海外ドラマがもっと面白くなる第71回トニー賞授賞式の見所はここだ!あの俳優や『ラ・ラ・ランド』のペアまでノミネート!

アメリカの演劇、ミュージカル界で最も権威あるトニー賞。去年はラップミュージカルの『Hamilton』が11部門を独占したが、今年は魅力的なノミネート作品が多く、何が受賞するかわからない状態だ。更に作品のみならず、TVドラマや映画で活躍する俳優も数多くノミネートされており、ブロードウェイに興味がない方でも海外ドラマ・映画好きなら絶対に必見!

今年の授賞式は、6月12日(月)午前8時よりWOWOWで生中継される。それではそんな今年のトニー賞の見所をご紹介しよう。

◼ 司会はアンダーウッド大統領!? ケヴィン・スペイシー、初のトニー賞ホストに!

トニー賞司会者

トニー賞では、ホストがダンスや歌を披露することが必須。アカデミー賞やエミー賞ホストと大きく異なるのがこの点だ。歌、踊り、演技のプロ中のプロと目の肥えた観客を前に、司会を務めることとなったケヴィン・スペイシーは、実は1991年にブロードウェイ劇『ロスト・イン・ヨーカーズ』でトニー賞を受賞している。数々の名作映画や、Netflixオリジナルドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』でアンダーウッド大統領を好演するなど、映像のイメージも強い彼だが、高校時代にミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』でトラップ大佐を演じており、ニューヨークの名門ジュリアード音楽院に進学(のちに中退)というトニー賞ホストにふさわしい経歴を持っている。還暦間近のケヴィンが、長時間生放送の授賞式で、トークだけでなく、どのような歌声や踊りを披露してくれるのか見ものだ。

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◼ 『ラ・ラ・ランド』クリエイター旋風再び起こるか?全く異なる種類のミュージカル作品賞部門は大激戦!

ミュージカル作品賞にノミネートされているのは、『カム・フロム・アウェイ』『ディア・エヴァン・ハンセン』『恋はデジャ・ヴ』『ナターシャ、ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』(以下『ナターシャ』)の4作品だ。

『カム・フロム・アウェイ』は、アメリカ9.11同時多発テロで、アメリカに着陸できずにいた多くの旅客機が、カナダの小さな町に緊急着陸。約7000人の世界中からの人々を、自分たちの家に宿泊させ、何日ももてなした町の人々と乗客のその後を描いた実話が元になっている。悲劇の中で、国籍も人種も超えた他人同士の繋がりを描いた今作は、こんな時代だからこそ大きな反響を巻き起こしている。

『ディア・エヴァン・ハンセン』は、友人コナーの自殺がきっかけで一躍有名人になってしまう、孤独だった17歳の少年エヴァンを描いた作品。映画『ラ・ラ・ランド』のペア作詞者、ベンジ・パセックとジャスティン・ポールが楽曲を担当しており、二人は同作のオリジナル楽曲賞でもノミネートされている。『ラ・ラ・ランド』の勢いに乗ってトニー賞受賞となるか、注目していきたい。

恋はデジャブ看板2

『恋はデジャ・ヴ』は、ビル・マーレイ(『ロスト・イン・トランスレーション』『ゴーストバスターズ』)主演映画『恋はデジャ・ヴ』のミュージカル版。大ヒット映画のミュージカル版を成功させることは難しいと言われるが、ブロードウェイの前に、ロンドンでトライアウト上演された本作は大好評。イギリス版トニー賞であるオリビエ賞ミュージカル作品賞と主演男優賞(アンディ・カール)の2つを受賞しており、作品の出来はすでにお墨付きだ。

最後の『ナターシャ』は、ロシアの小説家トルストイの『戦争と平和』を原作とし、大幅にアレンジを加えたモダン・ポップ・ミュージカル。今年最多数のトニー賞12部門にノミネートされており、本作がブロードウェイデビューとなるジョシュ・グローバン(『アリー・myラブ』)が、アコーディオンを演奏しながら美声を響かせ踊り演じる。また客席をステージに大改造したユニークな演出で、キャストのパフォーマンスが本当に目の前で繰り広げられることが話題だ。このように、ミュージカル作品賞は4つとも全く異なるスタイルで、どれが受賞してもおかしくない。なおノミネート作品は必ず、授賞式で1曲はパフォーマンスされるので、それぞれどのような作品かを垣間見ることができる。

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◾️「あのドラマの人だ!」「この人もブロードウェイに?!」数多くのお馴染みの顔が続々出演。これからドラマで活躍しそうな俳優も先取りチェック!

TV・映画好きなら、「名前は覚えていないけど、知っている!」「あ、あのドラマに出ていた!」という俳優もたくさんノミネートされており、楽しめること間違いなしだ。

ほんの一部だけを紹介すると、ケイト・ブランシェット(『キャロル』『ホビット』)、メアリー=ルイーズ・パーカー(『Weeds 〜ママの秘密』『ザ・ホワイトハウス』)、コリー・ホーキンズ(『24:レガシー』『ウォーキング・デッド』)、ケヴィン・クライン(『美女と野獣』)、アンディ・カール(『LAW & ORDER : 性犯罪特捜班』)、シンシア・ニクソン(『SEX AND THE CITY』)、サリー・フィールド(『ブラザーズ&シスターズ』)、パティ・ルボーン(『ナイトメア』)、ローラ・リニー(『キャシーのbig C いま私にできること』)、デニス・アーント(『ザ・プラクティス/ボストン弁護士ファイル』)、クリス・クーパー(『11/23/63』)、アンドリュー・ラネルズ(『GIRLS/ガールズ』)らが、それぞれミュージカル部門、演劇部門でノミネートされている。

実はブロードウェイで有名になってからTV・映画業界へ進出する俳優は非常に多い。ここ数年だと、『シカゴ・メッド』コナー・ローズ医師役のコリン・ドネル、『SUPERGIRL/スーパーガール』ウィン・ショット役のジェレミー・ジョーダン、『ハウス・オブ・カード 野望の階段』ルーカス・グッドウィン役のセバスチャン・アーセラス、『殺人を無罪にする方法』オリバー・ハンプトン役のコンラッド・リカモラなど、全員ブロードウェイ・ミュージカル界ではその歌声とダンス、演技力で有名だった俳優たちだ。

ブロードウェイ写真

そこで、今回まだスクリーンではメジャーではないが、トニー賞にノミネートされている二人の若手俳優をピックアップしてみた。まず、今回『ナターシャ』でメインキャストの一人としてブロードウェイデビューし、いきなり助演男優賞にノミネートされているルーカス・スティール。ソフトな歌声が魅力の彼は、真っ青な瞳が印象的で、ドラマや映画でも人気を博しそうな風貌だ。

もう一人は、『ディア・エヴァン・ハンセン』で、メインキャストとしてブロードウェイデビューを飾り、助演男優賞にノミネートされている26歳のマイケル・ファイスト。モデルのような出で立ちで、自殺する繊細な少年コナーを見事に演じており、その演技力は要チェック。これからTVドラマや映画に多く登場するかもしれない俳優たちを、一足先に見つけられるのもトニー賞の楽しみ方の一つだ。

ショーレースもさることながら、ベテラン俳優にこれからの注目株、そしてクリエイターたちをじっくり知ることのできるトニー賞。そんな第71回トニー賞授賞式は、6月12日(月)朝8時よりWOWOWで生中継!字幕版は6月17日(土)夜7時より放送。ノミネートされているキャストの生のパフォーマンスも見られる年に一度の祭典を、どうぞお楽しみに!

Photo:ケヴィン・スペイシー
©Mayuka Ishikawa / HollywoodNewsWire.net