これだけ人にリアリティがあるのは感動!『THIS IS US 36歳、これから』高橋一生インタビュー

人生の岐路に立つ36歳の等身大の男女を描いた、切なく心温まるヒューマンドラマ『THIS IS US 36歳、これから』が、10月1日(日)よりNHK総合にて日本初放送される。それに先駆け、主要登場人物の一人であるコメディドラマの人気俳優ケヴィンの吹き替えを担当した高橋一生を直撃。海外ドラマの吹き替えは初挑戦だという彼に、俳優ならではの視点から見た本作の見どころや、役の魅力などを語ってもらった。

――海外ドラマをよくご覧になるそうですが、お好きな作品はありますか?

『ウォーキング・デッド』です。ゾンビをテーマにして人の醜さや孤独を描いているところが好きです。人間ドラマに持っていける熱意に、すごいなと純粋に思います。

――吹き替えでご覧になるのですか?

僕、吹き替え好きなんです。けれどいざ自分がやるとなると、"どうなっていくんだろう"と思いました。もちろん声をあてている時は迷いなくやっているんですけれど、自分の中で想像していたものと、実際にブースに行って声を入れていくのとでは全然違って...。ほかの方々はすごくスムーズに声をあてていくんです。
自分の中に違和感を覚えているっていうことは、合致していなかったんでしょう、色々なものが。けれど1週間おいて次の収録に行ったら、そこからだんだん腑に落ちるスピードが速くなっていきました。回数を重ねていくうちに、これは大丈夫だろう、スムーズに行っただろうと実感できていたと思います。

 

――本作を初めてご覧になった時の印象は?

こういう繊細なドラマは、日本人が得意としていたものだったんじゃないかと思いました。まるで、小津安二郎監督の映画を見ているような感覚。しかも、それらをネガティブなものとして組み立てていない。家族や、恋人や、兄妹など、テーマとしては出尽くしたものかもしれないけれど、あえてそれを"どストレート"にやるアメリカの制作陣の熱意に、感銘を受けました。
それに、アメリカの方がこれを支持したことがとても素敵だと思います。このハートフルなものが支持されるって、この人たちやっぱり、人のことを愛したい、愛されたいって思っているんだと感じました。

――ケヴィンの魅力について教えてください。

彼は人間らしい、ブレる男なんです。それが滑稽に映る時もあり、不器用ながらも誠実さを感じる時もあり...。子供っぽいと言ってしまったらそれまでですが、彼なりに自分の心に正直に生きていて、大人って本来はこうあるべきじゃないかと思わせてくれる説得力があります。素敵な人間だと思いながら演じています。

 

――今回の吹き替えは、高橋さんの地声よりやや高いように感じたのですが、何か理由があるのですか?

(ケヴィン役の)ジャスティン・ハートリーさんの声が意外と高めなので、普段より声を高くしています。お芝居をやる時にも声の質を変えるのですが、声のみになるとそれが突出するみたいで。気付いていただけて良かったです。

――ジャスティンの演技を観て感じたことなどはありましたか?

英語と日本語のブレスの違いは勉強になりました。向こうの俳優さんってしっかり発声されているんだ、というのが分かるんです。呼吸がお芝居の上ですごく大事だと、改めて思い直しました。台詞よりも大事なものだと思っているので、向こうの方たちのやり方で勉強できて良かったと思いました。

――高橋さんといえばその声も人気ですが、ご自身の声についてどう考えていらっしゃいますか?

役によって使い分けているので、自分の声に対して執着がなくて。なので、この声が武器とは思わないようにしています。役に説得力を持たせるための声を常に意識しているので。自分の声がケヴィンの声として定着すれば嬉しいです。

――収録現場での印象的なエピソードはありますか?

(スタジオ内では)演出の方の指示を聞くためのイヤホンと受信機を身につけるんですけれど、ある方は、ポケットに入れなくてもいいように、それ専用の小さいポーチみたいなものを持っていらっしゃったんです。それが、とてもおしゃれに見えて...。次やらせていただくことがあれば僕も作りたいと思いました(笑)

――サブタイトルにも含まれている「36歳」という年齢について、高橋さんも現在36歳ということで何か感じる部分はありましたか?

僕、35歳で死ぬと思っていたんです、漠然と(笑)。なので、"意外と生きてるな"って、ちょっと不思議な感覚です。最近挑戦させていただけることの幅が広がり、役の密度も上がってきていると実感するので、お芝居してきて良かったと感じる毎日です。

――このドラマをご覧になる方に、どのような体験をしてほしいですか?

文化の違い、社会背景の違い、色々な人を受け入れてきたアメリカの背景など、様々なことが感じられる作品だと思っています。命の炎が瞬く瞬間を見ることができたりするんです。ある作られた画角の中で、これだけ人がリアリティを持って生きてられるっていうのが、お芝居を仕事にしている人間からすると、とても感動するんです。
そして、"今出てくる?"とか"ケヴィンってそうだったの?"って思うようなキャラクターがたくさん出てくるんです。そうやってどんどん登場人物が増えていって、人と人との繫がりとは一体何か、という部分に迫っていくんです。それは、血の繋がりとかそういうものではなくて、魂の繫がりなんです。人間の深い愛って言っちゃうとすごくシンプルなんですけれど、その深い繋がりが、見る人の琴線に触れると思うんです。
あとは、吹き替えによって近さを感じてもらいつつ、人間ってやっぱりアメリカでも日本でも一緒なんだ、と思ってもらえると思います。登場人物の誰か一人には感情移入できるので、彼らの一員になった気分で観ていただけると嬉しいです。

『THIS IS US 36歳、これから』は、NHK総合にて10月1日(日)23:00より放送スタート。

Photo:
高橋一生
『THIS IS US 36歳、これから』
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衣裳:部坂尚吾(江東衣裳)
ヘアーメイク:田中真維(株式会社 マーヴィ)