『SHERLOCK』との共通点って?『ドクター・ストレンジ』ベネディクト・カンバーバッチ直撃インタビュー

ベネディクト・カンバーバッチがマーベルの新ヒーローを演じる『ドクター・ストレンジ』。スーパーパワーを生まれ持ったわけでなく鍛錬で身に付けた魔術を操る異色のヒーローがマーベル・シネマティック・ユニバースを文字通り新たな次元へと導く...。そんな話題作で主演を務めたベネディクトを直撃! 『SHERLOCK/シャーロック』との共通点も含めて語ってもらった。

――マーベル・シネマティック・ユニバースの世界へ初めて足を踏み入れた気分は? 『SHERLOCK/シャーロック』の共演者であるマーティン・フリーマンが一足先に『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』でマーベルデビューを果たしていますが、オファーを受けるにあたって彼へ相談したりはしたのですか?

いいや、自分一人で決めたよ。あるジャーナリストに「ドクター・ストレンジ役にぴったり」と言われたのが最初なんだ。その後、プロデューサーのケヴィン・ファイギと監督のスコット・デリクソンから話があって、マーベル・シネマティック・ユニバースが次のステップへ進むにあたってこの作品は非常に重要だと教わった。そして監督のビジョンを聞き、脚本を読んで、キャラクターそのものにも惹かれたんだ。こういうアクション大作に出ることも自分にとって大きな転機になると思った。

――ドクター・ストレンジという役名に合わせて、ご自身のストレンジ(変わった)点を教えてください。

そうだな...他の人間になりきるという俳優の仕事自体が変わっていると思うよ。それから、僕の場合は名前、そして顔もすごく変わってるよね。あとは、自分の変なところというのは自身では分からなかったりするから、周りの人に聞いてもらった方がいいかもしれない。

 

――ドクター・ストレンジは大きな転機を迎えたことで人間として大きく成長するキャラクターですが、ご自身にそういう経験は?

これまで40年間生きてきていろんな経験をしてきたけど、人生が変わった嬉しいことの一つは夫になったことだね。そしてショッキングな体験としては、カージャックがある(注:2005年のTVシリーズ『新世界 〜航海の果てに〜』撮影中、ロケ地の南アフリカで共演者とともにカージャックに遭遇)。これはかなり前の話だけど、九死に一生を得たおかげで人生のありがたみを感じられるようになった。そういう意味では大きく成長できるきっかけとなった出来事だね。あとは、子どもの頃に経験した交通事故も挙げられるかな。雨の日に母親が運転する車に乗っていたら、車がスピンして電柱に思いっきり激突してしまったんだけど、幸いにもみんな軽傷で済んだ。子どもの頃だからあまりよくは憶えていないけど、僕はその点でもラッキーだったと思う。こうして生きていて仕事ができるというのはすごく恵まれているよ。誰でも生きていれば良いにつけ悪いにつけいろんな経験を重ねていくものだけど、ドクター・ストレンジの場合は交通事故により外科医としての人生を奪われるというかなりドラマチックな変化を経験する。それを機に彼はより良い人間になっていくわけで、そこまで劇的な経験は僕自身はしていないけど、あのシーンは素晴らしい描かれ方をしていると思うよ。あと、運転中に携帯電話を触ってはいけないという教訓にもなったと思う(笑)

 

――ドクター・ストレンジは当初、才能があるけれども高慢という人物で、あなたが演じる『SHERLOCK/シャーロック』のキャラクターを彷彿とさせます。もしかしたらうんざりする質問かもしれませんが、彼ら二人の共通点をどのように分析されていますか?

非常に傲慢で天才肌で、周りの人をボロクソに扱うということで、ドクター・ストレンジとシャーロックの共通点は多いと思う。そして二人ともエゴの固まりだ。違うのは、ドクター・ストレンジは名声を求めていることだね。あと、彼は孤立した生活を送っているけれど、世間にマッチしていないわけではない。非常に物質主義的な男で普通に暮らしている。シャーロックも孤立しているのは同じだけど彼の場合は社会性に欠けるから、二人は違ったタイプのキャラクターだと考えているよ。
僕がこういう質問を嫌がる理由は、役者として、似たような役ばかり演じていると思われたくないからなんだ。僕なりに演技の幅があって、これまでいろんな役をこなしてきたと自分では思っているし、みんなにもそう思ってほしいからね。ドクター・ストレンジもシャーロックも傲慢で欠点があると思われがちだけど、どちらも前提として誰よりも秀でた才能があり、それはキャラクターとして非常に魅力的だ。だから僕もそういう人を演じたいと思うし、ドクター・ストレンジにしろシャーロックにしろ文化的に非常にアイコンとなる存在を演じるのは役者の醍醐味なので、演じることができて光栄だね。

――本編が終わった後のポスト・クレジットでドクター・ストレンジがアベンジャーズの一人と話すところはファンにはたまらない場面ですが、あなた自身がお好きなアベンジャーズのキャラクターは?

その時共演したキャラクターの名前を挙げるべきなのかもしれないけど、アベンジャーズのメンバーはそれぞれがすごく個性的で、違う魅力があるので全員好きだね。別にお金をもらってお世辞を言っているわけじゃなくて、演じる俳優も本当に素晴らしいし、キャラクターも一人ひとりが際立っていて、そんな彼らが一堂に会するというのがアベンジャーズの魅力だと思う。僕自身も俳優として常に新鮮な刺激を求めているので、これからアベンジャーズにドクター・ストレンジとして参加することになって、自分と似た、あるいは全然違うキャラクターと絡んだら一体どうなるのかなんて想像しながら今からワクワクしてるんだ。

 

――ドクター・ストレンジは音楽が好きですが、あなたがお好きな曲は?

『めぐりあう時間たち』のサウンドトラックに入っている"I"m Going to Make a Cake"だね。フィリップ・グラスが作ったすごく美しい曲なんだ。それ以外では、ドレイク、レディオヘッド、エルボーとかの曲をよく聴いてる。みんなもそうだと思うけど、僕はラジオが好きでしょっちゅうBBCラジオを聴いているんだ。音楽は演じる上で大きな助けになる。インスピレーションをくれるし、集中力を高めるのにも役に立つ。音楽を聴きながら瞑想していると役に入り込みやすくなるしね。音楽だけじゃなく、パフォーマンス・アートや詩、絵画、彫刻といったインスピレーションの源となるものは積極的に取り入れるようにしているよ。

 

――マーベルのヒーローになったことについて、俳優の道を歩み始めたばかりの自分に会えたら何と言ってあげたいですか?

僕はキャリアプランを考えながらやってきたわけじゃない。俳優として活動し始めた最初の半年間は仕事がなくて苦労したけど、好きなことをやってお金がもらえるってだけですごく嬉しかった。そして時が経って世界中で愛されている人気シリーズ作品で主役を張る、しかもヒーローを演じるなんて思ってもみなかったから本当に幸運だよ。いつもチャンスを逃さないように心がけている。あの時の役がこの仕事につながるといったことは、前もって分かるわけじゃないから、あまり考えすぎずに目の前にあるチャンスをとにかくモノにしていきたいんだ。ただ、自分が駆け出しの頃はマーベル・シネマティック・ユニバース自体が存在していなくて、マーベルの映画が作られているというだけで当時の自分はビックリするだろうから、その映画で自分が主役を務めるなんてあり得ないと言っていたと思うよ。

『ドクター・ストレンジ』は1月27日(金)より全国ロードショー。

Photo:『ドクター・ストレンジ』
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