキャラクターが登場する一方、ストーリー自体はオリジナル色が濃かった。その点について、製作総指揮者のロバート・ドハディは、シーズン1で原作を参照したのは少しだけだったので、シーズン2からはさらに原作ファンが楽しめるように原作の参照度合いを上げたと説明している。その言葉通り、シーズン2の第1話「ロンドン・コーリング」はロンドンを舞台とし、ベーカー街221bや、兄のマイクロフト、レストレードが登場。また、第7話「華麗なる依頼人」では、マイクロフトがオーナーのレストラン「ディオゲネスクラブ」を舞台とし、原作「銀星号事件」をモチーフにした事件が起きるなど、エピソード全体に原作の設定が生かされるようになった

このように、シーズン2からは原作ファンもより楽しめるドラマとなっているが、その流れはシーズン3でより加速している。

20160708_elementary_06.jpg

■新キャラクターのキティ・ウィンターが登場

シーズン2のラストで、ホームズは英国秘密情報部MI6に加入し、ニューヨークを離れてしまう。そして迎えたシーズン3は、一人でニューヨーク市警のコンサルタントを続けていたワトソンの前に、ホームズがワトソンに代わる相棒兼弟子として、ロンドンからキティ・ウィンターという女性を連れて戻ってくるところから始まる。

このキティ・ウィンターという名前を聞いてピンとくる原作ファンも多いはず。彼女は原作のエピソード「高名な依頼人」に登場した同姓同名の女性をベースとしたキャラクターなのだ。原作では、ホームズがデル・グルーナー男爵の悪事を暴くため、男爵にかつてひどい目に遭わされたキティ・ウィンターの力を借りるという設定だった。一方『エレメンタリー』では、暴行の被害者で社会から孤立していたキティに、自分と似たものを感じたホームズが、ワトソンの穴を埋めるために探偵として教育するという描写になっている。

シーズン3の前半のメインストーリーは、このキティと、原作「高名な依頼人」がベース。そのクライマックスである、第11話「高名な依頼人」と第12話「決着の日」では、キティ以外にもデル・グルーナー、ド・メルヴィルら小説と同じキャラクターが姿を見せた。

20160708_elementary_05.jpg

■その他にも原作のエッセンスが満載

シーズン3には、キティをはじめとした「高名な依頼人」の設定以外にも、原作ファンが楽しめるエッセンスが数多くちりばめられている。第2話「オレンジの種五つ」は、もちろん原作の同名短編小説をモチーフとしたエピソードで、どちらにもオープンショーというキャラクターが登場する。第8話「エンド・オブ・ウォッチ」の謎は、原作の「空き家の冒険」や「最後の事件」の小道具として語られる空気銃(エアガン)。さらに、第23話「1億匹事件」は、ホームズの数少ない趣味の一つである養蜂に関係している。そして、シーズン3の最終エピソードである第24話「仕組まれた罠」は、ホームズの麻薬依存症をフィーチャーしていた。このようにシーズン3には、それまでのシーズン以上に原作ファンが楽しめる仕掛けが施されている

シーズンを重ねるごとに、オリジナリティに磨きをかけるだけでなく、原作ファンもいっそう楽しめるように進化し続ける『エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY』。海外ドラマファンだけでなく、ドイルによる原作や他のホームズ映像作品が好きな人にもぜひ注目してほしい作品だ

20160708_elementary_jacket.jpg

■『エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY』シーズン3 商品情報
7月6日(水)リリース
【セル】DVD-BOX Part1(6枚組)9,300円+税
【レンタル】DVD vol.1~6

8月3日(水)リリース
【セル】DVD-BOX Part2(6枚組)9,300円+税
【レンタル】DVD vol.7~12
発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

Photo:『エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY』シーズン3 TM & © 2016 CBS Studios Inc. CBS and related logos are trademarks of CBS Broadcasting Inc. All Rights Reserved.