先日全米と同時期に日本でも放映がスタートした 『レギオン』。大ヒット映画『X-MEN』シリーズのスピンオフでTVシリーズではめったにお目にかかれない強烈な映像と編集テクニックで視聴者の脳みそにたたみ掛けるようなアクションドラマで、評論家たちの間ではもちろん、全米のお茶の間でも話題になっています。
クリエイターのノア・ホーリーは人気TVシリーズ『FARGO/ファーゴ』のクリエイターで、日本でも人気の犯罪ドラマ『BONES ボーンズ -骨は語る-』の初期3シーズンの製作・脚本を担当したベテラン。『レギオン』では、まだ自分のパワーを理解できず制御することのできない青年デヴィッドの心理状態を大胆な視覚・聴覚効果で描き出しており、見ているこちらまでお茶の間に居ながらにしてマインド・トリップしてしまいそう。筆者もこれまでに随分いろいろなTVドラマに出会いましたが、見ていて頭の中がスクランブル・エッグにされた気分になったのは初めて!
『レギオン』で、主演デヴィッド・ハラー(=レギオン)を演じるのは『ダウントン・アビー』で、気位の高いメアリーのハートを溶かした青年弁護士マシューを演じたイケメン英国俳優ダン・スティーヴンス。これだけで既に見る価値あり!(^з^)-☆
ダン演じる、"レギオン"ことデヴィッドは、幼い頃から頭の中の声や幻覚に苛まれ、統合失調症だと診断され希望のない日々を生きてきた青年です。ある日、自殺未遂で収容された精神病院で出会った人物がきっかけで、病気だと思っていた症状が実はミュータントのみが持つ特殊なパワーであることに気づき始め、自分のような仲間たちと出会い、ミュータントが持つ様々な特殊パワーを悪用しようと企む魔の集団たちとの戦いに挑んでいく、という役どころです。私たちの知っていた『ダウントン・アビー』のダンからすると180度の方向転換ですよね。勇気あるわぁ。
『レギオン』のクリエイターであるホーリーは、主人公デヴィッドというキャラクターについて「非常に複雑な役だったので、適任の役者が見つかるかどうか心配だった」と語り、「でもダンの起用が決まって胸をなでおろした」と、この複雑なキャラクターに体当たりでぶつかるダンの演技力に感服しているようです。
アメリカ人である主人公を演じるにあたり、ダンのイギリス訛りは完璧に矯正され鳴りを潜め、アメリカ青年に成り切っているばかりか、ヤバい程に神経質で鬼気迫ったそのパフォーマンスにはこちらまで頭を冒されそうなほどです! テレキネシス、テレパシーそしてテレポートというパワフルなスーパーパワーを所持していながら、それを精神疾患と信じて生きてきた、主人公の壊れそうな心理を痛いほどに表現するのにもダンは見事に大成功しています。デヴィッドを演じるにあたり精神病について深く理解するために、さまざまな資料を熟読し実際に病気を患う人たちと話す機会も設けたそう。キャラクターに対する思い入れと、実際に病を患う人たちへの配慮も忘れず役に取り組んだダンのパフォーマンスは、早々にしてエミー賞ノミネーションを感じさせる出来です。
実はこのデヴィッドいうキャラクターは、映画『X-MEN』シリーズでパトリック・スチュアート演じるプロフェッサーXことエグゼビアの息子である、という裏があるのです。X-MENたちが安心して暮らし学べる環境を提供し、ミュータントたちが育ての親とも敬うプロフェッサーX。相手の心をコントロールできる力を持ち、世界中に散らばる同胞のミュータントたちを探知できるスーパーパワーを持っていたプロフェッサーXの息子とあらば、デヴィッドの持つパワーの凄さが理解できるというもの。デヴィッドがやがて授かる「レギオン」という名前の由来は、聖書の中で無数の悪魔に取り憑かれた男がキリストに名前を聞かれた時に名乗った名前から来ているということで、デヴィッドの持つ様々な強大で破壊的なパワーを示唆していると思われます。
イベント的要素を持った『レギオン』の放映開始を記念して、全米の主要都市で「レギオン」をテーマにしたアート展や体験アート(Blipparというアプリを通して『レギオン』のビルボードを見るとスマホ上で映像が展開し始める たりする)が行われるなどかなりの盛り上がりようを見せました。
強調しておきたい『レギオン』の魅力は、『X-MEN』シリーズを知らなくても十分に楽しめるということ。今春いちばんの話題作と言われる『レギオン』、ぜひキャッチしてみてくださいね。
(文・取材: 明美・トスト / Akemi Tosto)
Photo:『レギオン』 ©2016, FX Networks. All rights reserved.
ダン・スティーヴンス ©Izumi Hasegawa / HollywoodNewsWire.co
『X-MEN:ファイナル ディシジョン』プロフェッサーX(パトリック・スチュアート) ©ZUMA Press/amanaimages