歴史学者のルーシー、軍人のワイアット、タイムマシンに精通するルーファスという3人組が、タイムマシンを悪用して歴史上重要な出来事を変えようと企む謎の男フリンを追う姿を描いた、歴史体感サスペンス『タイムレス』が、海外ドラマ専門チャンネルAXNにて4月2日(日)よりスタートとなる。その放送に先駆けて、同作のエンディングテーマ「Let it shine」を手掛けたゴスペラーズを直撃! ドラマチックな作品にピッタリな曲は運命づけられたものだったのかと思わせるようなエピソード、メンバーができることなら変えたい過去など、賑やかな内容のインタビューになりました。
――楽曲タイアップが決まった時の率直なご感想を教えていただけますか?
安岡 優(以下、安岡):この『タイムレス』はタイムマシンがテーマになっている作品ですが、僕らが作った曲がまさに、恋愛においてですけど、もしあの時自分が別の行動をしていたら僕ら二人の未来はどうなっていただろうという、そういうラブソングを作っていたので、ピッタリだなと思いました。このドラマを見させていただいた後であらためて曲を聴いた時、歌の情景がより広がっていく感じがしましたね。
――この曲「Let it shine」は安岡さんが作詩を担当されたそうですが、今のお話によると、このドラマのために曲を書いたわけではなく、すでに書かれていた曲なんですね? 歌詩の中に「あの日あの時、世界は形を変えたよ」「どの間違い、もう戻れない」といったドラマの内容を思わせるフレーズがありますが、そういった部分は本編の内容を受けて多少手を加えられたのでしょうか?
安岡:いいえ、もとのままなんです。まるであのドラマを観てから書いたかのようになっているんですけど、それは本当に偶然で。
北山陽一(以下、北山):怖いんです、ちょっと(笑)
安岡:まるで僕がタイムマシンに乗って先にこのドラマを観ていたかのように、作品にドンピシャでハマるフレーズになっていて怖い感じです。ビックリしました。
北山:僕らの歌とドラマの映像を合わせた特別版プロモーション映像を観させてもらった時、知っている曲なのに違う曲になったような感じがして、鳥肌が立つ思いでしたね。
村上てつや(以下、村上):スケール感がね。
安岡:もともとはラブソングとして書いたんですけどね。
村上:あの映像に重ねて観ると。
酒井雄二(以下、酒井):歌詩にある「炎」が、ヒンデンブルク号爆発事故の炎にしか思えなかったりね。
村上:ものすごいスケールに感じて、なかなかない経験で嬉しかったですね。
北山:僕と君の二人だけの話だったはずなのに、時空を超えて本当にタイムレスになっているっていう。
安岡:僕らにとっても、この歌を作っていた「過去」と、このドラマと出会う「未来」が思わぬ形でつながるような出会いでした。
――曲についてはご自身の実体験が強かったりするんですか?
安岡:すべてが実体験というわけではないのですが、いつも心掛けているのは、そういうシチュエーションの中で僕ならどう行動したいと思うだろう、ということです。そこはブレないように作品作りをしようと思っていますね。季節や思い出、未来などいろんなものに関する曲を書いてきたんですけど、その歌のシチュエーションの中で、実際にできるかではなく、どういう人間でありたいかというところを大事にしています。
――ドラマをご覧になった感想は?
村上:この作品には、間違いとか悲劇はどうしても起きるもので、今あるものを守ろうというしっかりとした価値観がありますよね。その上でちゃんとエンターテイメントになっている。あと、観ていると知識がすごく増えそうです。
安岡:特に自分の国の歴史じゃなくて、アメリカの歴史だからね。
村上:そうそう。事件のおおまかな部分は知っていても、関係者がその時どう動こうとしていたのか、みたいな詳細までは知らないので、毎回追っかけていくと自分もちょっと深くなれそうな予感がする作品です。
黒沢 薫(以下、黒沢):タイムパラドックスもので、第一話の最後でいきなり未来が変わるのは驚きでしたね。あと、映画の『ファイナル・デスティネーション』的な、変えようとしても変わらないものもある、ってところもちゃんと提示されていて、多少の誤差はあっても、死ぬべき人は死ぬという世界感の中でもがく人たちを描いているのが面白かったです。あと、公のことを気にする人と、すごく個人的なことを気にする人の両方がいると、ドラマってすごくスイングしていきますよね。「なんでこいつを任命した!? 危ないよ」っていうようなメンバーもいるんですけど、ストーリーが進むごとに和解して仲間になっていくので、そこもすごくいいなと思います。
安岡:いわゆるタイムマシンものって、H・G・ウェルズの時代からいろいろあるじゃないですか。だから、僕らも観ながら過去作の知識を生かして、この事態はこうやって解決したらいいんだよ、と思ったりするんですけど、このドラマではここにしかないルールがどんどん足されていくので、これまでのタイムマシンものを超えていくような展開にワクワクドキドキしております。本当に、続きが観たくてしょうがないですね。
酒井:僕が一番素晴らしいと思ったのは、チームに歴史家がいることですね。なぜ彼女が選ばれたのかというと、できるだけ歴史に影響がないように、目立たないように動ける、触らないようにするためにはその時どうなるはずだったかを知る人がいた方がいい、という。タイムマシンものでは、どこにでもいるような人物を送り込むことが多いんですが、そういう人だと全くの役立たずか、未来に大きな変更が起きてしまうと思うんで。そういう点がこの作品はすごく緻密にやってある感じがして好きです。
北山:僕は『SUPERNATURAL/スーパーナチュラル』のファンなんですが、あの主人公たちみたいに、本作の3人も毎回コスプレするのがいいですよね。設定上、いろんな時代の衣装を見ることができる。彼らが名乗る職業もその場によって変わっていくので、観ていて楽しいです。最初からいろんな謎がたたみかけてくるスピード感もいいなと思いました。個人的に一番好きだったのは、ルーシーの妹の写真ですね。タイムパラドックスの外にあるものがそのままの状態で戻ってくる設定ってあまり目にしたことがなかったのですごく惹きつけられました。歴史が好きな人、SFが好きな人のどちらも楽しめる作品で、もちろん人間ドラマも色濃いですし。一体どうなるんだろう、といろんなものが刺さっている状態なので、早く続きが観たいです。
――ちなみにタイムマシンがあったとして、できれば変えたい歴史はありますか?
安岡:ライブでの失敗かな(笑)。マイクとか、必要な小道具とかを持たずにステージ出ちゃったことがあるから、それは直せるものなら直したいですね。
黒沢:でも、あれ盛り上がったからさ(笑)
村上:お客さんにとってはそれほど大したことじゃないかもしれないけど、自分たちとしてやりたくないミスってあるじゃないですか。僕も他のアーティストがステージで突然歌を忘れて困っているところなんかを見ると、見ている側としてはあるあるだし、むしろそういう姿を見られて良かったと思ったりするんだけど、やってしまった本人としてはその時のことを思い出すたびにもう...。
北山:地獄だよね。
安岡:口の中が酸っぱくなるよね。見てるだけで。
安岡:僕にとって一番恥ずかしかったのは、チャックを閉めずにステージに出ちゃったことです。20年以上もやっていると、全員、何かしらやったことがありますね。
村上:まあ、そのぐらいです(笑) あの選択は間違いではなかったと思うから、今我々はここにいるわけで。
――ゴスペラーズとしての活動以外でなら?
村上:例えばですけど、高校でサッカー部だったんですけど、大学でも続けてたらどうなったかな、とは思いますね。自分のレベルは別として。高校の時にJリーグが始まるって話は耳にしてたんですけど、実際に始まったのは大学に入った後だったので。
安岡:俺が高卒Jリーガーの世代だよね。
村上:すごくスポーツに興味があったから、続けていれば、別に選手以外でも道はあるわけじゃないですか。そういう意味で、もし体育会系でやっていたらどうなったかなと思ったりはしますね。高校の先生が早稲田のサッカー部のキャプテンだったこともあって、「せっかく早稲田入ったんだから、後輩のためにも、レギュラーになれなくてもいいからサッカー続けてくれ」って言われたんだけど、「気持ちはわかるけど、俺の人生なんですみません」って(笑)
黒沢:危ないところでした。リーダーがサッカー続けてたら、僕らこのエンディングテーマ歌ってないところでしたよ。
安岡:僕は子どもの頃から引っ越しが多かったんですけど、もし引っ越しせずに生まれた福岡でそのまま育っていたらどうなったのかな、と。少なくとも歌手にはなっていなかったかなと。これまでの引っ越しのうち一つでも欠けていれば今とは違う人生になっていたのかな。
村上:博多にいたらもっと酒飲みになってたね。
安岡:多分音楽性が違って、ロックいってたね。
北山:僕は昔ピアノを習っていて、すごくいい先生に巡り合ってこのまま真面目にやろうかなと思っていた時、彼女が悪い男に騙されて駆け落ちしたんですよ(笑) それで意気消沈してピアノを止めちゃったんですけど、当時の自分のところへ行って、「くじけるな。先生は他にもいるし、お前はピアノを続けられるはずだ」って言ってやりたいですね。先生のお父さんの顔が忘れられないもんね。「こんにちは」って訪ねていったら、お父さんが出てきて「もういないよ」って。ピアノを続けていれば、もう少しゴスペラーズで楽できてたかもしれない。
酒井:そのシーン撮りたいですね(笑)
――例えば今回とは逆に、ドラマに合わせて曲を作ることになったとしたら、こういうものがやりたいということはありますか?
黒沢:アクションなんかはやっていいかもしれないですね。我々にはアップテンポの曲もあるんですけど、世間的には思ったほど認知されていないので。
安岡:僕らは刑事・探偵ものの世代なので、あの頃のカッコイイ曲とかは憧れます。
村上:ハードボイルドというのは、僕らの対外的なイメージとしてないだろうからね。
安岡:そう、でも実はそういう曲もあったりするから。
北山:せっかくストーリーの持つ力を借りて別の世界へ行けるのなら、僕らの持ってるイメージじゃないところへ行って、みんなが驚くようなことをしてみたいというのはあります。
酒井:音の衣装を着るのがゴスペラーズのやり方なので、『タイムレス』的にもいいですよね。
北山:音のコスプレですね。
酒井:俺は和ものがやりたいです。時代はいつでもいいんですけど。伝統芸能にハモリはないので、そこに斬り込んでいくと面白いと思うんです。
――もう少し「Let it shine」についてお聞きしたいんですが、この曲を初めてお聞きになった時のご感想は?
安岡:これまで何度かお世話になっている堀向(彦輝)くんが作ってくれた曲なんですけど、いろんなフレーズをいろんな口で歌い継ぐ曲ですね。歌い甲斐のある曲です。前の人の歌声を聴いて自分の歌い方の世界を作っていくので、レコーディング当日はメンバーがどういう風に歌うのかを聴いた上で自分のやり方を決めましたね。
村上:曲がもともと持っている戦慄感、冷えた情熱みたいな、内に秘めた感じがカッコ良さなので、それを壊さないようにしようと思いました。デモテープの時の歌詩は英語だったので、よりクールさが保たれていた気がします。日本語にしていく時にその質感を失わないようにしようと。だから、『タイムレス』の緊迫感の連続、抗う力みたいな映像と重ねた時、最初に聴いた時のイメージとすごく合ったと思います。スタジオでは、緊張感を持ちながら切なさをちゃんと吐き出すことを意識しながら歌っていました。
北山:堀向くんが歌っていたデモテープがメチャクチャカッコ良かったんですよ。「もう彼がそのまま歌えばいいじゃん」って思っちゃうくらい(笑) それをゴスペラーズ色に染めていくのはワクワクするチャレンジでしたね。楽しかったです。
――レコーディングは一人ずつ行うんですか?
北山:基本一人ずつです。だからといって別に、「俺は歌ったぞ。お前、ちゃんと歌えんのか」って周りにプレッシャーかけたりはしないですけど、実際ブースに入って前の人の歌を聴いて「あ、なるほど。こんだけ歌えてるなら俺はどうやって入ろうかな」みたいな形でのプレッシャーは常にお互い感じています。
酒井:リレーでバトンパスする時の緊張感ですよね。
黒沢:そこで微調整するのが仕事みたいなところもあるので。
北山:必ずしも受け取りやすい球ばかり放っていればいいというわけではないので、たまに楽曲の性質上、前の人が剛速球を投げなきゃいけない時もあるじゃないですか。「これ、どうやって受ければいいのかな」っていう。
安岡:これ、僕らの中でも特にチェンジが多い、バトンパスが多い曲だからね。
北山:もちろん、バトンが渡ることで、一人で歌うよりもドラマチックにしやすいといった、やりやすさもあるんですけどね。
村上:でもカラオケだと本当に難しいよね。メロディがすごく難しいし。
北山:あとカラオケでは、デュエットならスペード、クローバーとかで担当パートを区別してるけど、5人もいると記号が足りないもんね。誰かがジョーカーになんないと(笑)
酒井:お前らの曲、また歌いにくいんだよって、地元の同級生とかに言われるっていう。
村上:今は一ページずつ歌い継いだりするんでしょ。
安岡:少なくとも二人でなら行けるよね。
酒井:でもこうボーカルが入り乱れるのが、一人で最初から最後まで歌う歌とは違う良さであり、このドラマに合う楽曲ということなんだと思うんですよ。
安岡:この曲も歌う人が変わる時にシーンが変わるからね。今の自分の話だったり、思い出に浸っている時間だったり、違う未来を想像している時間だったりと。リードボーカルが変わるたびに歌詩の持つ背景が変わっていくところを楽しんでもらえれば、まさにこのドラマの世界観と重なると思います。
――最後に、『タイムレス』を楽しみにしている方たちへのメッセージをお願いします。
村上:最初も言いましたけど、知らなかった知識も手に入るだろうし、自分だったらどうしようかと考えることで自分のことも知ることができる作品だと思います。
黒沢:ドラマを観た後で実際の歴史を調べる楽しさもあると思います。例えば、僕はリンカーン大統領暗殺の時に、あと3人暗殺される計画があったことを知らなかったので、慌てて調べました。実はラブストーリーの要素もしっかりあるので、その点も楽しめると思います。
安岡:本編を観ている一時間だけを楽しむだけでなく、次の放送までの一週間、謎や今後の展開について思いを巡らせられるのも魅力ですね。そういう考えるモードに入るための手助けを、この「Let it shine」ができればと思います。
酒井:えー、シーズン2コールはどちらへすれば...? こういう作品は脚本的に延長していくのが難しいと思うんですけど、綺麗にまとめてくれというのと、終わらないでくれという気持ちがどうしても出てきちゃいますね。皆さんにもぜひ、シーズン2へ一票入れていただきたいと思います。
北山:その辺はクリエイターがエリック・クリプキ(『SUPERNATURAL/スーパーナチュラル』)だから大丈夫だろうと、僕は思ってるんですけどね。彼は、ストーリーを進めながら、伏線を結構長いこと放置した末に、ちゃんとうまいところに着地させられる人なので。過去の作品でいろんな仕掛けや工夫をしてきたことが、この『タイムレス』では最初からものすごい勢いで投下されている気がします。設定とかがすごく良くできていて、ひょっとしたら数シーズンにわたる構想があった上で最初の数話分を書いたのかなってくらいに。
酒井:じゃあ大丈夫だ(笑)
北山:どうやってさらに新しい手で来てくれるのかな、っていうのが、海外ドラマを結構観ている身としては、すごく楽しみですね。
『タイムレス』は海外ドラマ専門チャンネルAXNにて、字幕版が4月2日(日)22:00より、ゴスペラーズのエンディングテーマ「Let it shine」が流れる二ヶ国語版は4月3日(月)23:00よりスタート。そのエンディングテーマが収録されたゴスペラーズのニューアルバム「Soul Renaissance」は好評リリース中。
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