第74回ゴールデン・グローブ賞:テレビ部門主要カテゴリーはこれがくる!

ロサンゼルス現地時間の新年8日(日)にド〜ンと開催されるゴールデン・グローブ賞(以下GG賞)。映画とテレビの両部門で賞が発表されるのが大きな特徴だが、海外ドラマNAVIではテレビ部門で受賞しそうな作品と俳優にスポットをあて「受賞して欲しい作品・俳優」、「受賞するだろう作品・俳優」をハリウッドから現地目線で選んでみた。

TVドラマ部門 作品賞
《受賞して欲しい作品》『ザ・クラウン』
《受賞するだろう作品》『ザ・クラウン』

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今も健在の英国で最長王歴を誇るエリザベス2世の若かりし日を描いた波乱万丈の王室ドラマ。実は筆者的には、スピルバーグ世代だったら好きにならずにはいられない『ストレンジャー・シングス 未知の世界』に受賞して欲しいのだが、『ザ・クラウン』とダイレクトに比べて見るとまるで学生フィルムのように見えてしまうのがキツイ。『ザ・クラウン』は、Netflix史上最高の製作費をかけたと言われるだけあって、出演陣の充実度、豪華絢爛のプロダクション・デザインと映画並みのスケールで贅沢に楽しませてくれる。やはり見た目が華やかの方で重厚なストーリーの方に票が動くのではと予想。 

TVドラマ部門 男優賞
《受賞して欲しい男優》ラミ・マレック(『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』)
《受賞するだろう男優》ラミ・マレック(『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』)

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孤高の天才ハッカーと巨大利権悪徳企業の闘いを描く本作で、2016年度エミー賞主演男優賞を見事手中にしているラミは、『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』でのハイテンション演技もさながら、とにかく他人への配慮を忘れない好青年度が、この筆者をはじめ業界内で大いに気に入られている。ラミの演技力はもちろんだが、所詮人間の好き嫌いが大いに反映される賞レース。礼儀正しい人が大好きな外国人映画記者たちが投票するゴールデングローブではラミの受賞率がアップと予想。

ドラマ部門 女優賞
《受賞して欲しい女優》エヴァン・レイチェル・ウッド(『ウエストワールド』)
《受賞するだろう女優》クレア・フォイ(『ザ・クラウン』)

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J.J.エイブラムス製作総指揮で大ヒットとなったHBOドラマ『ウエストワールド』で主人公のドロレスを演じるエヴァン・レイチェル・ウッド。そのパフォーマンスは無機質感を醸し出しつつも育まれていく人間の感情を有するアンドロイドにピッタリの演技で不気味さと美しさが共存している。相対して若かりし日のエリザベス2世という実在の人物を演じているクレアの演技も静かに燃え盛る彼女のうちの炎というものを見事に映し出していて視聴者を大いに引きずり込んでくれる。GG賞がアメリカ人関係者の投票で決まる賞であれば『ウエストワールド』受賞に賭けるところだが、NetflixがPRにも多額の予算を割いて後押ししている『ザ・クラウン』のクレアが一歩リードしている感がある。

リミテッドシリーズ/TVムービー部門 作品賞
《受賞して欲しい作品》『アメリカン・クライム・ストーリー/O・J・シンプソン事件』 
《受賞するだろう作品》『アメリカン・クライム・ストーリー/O・J・シンプソン事件』 

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プロのアメフトで名声を得て俳優としても大活躍していたO・J・シンプソンの元妻惨殺事件が無罪判決に至るまでをドラマ化して大評判となった話題作。ゴールデングローブ賞を選ぶ外国人記者たちは当然のことながらアメリカに精通している人たちだ。ということはO・J・シンプソン事件にも明るいはずで、このドラマを見たときにその描写がどれほど上手くなおかつ別の角度から事件を見せてくれているかに脱帽したはずである。とくにただのモノマネではない俳優陣の実在人物へのなりきり度が芸術。 

リミテッドシリーズ/TVムービー部門 男優賞
《受賞して欲しい男優》コートニー・B・ヴァンス (『アメリカン・クライム・ストーリー/O.J.シンプソン事件』)
《受賞するだろう男優》コートニー・B・ヴァンス (『アメリカン・クライム・ストーリー/O.J.シンプソン事件』)

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今回のGG賞TV部門は『O・J・シンプソン事件』が席巻すると読んでいる。例えば男優賞のラインナップだが、錚々たる男優たちが顔を並べているとはいえ、同作で被告弁護団の弁護士ジョニー・コックランを演じたコートニー・B・ヴァンスの右に出るものははっきり言って見当たらない。もしコックラン弁護士が今も健在だったら、コートニーのあまりの酷似さに腰を抜かしているだろう。だがルックスだけならいくらでもメークでごまかせる。コートニーの凄さは、そのそっくりな容姿にコックランの魂を吹き込んだことだ。彼がGG賞に値する所以はそこにある。

リミテッドシリーズ/TVムービー部門 女優賞
《受賞して欲しい女優》サラ・ポールソン(『アメリカン・クライム・ストーリー/O・J・シンプソン事件』)
《受賞するだろう女優》サラ・ポールソン(『アメリカン・クライム・ストーリー/O・J・シンプソン事件』)

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TV部門の受賞予想をみると「受賞して欲しい」と「実際にするだろう」の項目が一緒の結果であるものが多い。ある意味これらの作品・俳優が受賞するであろう理由といのは、客観的でも主観的でも同じということである。サラ・ポールソンにおいてもそうだが、『O・J・シンプソン事件』で彼女の演じた地方検事マーシャ・クラークは、サラのキャリア最高の演技といっても過言ではない。

TVコメディ/ミュージカル部門 作品賞
《受賞して欲しい作品》 『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』
《受賞するだろう作品》 『Black-ish(原題)』

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『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』は去年も受賞を逃しているので、まず無理だろうと思いつつも、個人的にガエルに惚れているのでネジ込ませていただいた。これまで受賞常連組の『トランスペアレント』と『Veep/ヴィープ』は、もういい加減トロフィーが溢れているだろうということで、今年は新たに『Black-ish(原題)』が受賞するのではと読んでいる。黒人ファミリーを中心にしたこのシットコムは、下馬評でも受賞率が高い。

TVコメディ/ミュージカル部門 男優賞
《受賞して欲しい男優》 ガエル・ガルシア・ベルナル(『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』)
《受賞するだろう男優》ドナルド・グローヴァー(『Atlanta(原題)』)

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個人的にはガエルに受賞してもらって、報道陣ルームの記者会見の場でぜひ生見させて頂きたいところだが、客観的に見て彼の受賞の可能性は低め。今年は、すでに評論家協会賞ならびにAFI賞を受賞している新コメディ番組「Atlanta(原題)」のクリエイターで主演も兼ねるドナルド・グローヴァーが本命。

TVコメディ/ミュージカル部門 女優賞
《受賞して欲しい女優》 特になし
《受賞するだろう女優》 トレイシー・エリス・ロス(『Black-ish(原題)』)

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受賞してほしい女優は、残念ながら個人的に特にいないのが実情。あえて言えば『Divorce/ディボース』のサラ・ジェシカ・パーカーかなぁ、という感じだがさほど熱が入っていないので、この項目はパス。巷で今年は『Black-ish(原題)』の年になるのではと囁かれており、業界内では女優賞でも同作品のトレイシー・エリス・ロスが本命視されているのが実情。

以上だが、みなさんの予想と比べていかがだっただろうか?

さて、余談だが旧年は愛するタレントたちの訃報が続いた。とくに『スター・ウォーズ』オタクの筆者にはキャリー・フィッシャーの急逝、そしてキャリーの母親で大女優だったデビー・レイノルズが娘のあとを追うように倒れ帰らぬ人となってしまったニュースはいまだにショックが抜けていない。2017年は本当にもっと明るい年になることを願うばかりで、みなさんの新年も健康で幸せな新年となるようお祈りしている。

(取材・文: 明美・トスト / Akemi Tosto)

Photo:『ザ・クラウン』© Netflix. All Rights Reserved.
ラミ・マレック ©Izumi Hasegawa / HollywoodNewsWire.net
エヴァン・レイチェル・ウッド ©Megumi Torii / www.HollywoodNewsWire.net
クレア・フォイ ©James Gillham / Netflix.
『アメリカン・クライム・ストーリー/O・J・シンプソン事件』©2016 Fox and its related entities. All rights reserved.
コートニー・B・ヴァンス ©Kazuki Hirata / HollywoodNewsWire.net
サラ・ポールソン ©Izumi Hasegawa/www.HollywoodNewsWire.net
『Black-ish』©EverettCollection/amanaimages
ドナルド・グローヴァー©Tom Gianakopoulos/www.HollywoodNewsWire.net
トレイシー・エリス・ロス ©Kazuki Hirata / HollywoodNewsWire.net