『Glee』好きにお薦め! 新ドラマ『Rise』、演劇部を舞台にした青春群像劇

米NBCが4月から放映開始した新ドラマ『Rise(原題)』は、自信に満ちた教師ルーが沈滞ムードの高校の演劇部をよみがえらせる青春ドラマだ。ディズニー映画『モアナと伝説の海』で「How Far I"ll Go」を歌い上げたアウリイ・クラヴァーリョをメインキャストの一人に迎えるなど、ミュージカルファンも納得の内容になっている。ただし主役の教師ルーがアクの強い性格であることから、特にシーズン前半は観ていてストレスを感じるかもしれない。

◆演劇未経験の教師がミュージカルに挑戦

いつも自信に満ちていて、周囲の反応を気にかけないルーが物語の主役だ。アメリカ東海岸のペンシルベニア州に位置する架空の街「スタントン」を舞台に、どこか沈鬱なムードの漂う高校の演劇部の顧問としてルーが着任したことから、ストーリーは動き出す。演劇に一切縁がなかった彼だが、やる気を失った生徒らの高校生活に夢と希望を取り戻すことを目指し、戯曲「春のめざめ」の上演を野望に掲げる。

ところが、この演目が中絶や少年同士のキスシーンを含んでいることから、昔ながらの価値観を持つスタントンのコミュニティに反対運動が巻き起こる。10話構成のこのドラマでは、ルーがミュージカルを通じて生徒たちを変化させ、大人との諍いや価値観の衝突を乗り越えた先にある成長を目指す。保守的で活気のない街にアートの風を吹かせることができるかも大きな焦点だ。

音楽をテーマにした青春ドラマというだけあり、歌とダンスで人気を博した『glee/グリー』とも比較されるなど、放送前から世間の関心が集まっている。

◆生徒が織りなす素晴らしい青春群像劇

『Rise』が最も輝きを放つのは、個性豊かなティーンエイジャーたちが画面に登場した瞬間だ。『モアナ』で主役の声優を務めたアウリィは、ウエイトレスで稼ぐシングルマザーの母親を助ける健気な少女としてスクリーンに花を添える。その歌声は必聴だ。放送を控えたアメリカ国内でも、ワシントン・ポスト紙が「生徒たちがその口を開いて歌う瞬間、このNBCドラマはたまらなく魅力的と言っていい」とのレビューを掲載するなど、ミュージカルファンは大いに期待していいだろう。

他にも、高校生にしてホームレスだった少年が照明技師として素晴らしい腕前を発揮したり、両親が離婚の危機にあり心を閉ざしていた少女が演技の情熱を持っていることが分かったりという具合に、生徒一人ひとりが輝きを取り戻していくストーリーが見ものだ。アートは生徒らの夢と希望を乗せた船であって欲しいと願うルーにより、高校の演劇部に少しずつ新しい風が吹き始める。

◆ルーの性格には賛否両論

熱意あふれるルーだが、実はその個性が災いし、事前に全話を視聴したレビュワーの中には受け入れられないという人もいるようだ。ニューヨーク・タイムズ紙では、ルー本人は善意に基づいて行動しているものの、同時にうぬぼれとも取れる態度が見え隠れすると指摘している。ドラマでは彼を英雄のように扱っており、その扱いが視聴者の心情と噛み合っていないのではとの見解だ。また、『春のめざめ』の上演に反対する敵対者らが一様に無教養に描かれており、「アーティスト v.s. 検閲側」という構図が成立していないと批判している。ただし、シーズン後半からはより面白みのある展開になるというから期待できよう。周囲を顧みないルーの行動は次第に立ち行かなくなるが、そのことに気づいた本人の行動が見ものだ。

ルーのキャラクター性についてはハリウッド・リポーター誌でも同様の感想を抱いたようだ。高校での傲慢な態度に加え、家庭でも妻子に注意を向けないなど、尊大な態度が目立つ。このことから特にシリーズ前半では、主役に好感が持てない時間が続いたと同誌は惜しんでいる。ただしドラマ全体としては目指すべきところにかなり近い仕上がりになっているとも評価している。『Glee』とも比較される本作、音楽好きならば観て損はないだろう。(海外ドラマNAVI)

Photo:『Rise』出演キャスト(向かって左からテッド・サザーランド、エイミー・フォーサイス、ロージー・ペレス、デイモン・J・ギレスピー)
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