現役英国女王の怒濤の半生を描いた筋金入りロイヤル・ドラマ!『ザ・クラウン(原題)/ The Crown』TCA/Netflix 2016 夏期プレスツアー潜入レポート

春と夏にTV評論家を対象にして行われるTV批評家協会ツアー。春にお招きいただいたNetflix主催のツアーに引き続き、先日行われたNetflix主催夏のプレスツアーにお邪魔してきました!

配信ホヤホヤの話題作から秋にかけて配信がスタートする新シリーズを真っ先に試写させていただくと共に、出演者たちがステージに集うパネル・ディスカッションやインタビューの機会が設けられたこのツアー。今回も大いに盛り上がって、Netflix選り抜きオリジナル・シリーズの取材をしてきました。

人気TVドラマ『ダウントン・アビー』の大成功から世界中の人々がイギリス上流社会に飽くなき興味があることを感じ取ったNetflixが、アメリカの映像配信会社史上最高の製作費をかけて作ったのが『The Crown』。本作のタイトルにもなっている"クラウン"とはご存知のとおり「王冠」という意味。父親だったジョージ6世の早すぎる逝去により24歳という若さで即位することになったエリザベス2世(現英国女王)。王冠が象徴する国家の重圧と女王を巡る周囲の人たちとの波瀾万丈の関係を描いた人間ドラマです。

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TV評論家協会ツアーの当日、インタビュー・ルームに姿を現してくれたのは、本作の製作総指揮そして脚本家でもあるピーター・モーガン氏。アカデミー脚本賞にノミネートされた映画『クィーン』をはじめ、TVドラマ『ヘンリー8世』(日本未公開)や映画『ブーリン家の姉妹』の脚本を手掛けたピーターは、イギリス王室もののエキスパートと言ってもいいほど。

ピーターは、「まだ若い娘だったエリザベス(女王)と年老いたチャーチル(首相)の、孫娘と祖父のような関係を描けたら素晴らしい作品になるだろうと思った」と物語構想のきっかけを語ってくれたのですが、最初の頃はこのストーリーを映画化しようと思っていたそうです。

新米女王と政治を司る老人の物語・・・なんて言うと少々コッケイですが、滑稽といえばピーターが面白いことを教えてくれたんです。日本では想像のつかない話ですが、英国のロイヤル・ファミリーはイギリス国民からふざけた扱いを受けるのに慣れている、というのです。日本では「皇室」といえば畏れ多く敬うべきものという感覚ですが、英国の王室はゴシップやスキャンダルの格好のネタで国民たちの娯楽的要素にもなっているというのです。これには合同インタビューの場にいた他の日本人レポーターさん達もビックリ。

でもピーターは続けて、「このドラマはそこが違うんだ。私たちは王室の歴史を語ることに責任を持って、物語にも敬意を払って接している。そこがこれまでの王室ドラマとは異なるところだ」と語ってくれました。

公の目が届かぬベールの向こうにあるロイヤル・ファミリーの生活を描くにあたって、この番組を製作する上でのリサーチ量は大変なものだったと思うのですが、そこはさすがに予算たっぷり(!?)のプロダクションだけのことはあり、リサーチを専門にする有能なリサーチ・チームがいるのだそうです。でもやはり「内部」からの情報も必要なのでは・・・という質問にピーターは、「名前は言えないけど、当然のことながら王室側に秘密のコンタクトはいるよ」と教えてくれました。

さて、ピーターのインタビューの後にはアメリカ人俳優にしてチャーチル英首相を演じるベテラン俳優ジョン・リスゴー氏がお目見え! 以前からジョンの作品のファンだった筆者は多少興奮気味!(笑) シェイクスピア劇など演劇界でも著名なジョンは、80年代のヒット映画『ハリーとヘンダスン一家』といったコメディものから『レイジング・ケイン』など鬼気迫った役にいたるまで、その幅広い演技で有名な性格俳優です。

そんなジョンですが、アメリカ人俳優が英国の偉人を演じるとあって、さすがに緊張したそうです。でもチャーチルについて研究しているうちに、子ども時代のチャーチルは劣等生で、親にもろくにかまってもらえず、孤独で自信のない少年だったことを知り、「子ども時代の後ろめたさを過度に補償するため、大人になってからのチャーチルは往々にして向こう見ずな態度を取ったんだろうと思ったよ。彼の別の側面にとても興味をそそられた」と話してくれました。「チャーチルを演じるにあたって最初は怖いと思う部分もあったけど、その役に挑戦するというワクワクする気持ちの方が勝っていた」と語るジョン。このドラマでの彼の活躍が楽しみです!

ちなみにQ&Aの壇上でクリエイターのピーターが、「ひょっとするとそのうち発売されるDVDセットには本物のエリザベス女王のコメントが入るかもよ!」とジョークを飛ばしていましたが、どうやらこのドラマの評判はエリザベス女王の耳にも届いているらしく、イギリスでは早くもかなり話題を呼んでいるようです。早くこのシリーズが日本でも解禁になるといいですね!

(取材・文: 明美・トスト / Akemi Tosto)

Photo:TCAプレスツアー
『The Crown』
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