S・キング×J・J・エイブラムズのプラチナタッグが、ケネディ暗殺の謎に迫る『11/22/63』ついに日本初放送!

つい3年前の2013年は、ケネディ暗殺からちょうど50年にあたる年だった。オバマ大統領夫妻は墓地を訪れて故人を偲び、メディアではケネディの特集が盛んに組まれた。また、暗殺の模様を一般人が撮った有名な映像が、デジタル補正されて新たに公開された。日本でも、長女のキャロライン・ケネディ駐日大使の着任が注目を浴びたことは記憶に新しい。

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50年という長い歳月を経ても、ケネディ暗殺がこれだけの関心を集めるのはなぜなのだろうか?

●アメリカ人に愛された若き大統領の衝撃的な暗殺

1961年に第35代大統領に就任したジョン・F・ケネディ(JFK)は、43歳という若さとハンサムなマスクで人気を集めた。そして、アメリカにおける宇宙開発の音頭をとり、人種差別撤廃に向けて強く働きかけ、第三次世界大戦の一歩手前までいったキューバ危機を回避するといった功績も残した。アメリカ人に希望を与え、愛された大統領だったと言える。

それだけに、1963年11月22日、テキサス州ダラス市のパレード中に起きた暗殺は、ショッキングな出来事だった。

直接の実行犯とされるのはリー・ハーヴェイ・オズワルドという男だ。当時のソ連に亡命し、アメリカに戻ってきたいわくつきの人物だが、事件直後に殺されたため、実行に至る具体的な動機や手口などははっきりしていない。事件にはほかにも不可解な点が多く、「黒幕にマフィアやソ連がいたのではないか」「実行犯は複数いたのではないか」など、諸説が入り乱れている。

誰しも過去を振り返って、「もしもあの時、違う行動をとっていたら?」と自問するもの。その個人のレベルを超えて、ケネディ暗殺を防ぐことができたら、アメリカはもっと良くなっていたのではないか――という思いは、多くのアメリカ人が共通して抱いているようだ。

●S・キングとJ・J・エイブラムズの持ち味の相乗効果

上に述べたような事情から、ケネディ暗殺は、映画やドラマなどのフィクション作品においても、格好の題材となっている。例えば、映画『ウォッチメン』ではコメディアンと呼ばれるヒーローが、また、ドラマ『X-ファイル』ではスモーキングマン(煙草を吸う男)が、暗殺の実行犯だったという設定になっている。

そして、2011年に刊行されたスティーヴン・キングの小説「11/22/63」は、暗殺当日の日付を表すタイトルからも分かる通り、この大きな題材に、正面から取り組んだ大長編SFスリラー作品だ。スリリングなストーリー展開はもとより、膨大なリサーチを行っただけあって、60年代アメリカの緻密な描写も高く評価された。そして、キングの固定読者であるホラーファンを超えて、広い読者層にアピールしたことでも知られる。

このベストセラー小説に、J・J・エイブラムズ率いるバッド・ロボット社が注目したのは当然のことと言えるだろう。

「キャリー」「シャイニング」のようなホラー小説だけでなく「スタンド・バイ・ミー」「グリーンマイル」などの感動作まで手掛け頭角を現したキング。一方、「デッド・ゾーン」や「アンダー・ザ・ドーム」では、超能力や宇宙人といったB級SF的な題材に、人間の狂気を絡めて独自の世界を展開させた稀代のストーリーテラー。

そして人気ドラマ『LOST』や『FRINGE/フリンジ』を手がけたエイブラムズは、やはりB級SF的な題材をもとに、伏線を散りばめたミステリアスな展開で幅広い層の視聴者の関心をかきたてるヒットメイカーだ。

この二人がタッグを組んだことで、それぞれの持ち味が相乗効果を生み出しているのが本作の魅力と言える。

●キング作品ならではの時間旅行ルール

時は2016年の現代。物語の主人公となる英語教師のジェイク・エッピングは、妻と離婚したばかりの孤独な男だ。行きつけの食堂にいる時に、奥の部屋から出てきた店主のアルがすっかり憔悴し、変わり果てていることに驚く。

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そんなジェイクにアルは、食堂の奥にあるクローゼットを見せた。それはなんと1960年の過去へと通じる道になっていて、アルは"ウサギの穴"と呼んでいた。そして、たった今、過去から戻ってきたというアルは、肺がんにかかっていることを告白する。

余命いくばくもないアルは、過去の世界で書き溜めたメモや資料を手渡し、ケネディ暗殺を防いでほしいとジェイクに告げる。成功すれば、ベトナム戦争の泥沼化により多くの命が無駄に失われることはなくなるだろう、というのだ。突拍子もない依頼に、初めはうろたえて断ったジェイクだが、翌日息を引き取ったアルの遺体を目にして、彼の遺志を継ぐことを心に決める...。

生前のアルがジェイクに説明したところでは、"ウサギの穴"を用いる時間旅行には、独特のルールが適用される。まず、穴をくぐって過去に行く度、歴史の流れはリセットされてしまう。そして、何度行き来を繰り返しても、通路の到達地点が1960年であることは変わらない。さらに、どんなに長い時間を過去で過ごしても、戻ってくれば現代ではわずか2分しか経過していない。

そして、ここがキング作品の白眉と言える部分なのだが、過去を変えようとするジェイクの行動に、抵抗するかのような挙動を時間が示すことがある。歴史のターニングポイントに近づけば近づくほど、ジェイクは大きな困難に見舞われていく。本作では私たちが想像する以上に、時間は圧倒的な力と意思を持っているようなのだ。

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アルの遺志を継いで1960年に身を落ち着け、教職に就いたジェイクは、仕事をこなしながら、3年後に暗殺を決行するオズワルドの背後を洗い出す作業にとりかかる。オズワルドは単独犯なのか、それとも誰かの命令で動いていたのかを探り当てる必要があるのだ。そしてジェイクは、職場では校長や黒人女性の秘書と友人になり、図書館員のセイディとは恋に落ちるなど、周囲の人々との関係も進展していく。その一方で、キング作品に不可欠な、狂気を宿した危険人物たちもジェイクの前に立ちはだかる。

過去を訪れた本来の目的を片時も忘れぬよう心がけながら、身の回りで起きる数々の出来事に、喜び、そして苦悩するジェイク。果たして、本当に歴史を変えることはできるのだろうか? そして、イエローカードを帽子にさし、どこからともなく現れては、「お前はここにいるべきじゃない」と、ジェイクに度々警告する男は何者なのか?

●60年代を再現した映像にも注目

時間SFとしてのプロットの面白さもさることながら、60年代初期のアメリカを再現した映像も、本作の見どころだ。カラフルなレトロファッションやクルマ、オールディーズを中心とする音楽、当時の街並み、小道具、物価に至るまで、しっかり描写されている。主演のジェームズ・フランコも、無精髭を生やした現代のカジュアルな出で立ちから、髭を剃り髪をきっちり整え、帽子とスーツで決めて見事に変身。視覚的にも楽しめる作品となっている。

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もちろん、カラフルで華やかな世界だけでなく、当時の世相、特に、深刻な人種差別や家庭内暴力といった、アメリカ史の陰も表現される。実行犯オズワルドをはじめとする関係者たちの人となりや、暗殺現場となったダラス市の通り、狙撃に用いられた教科書倉庫ビルなど、ケネディ暗殺にまつわるディテールも、歴史愛好家は興味深くチェックすることができるだろう。

●主演のジェームズ・フランコと、脇を固める魅力的なキャスト

主演のジェームズは、『127時間』でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされ、『スパイダーマン』シリーズや『猿の惑星:創世記』『オズ はじまりの戦い』などの大作、コメディまで幅広くこなす俳優で、さらに脚本・監督・プロデュースと、幅広い活動を繰り広げている。しかし、TVドラマのレギュラー出演は、活動初期の『フリークス学園』以来、久々のことだ。

報道によると、エイブラムズに声をかけられる前から、ジェームズは原作の大ファンで、本当は自ら映像化を手がけたかったほどなのだとか。そんな経緯から、主演だけでなく製作にもクレジットされ、第5話の監督も務めるなど、本作の参加には気合が入っていたようだ。

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さらに、脇を固めるキャストとして、『アダプテーション』でアカデミー賞助演男優賞を受賞したクリス・クーパーが、頑固そうな風貌ながら強い良心をもつアルを、そして『ビーイング・エリカ』『ドラキュラZERO』のサラ・ガドンが、読書を通じてジェイクと心を通わす清廉なセイディを演じる。特に、歴史の波に飲み込まれるジェイクとセイディの恋愛は、美しくも切なく描かれており、二人を愛おしく感じる人も多いはず。

本作は9話構成のミニシリーズで、イッキ見しやすい長さとなっている。物語もきちんと完結するので、ドラマファンに広くオススメできる作品だ。

■『11/22/63』(全9話)独占放送情報
【STAR1 字幕版】8月11日(木・祝)スタート 毎週木曜 午後11時~ほか
【STAR3 二カ国語版】8月15日(月)スタート 毎週月曜 午後11時30分~ほか

■『11/22/63』独占日本初放送記念、関連特集
スティーヴン・キング特集:
【STAR 1 プレミアム】8月2日(火)~8月4日(木)夕方2作品ずつ3日連続放送
JFK暗殺の真実を追え!:
【STAR1 プレミアム】8月1日(月)~8月3日(水)12時15分連日放送ほか

Photo:『11/22/63』(C)Warner Bros. Entertainment Inc.