(※本記事は、同シリーズのネタばれを含みますのでご注意ください)
米Amazonが生んだ人気の刑事ドラマ『BOSCH/ボッシュ』の最新シリーズが登場した。シーズン4となる今作では、弁護士殺人事件の捜査を命じられた主人公ハリー・ボッシュが、市民の反警察感情と闘いながら犯人の足跡を追う。オールドファッションながら安心して観られるドラマとして、シリーズの人気は衰えることを知らない。
◆ボッシュが挑む殺人事件の先に、警察組織の陰謀?
今シーズンの縦糸となるのは、高名な弁護士の殺害事件。ロス市警の腐敗と人権侵害を告発しようとしていた黒人のエライアス弁護士が何者かに殺される。捜査チームの指揮を執るよう命を受けたのは、ご存知ボッシュ刑事。無口で実直な彼はロサンゼルス市街を駆けずり回って証拠を集めるが、警察の不正を暴こうとしていた黒人弁護士の事件を白人警官が捜査する構図に、市民の不満は高まるばかり。加えて、事件がロス市警に対する訴訟前夜に起きていることから、警察内部に犯人が潜む可能性も浮上するなど、問題は複雑化の一途を辿る。
ボッシュには個人的な苦悩も募るばかり。シリーズのファンならご存知の通り、彼は母親を殺人事件で亡くしている。その真犯人が警察組織の上層部にいる疑念をぬぐい切れず、職場の人間関係も順風満帆とはいかない。家庭ではティーンエイジャーの娘とも不仲で、元妻との間にもわだかまりが残るなど、私生活にも思わず気を揉んでしまう。
◆ロサンゼルスへの愛情が溢れる
本シリーズにはロス市内の名所が次々に登場し、画面に活力とリアリティを与えている。ロス市警本部としてお馴染みのブラッドベリー・ビルや、映画『ラ・ラ・ランド』の撮影にも使われたケーブルカーのエンジェルズ・フライトなどが好例だ。米Indie Wireによると、プロデューサーとキャストはロケ地自体を一つのキャラクターだと捉えるほど重視しているとのこと。視聴の際は、寿司レストランのシュガーフィッシュや、西海岸に展開するイン・アンド・アウト・バーガーなど、ご当地メニューの店舗もぜひチェックを。
こうしたロケ地の持つ役割は、今シーズンではさらに大きくなった。プロデューサーは米Paley Mattersに対して「このシーズンでは、ロケ地が手掛かりになる」と述べている。オフィスの撮影に使われたブラッドベリー・ビルは制作中に一部が占有されていたことから、オフィスセットをゼロから作り上げるほどの力の入れようだったとのことだ。
◆正統派刑事ドラマ
シリーズは長年にわたりアマゾン・プライムで絶大な支持を得てきた。オールドファッションな刑事ドラマの正当な後継作品と言えるだろう。一方で現代ドラマの傾向も取り入れ、主人公のバックストーリーに厚みを持たせるなど、新旧のバランスは絶妙だ。米New York Times紙では、言葉少なだがその表情で雄弁に語るボッシュのキャラクター性も重要な要素だとしている。ホワイトボードを見つめる仕草など、わずかな動作に個性がにじみ出る。
Indie Wireも、作品のキャラクターの秀逸さを強調している。ビジネスライクな表情の裏に人知れず悲しい過去を隠したボッシュの美点は、時として無理をしながらも淡々と実直に仕事をこなす姿にある。彼以外にも、不仲の娘がお決まりの気難しいティーンエイジャーの型にはまっていない点が目新しい。自立した聡明な彼女は、想像を超えた新鮮な個性を見せてくれる。正統派のシナリオが予想外のキャラクター像と見事に同居している点は、本作の嬉しいサプライズだ。
なお、寡黙な主人公ボッシュを演じるタイタス・ウェリヴァーは、無類の動物好きとしての意外な一面を持つ。米Peopleによると、自宅では4頭の犬、4匹の猫、6頭の馬を飼っており、ほぼ全てが保護されたものとのこと。動物保護施設で暮らしているようなものだよ、とジョークを飛ばすほどだ。そんな彼の出演するAmazon Prime Original(アマゾン・プライム・オリジナル)『BOSCH/ボッシュ』シーズン1~4は、Amazonプライム・ビデオで配信中。(海外ドラマNAVI)
Photo:『BOSCH/ボッシュ』(C) Phil Stafford / Shutterstock.com