ブロードウェイスターにクラッシック界のレジェンドが集結する『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』マニアなポイントをご紹介!

「オーケストラ」と聞いて、皆さんはどんなイメージを持たれるだろうか?

"高尚な趣味"、"正装して聞きに行くもの"、"演奏者は真面目な人っぽい"など様々な印象があるだろうが、日頃から常にオーケストラを身近に感じている人はあまり多くはないのでは?

そんなオーケストラ団員たちの「本当の姿」を題材としたコメディがAmazonオリジナルの『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』だ。2016年にゴールデングローブ作品賞、主演男優賞を受賞している同作は、1話30分ほどで軽快に物語が進んでいき、あっと言う間にその独特の世界観にはまって見終わってしまう。

 

架空のオーケストラ、ニューヨークシンフォニーに、芸術肌の変わり者で、超ラテン系!のエキセントリックな天才指揮者ロドリゴ(ガエル・ガルシア・ベルナル)が就任するところから物語は始まる。ヒロインは、オーボエ奏者のオーディションを受けたものの、なぜかロドリゴのアシスタントになったヘイリー(ローラ・カーク)。ロドリゴからは、「ハイライ」と呼ばれる。オーケストラの優雅なイメージからは想像もできない、団員たちの切羽詰まった生活の様子、人間関係、音楽家としての生き方、それに大人の恋愛事情もコミカルに盛り込まれ、壮大なクラッシック音楽を引き立てるニューヨークを舞台に物語は繰り広げられる。また、白髪の年配者からバイト生活の若者まで、全員が一癖も二癖もあるにも関わらず、なぜか憎めない面白い人間の集まりがこのドラマの最大の魅力!

日本でもシーズン2まで配信中の今作を既に全話ご覧になっている人でも楽しめるようなマニアなポイント&アメリカで一足お先に配信済みのシーズン3の見どころをご紹介していこう。

■マニアなポイント1:製作者がすごすぎる!

・原作の著者がニューヨークのオーボエ奏者

この作品、実は「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル〜セックス、ドラッグ、クラッシック〜」という原作に基づいている。その著者自身がニューヨーク・フィルやブロードウェイオーケストラのオーボエ奏者だったので、実はかなり現実に近い内容で真実味がある。リアリティ番組並の「そこまで描いちゃっていいの!?」という労働組合の内情や美しい音楽の裏で繰り広げられる人間描写に、「えー! そんなことあるんだ!」と思うこともしばしば。

・映画界、ブロードウェイ界の最高峰が集結

クリエイターが揃いまくっている同作。一人目は、あのコッポラ一族の映画監督、ロマン・コッポラ。二人目はコメディ俳優でミュージシャンのジェイソン・シュワルツマン。そしてあまり話題になってないマニアックなポイントは3人目だ。ここ数年、ブロードウェイで「若き天才演出家」の名をほしいままにしている演出家・脚本家であるアレックス・ティンバーズも参加している。360度あらゆるところにステージを作って、その周りを観客が移動しながら舞台を見るという斬新な演出方法で有名だ。こんなAリストの3人が共同制作している作品はそうそうない。

■マニアなポイント2:レアな出演者!

同作には、ニューヨークらしく、ブロードウェイやクラッシック界から大物が多数レギュラー、カメオ、そして"ちょい役!"出演をしている。

ニューヨークシンフォニーのプレジデントで、ロドリゴを連れてきたグロリア・ウィンザー役のバーナデット・ピータースは、トニー賞の受賞歴が2度もあるブロードウェイレジェンド。最近では同じくニューヨークを舞台にしたドラマ『SMASH』などにも出演。シーズン2では、ファンの期待通り、その美声を披露している。

第1話で、ヘイリーとシンシアが、ミュージカルの舞台下オーケストラで共演をして知り合うシーンがある。そのオーケストラピットの上で繰り広げられるチープな(失礼!)ミュージカルの主役ギリシャ神話のオイディプスを演じているのは、本当にブロードウェイスターとして、また映画やテレビ俳優として活躍しているコンスタンティン・マルーリスだ。

彼は、『アメリカン・アイドル』で、後に優勝するキャリー・アンダーウッドに負けるものの、トム・クルーズ出演の『ロック・オブ・エイジズ』の元になった本家ミュージカル版の主役をブロードウェイで演じ、一躍時の人となったアーティストだ。そんな彼が一瞬でもこんなチープな役で出演していることに本国では話題になった。ちなみに、彼本人は、ギリシャ系アメリカ人の代表として、数々のギリシャ関係の賞を受賞しており、このシーンで、ギリシャ神話のオイディプスを演じているというのも、たまたまかもしれないが粋なはからいだ。

シーズン1の第4話で、ロドリゴがモーツァルトと空想で話をする(というより、怒られる)シーンがある。この白髪のモーツァルトを演じているのは、これまたブロードウェイでは大人気の俳優&歌手であるサンティノ・フォンタナだ。こんなちょい役! というような十数秒間の出番だが、彼は、2013年版ブロードウェイ『シンデレラ』のオリジナル王子役をはじめ主役級を多数、また、『アナと雪の女王』のハンス王子の声優としても有名だ。

そして、同じくロドリゴが空想で話すベートーベン役には、『SMASH』、『グッド・ワイフ』やミュージカル『ネクスト・トウ・ノーマル』、『ハミルトン』などヒット作に出演している舞台のベテラン、ブライアン・ダーシー・ジェームズが。

ブロードウェイファンから見たら、「え! こんなちょい役で!?」と驚く大物ばかりが実は出演している。

元々、ニューヨークを舞台としたドラマには、その立地条件上、ブロードウェイの俳優が数多く出るものだが、特にこの作品は、ブロードウェイを支えるオーケストラ団員も数多く実在するので、ブロードウェイとは切っても切り離せない。

クラッシック界の大物の登場も見逃せず、例えばシーズン2では、ロドリゴのモデルと言われている実在の天才指揮者、グスターボ・ドゥダメルがカメオ出演。ロドリゴの初期のくるくるヘアーや経歴も、グスターボ本人を真似ているのだ。

また、他にも多彩な音楽家が作品を盛り上げているのにも注目して欲しい。例えば、ピアニスト野崎洋子の夫で自身もピアニストのエマニュエル・アックス。ゲームセンターのシーンで、ダンスダンスレボリューションに没頭している演技? をしている。

また、北京オリンピックの開会式の演奏や、『のだめカンタービレ』の上野樹里のピアノ演奏シーンを実際に弾いている中国出身のピアニスト、ラン・ランも出演。ノーベル賞授賞式コンサートで、小澤征爾とコラボもした彼は、同作でフランツ・リストの『ハンガリアン狂詩曲第2番』を披露している。

そしてグラミー賞受賞のイケメンヴァイオリニスト、ジョシュア・ベル。14歳でフィラデルフィア管弦楽団と共演し、17歳でカーネギーホールデビューを果たしたという経歴のベルは、シーズン3でも重要な役どころで再度出演している、

演奏だけではなく、普通に演技をしているクラッシック界の大物たちの新たな一面が見られるのもまた新鮮に感じるだろう。そして驚くことに、全員演技が自然体でうまい!

■マニアなポイント3:ロケ地の魅力

ブロードウェイのきらびやかなネオンから、ヘイリーの住むバイト生活の若者が住む薄暗い通りのアパートなど、色々なニューヨークを見られるのもこの作品の見所でもある。(12月にアメリカで配信されたシーズン3は、ニューヨークだけでなく、イタリアのヴェニスも舞台となっている)

シーズン3のニューヨークロケ地でイチオシしたいのは、ライカーズ・アイランド。観光客もローカルの人も行くことはまずないここは、いわゆる刑務所施設の島だ。ここの庭でのエピソードには何かを考えさせられるかもしれない。実際に、服役中の人に聞いてもらっているとのことで、撮影に参加したある人は、「クラッシックなんて人生で初めて聞いた。興味なかったが、体はここにあるのに、魂がどこかに飛んで行ってしまうような素晴らしい経験だった」と語ったらしい。

その他にも、ブロードウェイと158丁目のワシントンハイツで、ロドリゴがバンジョーの演奏に聴きいるシーンが。ロドリゴがニューヨークシンフォニーのファンドレイザーを抜け出していくヒッピー音楽の集まりは、イーストビレッジの、アベニューBとCの間にあるラ・プラザ・カルチュアルだ。

シーズン2の最終話で、ニューヨークシンフォニーが、屋外コンサートをやったのは、ワシントン・スクエア公園。ここは、ヘイリーが一人でオーボエを吹くシーンでも使われている。

また、ニューヨークシンフォニーの練習、演奏劇場となっているシアターは、ラファイエット通りのパブリックシアターだ。

そして、ヘイリーのアパートは、ロングアイランドシティにある。ヴァーノンブルバードと44番通りのこの建物を見たら、階段に座ってみたくなるかも。ニューヨーク旅行の際には、ぜひロケ地もチェックしてもらいたい。

では、最後に日本での配信が待ちきれないシーズン3の簡単なストーリーと見どころをご紹介していこう。

シーズン3はイタリアのヴェニスから始まる。ロドリゴとヘイリーは偶然同じこのヴェニスの地におり、ロドリゴは、イタリアオペラの元歌姫アレサンドラを再び表舞台に戻す役目を担うことに。ヘイリーは、ありえない大失敗をしてしまい、所属していたオーケストラを首になったところ、ロドリゴとアレサンドラに助けてもらう。一方、ニューヨークシンフォニーはストライキに入ったまま交渉が決裂しており、シンシアや団員たちは、日々の生活でいっぱいいっぱいになっていく。グロリアは、まずはロドリゴをニューヨークに連れて帰ろうと、ペンブリッジと共にヴェニスまで来るが...。

今までのシーズンと同様に、ゲストが豪華極まりないのだ! まずは、50歳でボンドガールになった『イタリアの宝石』こと、モニカ・ベルッチが、歌をやめてしまったオペラの歌姫役で出演。また、ダーモット・マローニー(『スティーブ・ジョブズ』『フレンズ』)が癖のあるチェロ奏者としても出演。ロドリゴとの軽快な口喧嘩シーンはコミカルで必見だ。さらに! なんと、世界3大テノール歌手の一人、プラシド・ドミンゴが本人役で出演し歌を披露している!

また、シーズン3は、初回から「ありえない!」と言いたくなるくらいの面白い行動に出るキャラたちとストーリー展開に、一気に引き込まれる。美しい地中海と赤茶色の屋根のヴェニスを背景にしたアレサンドラのオペラ歌唱シーンや、ロドリゴの熱い指揮シーン、そして今回は、ライブハウスでのバンド演奏やEDMのクラブのシーンもあり、(意外な人物達がそこに関わっている!)クラッシック以外の音楽も更に堪能できる。

30分10話で1シーズンの構成なので、あっと言う間に見終わってしまい、次のシーズンまでまた1年待たないといけないのが難点ではあるこのシリーズ。だが、それだけテンポよく、のめり込めると言うことだ。ちょっと意地悪そうなキャラがいても、見ていて全く不快な気分にならないのもポイント。むしろ"オーケストラ団員でも天才指揮者でも、皆、同じ人間なんだな、日々大変なんだ、そして音楽ってやっぱりいいものだな"と前向きにさせてくれる本作。クラッシック音楽という世界共通語を舞台に、健康的な笑いを気軽にもたらしてくれる同作は、各国の視聴者から愛され3年目を迎えているようだ。シーズン4がすでに待ち遠しい...。

Photo:『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』(C)Capital Pictures/amanaimages 「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル〜セックス、ドラッグ、クラッシック〜」株式会社ヤマハミュージックメディア 『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』シーズン1(C)Everett Collection/amanaimages コンスタンティン・マルーリス(C)Akira Shimada / www.HollywoodNewsWire.net モニカ・ベルッチ(C)Kaori Suzuki / www.HollywoodNewsWire.net