ホームズ&ワトソンにも負けない名コンビ!『エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY シーズン4』三木眞一郎&田中敦子インタビュー

シャーロック・ホームズと女性のジョーン・ワトソンが、現代のニューヨークを舞台に難事件に挑むという全米大ヒット中のスタイリッシュな痛快犯罪捜査ミステリー『エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY』。本国ではシーズン6の製作がすでに決定している本作から、シーズン4のDVDリリースに合わせて、ホームズの声を担当する三木眞一郎とワトソンの声を担当する田中敦子を直撃! シーズン4の見どころや、ホームズとワトソンの関係などを深く語ってもらった。

――シーズン4は、シーズン3のラストでホームズが起こしたオスカー(ホームズにドラッグを売っていた男)への暴力事件によって、NY市警の顧問をクビになってしまうという展開から始まりますね。

田中:これから24話まである間に、解雇されっぱなしだとストーリーが進んでいかないので、どうにかして顧問に復帰はするんだろうなとは思いつつ、心配になる展開でした。

三木:あーあ、と思いました(笑)。ホームズがそうなるに至るまでの葛藤がちゃんとあるので、単純な怒りに任せているわけではないんですよね。だから、そうさせるように仕向けたオスカーをひどい男とか思ってみたりしましたね。

――そのさなかに、とうとうシャーロックの父親モーランドが登場しますね。

三木:シーズン4は登場人物も増えましたし、前シーズンからの流れを一度リセットしたみたいな感じがありますね。だから、もしシーズン3までを知らなくても、ここから見られるかなという気はします。そこで興味を持ってもらえて、シーズン1から振り返って見てもらえると嬉しいですね。

田中:シーズン1やシーズン2の頃は、二人の関係性がまだ際立っていなくてだんだんと出来上がっていく感じでした。それに加えてシーズン3では、キティ(ホームズがロンドンから連れてきた弟子)が出てきたりとかして、それでこのシーズン4ではホームズのお父さんが登場するんですけど、とても濃いキャラでしたよね(笑)。モーランドがこのシーズンを構築していた"影の主役"のような感じがしました。モーランドを中心に、家族愛もそうですけど、親子の関係の難しさみたいなものをすごく感じましたね。モーランドとシャーロックという父親と息子、それからジョーンでは母親、それと継父との関係とか、血が繋がっていようがいまいが、親子って家族なのにこじれてしまうとこんなにも他人以上に根が深かったり、傷が深かったりしてしまうんだということがすごく色濃く描かれていたと思います。ただ単に謎解きだけではなく、そういう人間関係や家族の絆がテーマみたいな気がしていますね。

 

――特にシャーロックとモーランドの関係で、理解し合えるのかどうかがシーズン4の見どころでもありますね。

三木:そうですね。田中さんも言っていましたけど、探偵であるし、事件は解決していかなければいけないんですけど、そこに親子という人間関係が入ってくるんですよね。今までと同じオンエアの尺ではあるんですけど、密度はギュッと濃くなっています。それで事件を解決した上で、モーランドとシャーロックの見た目通りではない腹の探り合いみたいなこともどんどん展開していくんですよ。「え!? そうだったの?」「あれは本音じゃなくて、こっちが本音なんだ!?」みたいなね。ワトソンにもいろいろあったりして、事件を解決するだけでなく、二人の親子、家族というものがどういう風に展開していくのかというのも、ある意味で緊張感のあるスリリングな展開を見せている部分でもあります。

――モーランドの登場によって、ホームズとワトソンの関係性も変わっていきますね。

三木:ホームズに関して言うと、徐々にではあるんですけど、不器用なりに人を思いやるというか、いろいろなことに気が回るようになってきているんですよ。不器用ではあるけど、ワトソンを守りたいという部分もあるだろうしね。そこにお父さんが現れるんですけど、お父さんの存在は非常に厄介なんですよね。同じ舞台にいるようで、ちょっと違うところにいて、それすらもお父さんがいろいろと裏で手を回しているんじゃないかという疑いもあったり。収録中は先が分からないので、次の回の台本を見て裏切られた気持ちになったりしましたね(笑)

田中:モーランドの存在自体が、どういう力を持っている人なのか、悪人なのか、善人なのか、その存在そのものが脅威に感じるぐらいですよね。また、モーランドを演じるジョン・ノーブルさんがものすごく貫禄のある役者さんで、それを菅生(隆之)さんが吹き替えることで、いい意味でちょっと怖かったですね(笑)。存在自体が得体の知れない怖さというか、世界中を牛耳っているという計り知れない力みたいなものが常に怖いんですよね。でも、ジョーンはモーランドとシャーロックの親子関係をなんとか修復したいし、良い形に持っていきたいとどこかでは願っているんですよ。そのために翻弄されたりしますけど、彼女はどこまで行ってもシャーロックの保護者なんです。人の役に立ちたい、人を救いたいという気持ちが心の根底にあるので、ちょっとお姉さんのような、お母さんのような立ち位置でモーランドとシャーロックを見守っている感じですね。

三木:お父さんの存在が思っていた以上にすごかったよね。

田中:本当にそうですね。

三木:「うちの親父はあんたが思っている程度の存在じゃないんだ」みたいなことを以前ホームズが言っていたけど、俺が思っている以上のはるか上の存在だったからね(笑)。こんなに規模がデカいんだって、ビックリしました。最初の頃は、その言葉の中にすごく大きいものが隠れていると思っていなかったんですよ。当然、ホームズ自体も知らないんですけど、確信に近づいたら、世界に対してすごく影響力のある人で、「この人、本当に怖い」って思いました(笑)

田中:インターポールの捜査官が死んでいた件で、本当はモーランドが殺したのかもしれないとか、進んでいくに従って真相が分かっていくんですけど、もうどこまでも非情な手段を使っていろいろなことをやってしまいそうな怖さがありました。

三木:シャーロックとモーランドは同じ水では泳げないんじゃないかなという気はします。

 

――シーズン4のラストで、モーランドのある決意によって大きな展開が起きます。

三木:衝撃的な話ですよね。

田中:モリアーティがここにも絡んでくるのかと思いました。最終回に、池田昌子さんが声を担当されたハシェミという登場人物がモーランドにある話を持ちかけるんですよね。

三木:というか、モリアーティの件って片付いていなかったのかと(笑)

田中:モリアーティは獄中にいるはずなのに、いろいろな手を使って多くのことができちゃうんですよね。最終的にモーランドにまで影響力を及ぼすぐらいすごい人なんですよ。

三木:ものすごいスケールの話が展開しているよね。

田中:そうですね。私たちは身近にある市警の事件を解決しているんだけど、バックではものすごく世界規模的なことが起こっているんですよ。

――シーズン4では、そのスケール感がアップしているところも面白いですよね。

田中:それまでもキティが登場したり、ロンドンに舞台が移ったりしたエピソードはありましたけど、やっぱり"in NY"のお話なんですよね。だけど、シーズン4では一挙にワールドワイドなお話になりました。

三木:これまではわりと身近なところでのお話だったり、身近なエリアの中で、人間関係などを描いてきたんですよね。それがシーズン4になって、そこが薄まるどころかより濃くなった上に、作品自体のスケールも広がっているんですよ。よし、良いこと言った!(笑)

田中:(笑)

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――ホームズとワトソンを長く演じられてきましたが、あらためて二人の魅力とは何でしょうか?

田中:ワトソン役のルーシー・リューは、ブロンドではないしブルーの瞳でもないし、いわゆる日本人が思い描くアメリカ人とは違いますよね。東洋系だから、日本人に親しみやすい感じが受け入れられる魅力の一つですね。それとファッショナブルなところとか、お芝居の上手なところですかね。シーズン6の製作も決まって、この作品に彼女が女優人生の全てをかけているなと感じます。シーズン4では第22話でも監督をやっていたり、その上で女優として活躍したりという、熱意というかバイタリティーみたいなものが見え隠れしていて、ジョーンとオーバーラップするそんな点がジョーン・ワトソンの魅力に繋がっているかなと思います。

三木:ホームズの魅力といえば、存在自体が僕にとって魅力なんですよ。ただホームズ一人だと、どうしようもない人なので、やっぱりワトソンと二人でいる必要があるんですよね。欠落している者同士なので、本当によく二人は巡り会えたなと思います。巡り会ってから、ホームズは奔放なところは奔放なままに、ちょっとずつ成長しているんですよ。記憶力や洞察力といったものが桁外れなわけで、本当に生きていく上では苦労したんだろうなと俺らは思うかもしれないですけど、彼はそれに気づいていないと思うんですよね。ああいう風に生きていけたら良いなと思うんですけど、そんなに死体とか見たいわけじゃないしね(笑)。でも、どこから切っても魅力的な部分が見えてくる人物なので、すごく素敵だなと思います。

――ホームズとワトソンの関係性が相棒以上、恋人未満というところも、この作品の魅力ですね。シーズン4ではホームズの新恋人フィオナも登場しますが、吹き替える上で二人の関係性について気をつけていることは?

三木:家でリハーサルをして現場で合わせた時に、お互いの考えているものってそんなに差異があるように思えないんですよね。もともと英語で完成している作品に僕らが吹替版を作るので、そこら辺の関係というのはジョニー・リー・ミラーやルーシー・リューが素敵に見せてくれているので、僕らもそれにスッと乗っていけるんですよ。ただ、何かの拍子で役に入り過ぎちゃうと、「やり過ぎです」と演出家の方に言われますけどね。でも、収録時のテストで1回やっておくと楽なんですよ。「よし、1回スッキリした! 本番なら大丈夫。抑えられる」みたいなね(笑)。田中さん的にはどう?

田中:この作品で一番大変なのは三木眞一郎さんなので(笑)

三木:いやいや(笑)

田中:収録では、いかに三木さんの邪魔をしないか、そして投げてくれたセリフを拾って、自分が作ってきたものを乗っけていけるかという作業をいつもしています。それで引き出されるものも多いですね。彼のセリフを聞いた上でセリフを言うと、自分が作ってきた以上のものが出てきて自分でもビックリする時があります。だけど、関係性は相棒以上、恋人未満という感じなので、どちらかに恋人ができたりすると嫉妬したりはするんだけど、お互いにそうなんですよね。恋人がそれぞれにできるたびに、ちょっとジェラシーみたいなのをお互いに感じているんですよ。でも、そこから踏み出さない関係性がすごく微妙なんですよね。そういう感じが吹替版でも伝わるといいですね。

三木:本当にそう思いますね。

田中:微妙なラインだけど、ベタベタし過ぎず、踏み込み過ぎず、でも嫉妬はするみたいなね。そういうところが吹替版で出せたらいいなと思います。

 

――シーズン4のあるエピソードで、ジョーンとベルの関係をホームズが誤解しますが、その時のホームズとジョーンのやり取りは吹替版で見ていてもそのニュアンスが伝わってきました。

田中:「そこ心配する!?」って、私もホームズにツッコミましたけどね(笑)

三木:日本のドラマでは考えにくいんだろうけど、この人たちの関係は面白いよね。この作品はスタイリッシュでありつつ、そういった登場人物たちの心の距離感というものを、ものすごく細かく描いているんですよ。

田中:そう"距離感"だよね。良いこと言った!

三木:よし、今日2度目だ(笑)

田中:グレッグソンやベルとか市警の人たちともちょうど良い距離感だから、市警の顧問という立ち位置でこんなにも長くやっていられるんですね。

三木:そうだよね。最初の頃はベルのことをなんとも思っていなかったよね。グレッグソンは血がつながっていないけど、わりと父親的なポジションで僕らを見ていてくれるんですよね。スタジオで吹替版を作っている役者たちも、そういうポジションでいるような気がするので、あんまり無理することなくマイクの前に立っていられるんじゃないかな。

 

――お二人にとってこの作品やこの現場はどういった存在でしょう?

田中:私たちが日常的に抱えている作品の中で、群を抜いて大変な作品ではあることは間違いないですね。各シーズンが24話ありますし、シーズン6の本国での製作が決まったということで、あと2年先も決まっているわけですよね。そういう中で、グレッグソンの声を吹き替えている堀内(賢雄)さんやみんなで、「また始まったね」という話はします。私だけかもしれないですが、長いセリフを言わなきゃいけないとか、ジョーンは医者なので医学用語が出てきたりとか、そういうのって日常会話とは違う壁があるんですよね。ホームズにしても台本の中でずっとしゃべり続けなきゃいけなくて、どこで息継ぎをすればいいんだろう、みたいなことがあるんです。そういう物理的なことからして、いっぱいセリフを言っていくうちに、傷みたいなものを負ったりするんですよ。だけど、すごく良い座組でそれを支えてくれるので、24話分、"満身創痍"な感じで終わっても、心地良いんですよね。痛手を負ってもう1回やり直しというのを繰り返しながら、こうやって完成していくわけなんですよ(笑)。それを支えてもらえる温かい現場ですね。

三木:劇団とかじゃないですけど、本当に良い座組だと思います。擦り傷を作ってもいいから、みんなで手をつないでゴールできればいいんじゃないかなとすごく思うしね。やっぱり吹替版というのは日本語の音声ガイドを作っているわけではなく、日本人が見て楽しめるというものなので、そこは追求していかなきゃいけないと思っています。たぶん現場もそう思ってくれていると思うので、そういった意味でも『エレメンタリー』の吹替版はただの商品ではなくて、作品として日本人の皆さんに楽しんで頂けると思います。この作品はめちゃめちゃハードルは高いですよ。シリーズが始まると半年ぐらい俺は挙動不審になるので(笑)。でも、役が決まった時は嬉しかったんです。

田中:大変かもしれないけど頑張ろうねって言ってましたね(笑)

三木:そうだよね(笑)。その場でディレクターから、この二人でいくことに決まりましたと言われてね。こういう話もできるし、僕は本当に田中敦子さんがお相手で良かったなと思っています。

田中:私も三木眞一郎さんで良かったです。

三木:これは冗談抜きで、ちょっとでも違和感があるような人だと、こんな風にはできないと思うんですよ。たぶん、毎週の収録の時間が苦痛になっていくと思う。

田中:この作品は大変なんですが、みんなで頑張っていこうという気持ちになれます。

三木:本当に大変な作品で、できない自分に対してのストレスは溜まるけど、でも現場に対するストレスはないですね。

田中:そうですね。それは全くないです。

三木:それは本当に素晴らしいことなんです。それで、僕とかの嬉しさがそこで終わるんじゃなくて、見てくださった人に喜んで頂けるまでが仕事なんですよ。だから、シーズン4を見てくださった方の心を少しでも動かすことができたとしたらそれが一番嬉しいですね。

 

■『エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY シーズン4』商品情報
DVD-BOX PART1(9,300円+税)&DVD-BOX PART2(9,300円+税)好評発売中
DVD Vol.1~12 好評レンタル中
発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

Photo:
三木眞一郎、田中敦子
『エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY シーズン4』
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