ブラッド・ピットらが共感した、新しい戦争映画『ウォー・マシーン:戦争は話術だ!』デヴィッド・ミショッド監督直撃インタビュー

5月26日(金)よりNetflixで全世界同時オンラインストリーミングとなるNetflixオリジナル映画『ウォー・マシーン:戦争は話術だ!』。主演・プロデューサーを務めるブラッド・ピットが率いる製作会社Plan BがNetflixとタッグを組んだものとしては初となる映画だ。

実在のアメリカ陸軍将軍に密着したルポタージュを大胆に脚色し、戦争の裏側を描く新しいスタイルの戦争アクション・エンターテイメント映画である本作を作り上げた監督・脚本のデヴィッド・ミショッドを直撃! 本作に込めた思いや、出演者たち、オーストラリア人としてアメリカが舞台の作品を作ることなどについて語ってもらった。

――この作品を通して現代の戦争の裏側を知ることができますが、作品のクオリティーの高さから、どこまでが現実で、どこまでが創作か分かりませんでした。

今回の脚本を手掛けている初期の段階で、まずキャラクターたちの名前を変更しようと思ったんだ。その方が自分にとってクリエイティブな面で自由を得られるという考えがあったんでね。それに、主に物語として、ある特定の実際の出来事を描きたいというわけではないんだ。私としてはアメリカの戦争というものが機械化しているというか、その機能しているものが約16年もの間、同じことを反復しているような点があることから、その物語を伝えようと思ったんだよ。それで、ある一つの場面とか、その細かい状況ということではなく、よりもっと大きな形で大袈裟に、その不条理さを描きたかったんだ。実際にこの戦争というとても大きなマシーンの歯車に何かが詰まってしまい、動かなくなるところを伝えたかったんだよね。

――原作の役割はどこまでだったのでしょうか?

作品の内容として映画の中に出てくる出来事は、原作から抽出している。だけど、その出来事自体は、青写真的な形で自分のいわゆる架空の世界をもたらしているだけなんだ。だから、映画の中の物語と照らし合わせられるようなパラレルワールド状態の実際に起こった出来事ではあるんだけど、登場するキャラクターだったりは全て架空だよ。

――先程おっしゃっていた"アメリカが反復している"というのは、究極的には映画のラストシーンに表現されているんですね。

うん、その通りだよ(笑)

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――過去に監督された『アニマル・キングダム』や『奪還者』は、舞台があなたの母国オーストラリアでした。今回はアメリカを中心として、実話を元にした戦争ドラマですが、製作にあたって何か感じることはありましたか?

オーストラリアというのはとても恵まれた立場にあると思う。多くのオーストラリア人がアメリカに行って自分たちのストーリーを伝えることができているんだ。そういったことがなぜ可能になっているのかというと、背景に歴史や文化が共通するものがあるからだと思うんだよね。もともとヨーロッパの植民地であったところから、新しい民主主義国家として独立したということもあるし、お互いに英語を話すところからも通じやすいよね。それに、すべてのオーストラリアのフィルムメイカーにとっての夢は、アメリカで何か映画を撮ったり、何かアメリカの物語を作るということなんだよ。今のハリウッドの映画は昔とは違う形だったりするので、なかなか難しいということもあると思うけどね。私はオーストラリア出身のオーストラリア人で、アメリカの映画を見て育ったし、自分にとってとても印象的な力強い映画という体験を与えてくれたのもアメリカ映画だったからね。だから、ハリウッドというものへの憧れから、その一部に何らかの形で関わりたいという思いは昔からあったんだよ。

――Plan Bとの製作はいかがでしたか?

Plan Bという製作会社の素晴らしさは、本当に温かく外国からの人を受け入れて歓迎してくれることだね。その才能を歓迎してくれて、彼らが作りたい物語を伝えさせてくれるというところも、とても特別で珍しいと思うよ。

――本作のタイトルについて、作品終盤でブラッド・ピットが演じるグレン・マクマホン将軍だけでなく、アメリカという国家そのものが「ウォー・マシーン」であるというような表現が出てきますね。オーストラリア人であるあなたはこのタイトルにどのような思いを込めているのですか?

このタイトルはグレンのことと、いわゆる軍隊という制度や体制、そして軍隊を率いて永遠と戦争に携わっているアメリカという国家を指しているんだ。私の母国であるオーストラリアもそのマシーンの一部だし、オーストラリアはアメリカとずっと隣り合わせで第一次世界大戦以降もずっと行動を共にしている。だから、私自身はアメリカ人じゃなくても、アメリカの行動が、私や私の国が置かれる立場というものすべてに影響を与えているんだよね。

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――大きな展開の前後に何回か差し込まれるグレンの早朝のランニングシーンが印象的でしたが、このシーンにはどのような考えが込められているのでしょう?

走っているのが何を表現しているかというと、この人物の頑なさであったり、曲げられない態度、彼の規律や自制心というものなんだ。彼自身がとても大きな妄想というか、思い違いをしているんだけど、彼はこのマシーンの中にいて、それは絶対に成功すると頑なに信じているわけなんだよね。だけど、私のようにそのマシーンを外部から見ている人間からしてみれば、それは絶対に達成できないことだと分かっているんだ。でも、彼はその信念を維持するために、肉体的にも精神的にも非常に厳しい鍛錬を行っていて、このランニングはそういった固まった彼の姿勢を表現しているんだよ。

――あのグレンの個性的な走り方について、来日記者会見でも話がありましたね。

ブラッドに言わせると、監督のせいでああなったと責任のなすり付け合いになるんだけどね(笑) 私としては、私があれを作り上げたんだと言わせていただきたいね(笑) でも、私が実際に走る時は、あんな走り方はしないよ(笑)

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――プロデューサーでもあるブラッドをはじめ、アカデミー賞を受賞しているティルダ・スウィントン、ベン・キングズレーなど豪華出演陣とのお仕事はいかがでしたか?

私の仕事というのは9割がた、正しい人々を配役できればそこで終わってしまうんだ。そういったキャスティングができれば、あとは座って、彼らが演じるのを見て楽しむだけなんだよね。例えば、ティルダはとても重要な場面だけど、たった1シーンだけしか出演していない。だけど、彼女はとても早い段階でこの作品に参加してくれることを同意してくれて、積極的にやる気を見せてくれたんだ。ベン・キングズレーもそうなんだけど、登場するシーンは少なくても、とても意欲的にこの作品に関わってくれる役者の姿勢を見ると、私としても非常に嬉しい気持ちになるね。そういう風に役者から意欲や、やる気を感じられるのも、脚本に共感してくれたからだと思うんだ。その後、ある朝目を覚まして、本当に世界で最も素晴らしい役者たちと同じ時間を過ごせたんだなと振り返るんだよ。実際に、そういった素晴らしい面々が、私の描いたものに命を吹き込んでくれているんだ。

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軍事力だけでは解決できない現代の戦争の裏側を、ブラックユーモアたっぷりに、そして時にシリアスに描くNetflixオリジナル映画『ウォー・マシーン:戦争は話術だ!』は、5月26日(金)より全世界同時配信。