【ネタばれ】恐怖の超常現象を再現ドラマで振り返る『True Horror』、第1話の評価こそが"true horror"?

(※本記事は、同シリーズのネタばれを含みますのでご注意ください)

家畜たちに不可解な行動が目立つようになり、アトリエの夫は奇妙な絵画の制作に打ち込み始める――。英Channel 4のミニドラマシリーズ『True Horror(原題)』は、超常現象を当事者たちへのインタビューと再現ドラマで振り返るドキュメンタリー形式のホラー番組だ。英国で4月19日に放送された第1話では、イギリス西部ののどかな田舎町に越してきた一組の男女が自らの恐怖体験を語った。

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◆得体の知れない怪奇現象が幸せな一家を蝕む
夫のビルと妻のリズが新天地に選んだのは、イギリスは南ウェールズのとある古い農場。ビルは絵の創作に打ち込むことができる離れの小屋を気に入っている。草原に囲まれた新居は、夫婦の子供たちにとって格好の遊び場でもある。

しかし、思い描いた暮らしとは裏腹に、奇怪な出来事が一家を次々と襲う。家畜のヤギやブタたちが次々とおかしな振る舞いを始め、そして死んでゆく。子供部屋の隅には、無言で佇む老婆の影。リズは、常に誰かに見られているという感覚から逃れられない。やがてビルは陰鬱なトーンと不気味なモチーフの絵を手掛けるようになり、あまつさえアトリエで自傷行為に走るようになる。精神が限界を迎えた夫妻はついに農場を手放し、最終的に結婚生活は終焉を迎えるのだった。

◆『True Horror』に名前負け
彼らの恐怖体験を振り返った第1話では数々の異常現象が紹介されたが、当事者が経験したであろう恐怖感が伝わり切らない残念な仕上がりとなった。番組は唐突にインタビューシーンから始まっているが、これは徐々に恐怖心を煽るホラーの基本に反していると英Telegraph紙は指摘する。

また、第1話では一家の電気料金が謎の高騰を見せる描写があるが、英Guardian紙ははその点が世俗的すぎて馬鹿馬鹿しいと断じる。恐怖に震えることができた視聴者はまだ良いが、そうでない者は時間を無駄にしたと怒りに震えることになる、と辛口の評価。同記事では、超常現象かどうかも疑わしいと見ている。ドラマは主にビルの視点で語られるため、全ては彼の見た幻影にすぎない可能性も捨て切れない。新居で収入を確保するプレッシャーに晒され、アートに専念できないストレスが蓄積していたところへ、高額な電気代の請求が止めを刺した、という仮説を記事では披露している。そうであれば、超常現象という前提が覆されることになる。ドラマ全般にも深みがなく、以降のエピソードで改善すべきで、「実際、そうでなければ何もかもが"true horror"になってしまうだろう」とシリーズを揶揄している。

さらに英Sunday Times紙は、怖くもなく真実味も感じられないため、"true"でも"horror"でもないと酷評している。タイトルに相応しい恐怖感をもたらしてくれない点は残念だ。

◆題材の良さを生かせていれば......
とはいえ、それなりに見応えのあるシーンは用意されている。追い詰められたビルがアトリエで自らの腕にナイフを突き刺すシーンには背筋が寒くなる。Telegraph紙はこのシーンに触れ、孤立して住む一家が恐怖を募らせたことは想像に難くない、と同情を寄せている。リズの表情からしても、この出来事が彼女のトラウマになったことは明らかだ。十分に恐怖を感じさせる題材だっただけに、インタビュー形式で情報を小出しにする手法が緊張感を台無しにしているなど、構成上の課題が惜しまれる。

ほかに救いと言えるのは、再現ドラマのパートで役者が良い仕事をしている点だ。ホラーの肝を理解した演者により、恐怖感が煽られるとSunday Times紙は評価している。ただし、番組全般としてはやや低予算の雰囲気を漂わせており、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』を思い出させるとも付け加えている。観た後でベッドに行くのもあまり怖くはなかった、とは同紙のコメントだ。(海外ドラマNAVI)

Photo:『True Horror』
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