昨今、映画やドラマの世界に進出する小説家は多い。スティーヴン・キングは言わずもがなだが、ほかにもデニス・ルヘイン(「ミスティック・リバー」)、トム・ロブ・スミス(「チャイルド44」)などなど多くの作家が自作の映像化に限らず幅広く活動している。そこに新たに加わってきたのがハーラン・コーベン。エドガー賞(アメリカ探偵作家クラブにより選出される賞)をはじめ数々の賞に輝き、100ヵ国以上で作品が出版されるほどのベストセラー作家である彼は、映画化された『唇を閉ざせ』がセザール賞(フランスの映画賞)で4冠。さらには、ドラマシリーズの原案を書き下ろしてもいる。英国を舞台にした2本のミステリー、『ザ・ファイブ ―残されたDNA―』と『SAFE 埋もれた秘密』だ。
5月より日本でも配信されている『SAFE 埋もれた秘密』は、行方不明になった16歳の娘を捜す父親トムが主人公。『デクスター ~警察官は殺人鬼』で知られるマイケル・C・ホールが同役を演じている。塀で囲まれて安全なはずの"ゲーテッド・コミュニティ"で消えた娘を自ら捜すうち、彼は街に隠された秘密の数々に迫ることになる、というストーリーだ。人気ミステリー作家のコーベンだけあって、いくつもの謎や伏線が盛り込まれ、驚きのエンディングに至るまでイッキ見必至のストーリーに仕上がっている。『SHERLOCK/シャーロック』のアマンダ・アビントン、『華麗なるペテン師たち』のマーク・ウォーレン、『女王ヴィクトリア 愛に生きる』のナイジェル・リンゼイといった英国を中心とした共演者の演技も必見だ。
もう一本、6月6日(水)DVDリリースとなる『ザ・ファイブ ―残されたDNA―』も、ミステリーファンであっても展開を予測するのは難しいだろう。こちらもテーマは失踪で、20年前、森で遊んでいた5人の少年少女のうち、最も幼かった5歳のジェシーが消えたところから物語は始まる。残る4人のうち一人はジェシーの兄マークで、彼は弟を一人で帰らせたことから罪の意識を抱えていた。時は流れ、大人になったマークはある日、女性が殺された現場からジェシーのDNAが見つかったと知らされる。死んだと思われていたジェシーが生きているのか? 生きているとしたら彼は殺人犯なのか? 4人の幼馴染は再集結し、真相を突き止めようとするが...。
本作も書き下ろしのアイデアなのでコーベンの小説から手がかりを得ることはできない上、出演者であってもストーリー終盤の展開は収録直前まで知らされないほど、秘密が漏れないよう徹底した管理を行っていたという。その甲斐あって、彼らの演技は真実味にあふれており、そうしたリアルな反応と計算し尽くされた演出が観る者も驚かせることに成功している。伏線があまりにも巧妙なので、最後の展開を知ったら、思わず過去のエピソードを見返したくなってしまうはずだ。
【関連動画】『ザ・ファイブ ―残されたDNA―』予告編はこちら!
終盤に待ち受けるそのサプライズ以外にも、エピソードごとにマークの家族をめぐる真実や友人の嘘が明らかになっていくため、次の一話を見ずにはいられない作りとなっている。このように流れに一貫性がある理由は、10話全てで同じ監督(『GOTHAM/ゴッサム』のマーク・トンデライ)がメガホンを取っているからだろう。企画・製作総指揮を務めたコーベンが製作に積極的に関与したこともあり、10時間分の映画か一冊の長編小説のように濃厚なミステリーが生まれた。また、言葉や文化の壁を超えて愛されるコーベンの作品だけあって、家族を取り巻く普遍的な愛のストーリーとしても楽しむことができる。
『ダウントン・アビー』のトム・カレン、『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』のO・T・ファグベンル、『孤高の警部 ジョージ・ジェントリー』のリー・イングルビーといった実力派による競演も見ごたえたっぷりだ。本作の好評を受けて、すでに続編『The Four(原題)』の製作も発表されている。
ミステリーの本場、英国を舞台にした極上の謎解きにあなたも挑戦してみては?
■『ザ・ファイブ ―残されたDNA―』商品情報
<セル>
DVDボックス(10,000円+税)...6月6日(水)発売
<レンタル>
DVD Vol.1~5...6月6日(水)レンタル開始
発売元:松竹 販売元:松竹
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Photo:
『SAFE 埋もれた秘密』
©Ben Blackall 2017 / Netflix
『ザ・ファイブ ―残されたDNA―』
©The Five Series Limited 2015