19世紀末の英国ロンドンを舞台に、ヴァンパイア、フランケンシュタイン、ドリアン・グレイといった様々な有名モンスターやキャラクターが登場する世界を描いた驚愕のダークアクション『ペニー・ドレッドフル 〜ナイトメア 血塗られた秘密〜』。ホラーやエロティックな要素も満載で、その裏に重厚な人間ドラマもあるこの奥深い作品は、オカルトに興味がある人はもちろん、多くの人に楽しんでもらえる一大エンターテイメント作である。
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原題にもなっている「ペニー・ドレッドフル」とは、19世紀の英国で流行した、1ペニーで買えるお手軽な大衆誌のこと。主にミステリー、スリラー、ホラーといった「ドレッドフル(恐ろしい)」小説を載せ、好評を博した。モンスターの物語もこの文化の中で花開くことになり、ジョニー・デップ主演で知られる『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』の主人公、復讐に燃えるスウィーニー・トッドもここから生まれたキャラクターの一人だ。
大胆な着想で描かれる同作がいかに魅力的な作品であるかを紹介していきたい。
■スタッフは数々の賞に輝いたヒットメイカー
同作を手掛けるのはサム・メンデス、ジョン・ローガンと、日本でもおなじみのヒットメイカー。メンデスが監督、ローガンが脚本を手掛けた『007』シリーズ過去2作、『007 スカイフォール』と『007 スペクター』は2作合わせて全世界でおよそ20億ドル(約2000億円)というメガヒットを記録。彼らは個別でも数々の功績を残しており、20代の頃から舞台で数々の賞を手にしてきたメンデスは、長編映画デビュー作の『アメリカン・ビューティー』でアカデミー賞監督賞受賞という快挙を達成。一方のローガンも、アカデミー賞で作品賞を含む5部門に輝いた歴史大作『グラディエーター』をはじめ、『ラスト サムライ』や『ヒューゴの不思議な発明』などの脚本を手掛け、3度のアカデミー賞ノミネートを誇る。今回、脚本家としてだけでなくクリエイターも務めるローガンは、先述した『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』の脚本も執筆しており、「ペニー・ドレッドフル」の世界はすでにおなじみなのだ。
■高いクオリティと大胆な表現を実現するShowtime作品
放送局は、『HOMELAND』『レイ・ドノヴァン ザ・フィクサー』『THE TUDORS〜背徳の王冠〜』『デクスター 〜警察官は殺人鬼』『Weeds 〜ママの秘密』といった、エミー賞やゴールデン・グローブ賞を賑わせるクオリティの高いドラマを世に送り出してきたShowtime。ケーブル局ゆえに、人がモンスターに襲われる残虐なシーンや過激な性描写を盛り込むことも可能となった。そうしたシーンが単にショッキングなだけでなく、熟練のスタッフとキャストにより芸術的な色合いを帯びているのも、本作の特徴と言える。
■ベテランと新進気鋭の俳優による、複雑な人間模様
魅力的なキャストが織りなす複雑な人間模様も見どころの一つ。冒険家であるマルコム卿と、彼の娘の親友である霊媒師ヴァネッサの、親子のそれにも似た、愛憎半ばする関係はその最たるものだろう。
それぞれを演じるのが、4代目ジェームズ・ボンドとして知られるティモシー・ダルトンと、6代目ボンド(ダニエル・クレイグ)の相手役を演じたエヴァ・グリーンというのも面白い。彼らに銃の腕前を買われて雇われるアメリカ人のイーサン(『パール・ハーバー』のジョシュ・ハートネット)とヴァネッサの距離が、エピソードを経るごとに近づいていく様も見逃せない。
そこへフランケンシュタイン博士と彼が生み出す"子どもたち"、女性も男性も魅了する不老不死の美青年ドリアン・グレイも絡み、物語はいっそう入り組んでいくと同時に、魅力を増していく。この二人を演じる若手にもぜひ注目してほしい。ドリアン役のリーヴ・カーニー(『テンペスト』)は、その妖しい魅力ですでに日本でもイケメンランキング常連となっている。そして、繊細な演技で天才フランケンシュタインを演じるハリー・トレッダウェイ(『コントロール』)は、まさにハマり役だ。
■紅一点エヴァ・グリーンの圧巻の存在感
そうしたキャラクターの中でも特に大きな存在感を放っているのがヴァネッサと、彼女を演じるエヴァ・グリーン。衝撃的なデビューを飾った『ドリーマーズ』や『007/カジノ・ロワイヤル』でとらえどころのないキャラクターを説得力たっぷりに演じていたエヴァは、本作ではさらなる難役に挑んでいる。信心深い家庭に育ちながら、マルコム卿らとの衝突を通して暗い闇に引き込まれていき、ついにはサタンに付け狙われることとなった霊媒師という設定のヴァネッサ。
ある時は悪女のように妖艶、かと思うと聖母のように慈悲深く、幼な子のように純粋で、巫女のように鬼気迫るといった風に様々な顔を見せていく。サタンに憑依されて硬直する降霊会の場面や大胆なベッドシーンも自らこなした彼女の熱演は、ゴールデン・グローブ賞ノミネートという実を結んだ。
■モンスターを題材に描く「人間らしさ」
マルコム卿の娘捜しという目的のために彼のもとに集結したヴァネッサ、イーサン、フランケンシュタインたちはいつしか一種の"ファミリー"となり、娘捜しが終わった後もいざとなれば互いを助け合う強い絆を築いていく。シーズン2では彼ら個人にスポットが当てられ、それぞれが新たな人間関係を通して感情を揺さぶられ、傷つき、涙し、支え合う。モンスターに限らず、登場人物の誰もが暗い過去や秘密を抱えている。その中で問われるのが、「人間らしいとは何か」ということ。
死体を使って人体実験を行い、命を与えるというタブーを犯すフランケンシュタイン博士、彼に生み出されながらも見捨てられ、愛を求め続ける哀しき怪物ジョン・クレア、そのジョンを見せ物にして金儲けを企む男、満月になると変身せずにはいられない狼男、魔女を迫害して処刑する民衆...。一体、何をもって人間らしさを定義するのかについて、ヴァネッサはあるキャラクターに向かって言う。「あなたは誰よりも人間らしい」と。そしてサタンから大きな選択を迫られた彼女は、何を望むか、あるいは何を望まないか、という選択がその人を形作ることを身をもって示してみせるのだ。
大衆誌から飛び出したスリラー、ホラーの舞台を一流のスタッフ、キャストで描く『ペニー・ドレッドフル 〜ナイトメア 血塗られた秘密〜』。その妖しくも人間味にあふれた世界をあなたも覗いてみてはいかがだろうか。
■『ペニー・ドレッドフル~ナイトメア 血塗られた秘密~』シーズン2 商品情報
9月7日(水)DVD発売、同日レンタル開始
<レンタル> Vol.1~5
<セル> DVD-BOX...8,900円+税
発売・販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
公式サイトはこちら
Photo:『ペニー・ドレッドフル~ナイトメア 血塗られた秘密~』シーズン2
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