Amazon Prime Video『ザ・テラー』"今年最も怖い"史実の遠征隊失踪を基にしたホラー

厳寒の北極海に派遣されたイギリス海軍は、背筋も凍る冒険の最中に何を目撃したのだろうか----? Amazon Prime Videoで配信中の『ザ・テラー』は、新航路発見という偉業達成を目指すも、極寒の海で命の危険にさらされる調査団をテーマにしたホラー作品だ。複数のメディアが「今年1番怖いドラマの一つ」「(現時点で)今年最も不気味なTVドラマ」などと絶賛している。

■厳しい海域で

本作では、エレボス号とテラー号の2隻の船が北極海に乗り出し、大西洋と太平洋を結ぶ新航路の開拓を試みる。しかし調査団は出発後まもなく凍てついた海に行く手を阻まれ、任務どころか自らの生命まで危ぶまれる事態に陥る。振り返ればエレボス(暗黒の神)とテラー(恐怖)という船名も不吉の予兆だったのかもしれない。

全てが凍てつく世界の中、船員らは限られた食料だけで事態を乗り切ろうと努力する。しかし、不安に拍車をかけるのは二人のキャプテン同士の衝突だ。エレボス号のキャプテンであるフランクリンは、上流階級のプライドがそうさせるのか、何のバックアップ・プランもないまま危険な冒険をひたすら突き進む。他方、テラー号で指揮を執るクロージャーは、用心深い性格であるものの、アルコール中毒という何とも頼りない一面を持ち合わせている。実はフランクリンが自身の姪とクロージャーの結婚を阻んだ過去があり、二人の関係性は冒険にさらなる緊張をもたらす。生存を賭けた自然との戦いに加え、チーム内のドラマも見ものだ。

なお、本作のプロデューサー陣には、『エイリアン』『ハンニバル』などでホラーにも定評のあるリドリー・スコットが名を連ねている。

■好調のファースト・シーズン 自然の猛威とリアルな冒険譚

『ザ・テラー』の第1話が米AMCにて3月下旬に放映された直後、辛口レビューサイトRotten Tomatoesでは観客による肯定的評価の割合が100パーセントを記録するなど、大変な評判を呼んでいる。

本作は、1845年に実際に同様の任務を帯びて全滅を喫したジョン・フランクリン隊をモデルにした、2007年のベストセラー小説を原作としている。史実を基にした作品というだけあり、ディテールの描写が恐怖感を一層あおる。乗組員らは吹雪や流氷に行く手を阻まれるだけではなく、缶詰を原因とした鉛中毒に侵されたり、徐々に食料が底をつき始め人肉を摂取し出すなど、現実に起きたエピソードがふんだんに盛り込まれている。第1話では船員が海に転落するが、ほぼ瞬時に凍りついてしまうという厳しい環境にも要注目だ。

メンバーを襲う危機の連続に、米Entertainment(3月26日)では「『ザ・テラー』はゾクゾクする演出のお祭り」だと評価している。

■フィクションが落とす不気味な影

史実に基づくサバイバル・ストーリーに終わることなく、本作はフィクションを加えることでさらに不気味な世界観を醸し出している。周囲の海域に潜むのは、ホッキョクグマを巨大で気味の悪い姿にしたようなどう猛なモンスターだ。血しぶき、ちぎれた手足、片脚だけで葬られる棺などが、吹雪の世界に迷い込んだ視聴者にさらなる寒気をもたらしてくれる。また、モンスターの秘密を知っていると思しきイヌイットの女性の存在も気にかかるところだ。本作では、人知を超えた底知れぬ不安さと、サバイバルの現実的な恐怖が、独特の恐怖感を織り成している。

実話ベースの作品に架空のモンスターを採用した点については、賛否が別れているようだ。ニューヨーク・タイムズ紙では、現実とフィクションを混合したことにより、リアリティーが失われてしまったと捉えている。歴史ドラマかホラーか、どっちつかずな面があるとの意見だ。

一方、ロサンゼルス・タイムズ紙のレビューでは、現実の探検団の行動が明らかになっていない期間があり、その空白を埋める上でモンスターの存在は重要だとしている。作品全体についても、北極海に沈んだ過去の探検団の記憶を現代に蘇らせるものだと高評価だ。他メディアでも絶賛の『ザ・テラー』はAmazon Prime Videoで独占配信中。(海外ドラマNAVI)

Photo:『ザ・テラー』