英Skyと米Amazon共同制作による歴史ファンタジードラマ『Britannia(原題)』。イギリスでは第2の『ゲーム・オブ・スローンズ』と話題になり、今年1月から英Sky Atlanticで放送・オンデマンド配信されたこのドラマを今回はご紹介しよう。
Sunday night... what to do? How about catch up on #Britannia?
All episodes available on @skyatlantic & @NOWTV in UK and @amazon in US now! pic.twitter.com/W7dp5NejZr— Britannia TV Series (@Britannia_TV) 2018年2月11日
ブリタニアといえば、現在のイギリスがあるブリトン島を指す古い名称だが、本作は西暦43年のローマ帝国によるブリタニア侵攻を描いたものだ。ブリタニア侵攻は日本人にはあまりなじみがないかもしれないが、英国史の中では重要な出来事で、同国の小学校では歴史の授業で最初に教わるテーマだ。
まず、その歴史と背景を簡単に振り返ってみよう。古代ローマ帝国がブリトン島に初めてやってきたのは、紀元前55年と54年にガイウス・ユリウス・カエサルが2度の遠征を行った時。その後、ローマ帝国が本格的に島の征服に乗り出したのは紀元前43年。4代皇帝クラウディウスは、アウルス・プラウティウスを総督とするローマ軍をブリテン島に送りこみ、北部を除く島の大半を占領、ローマ帝国の属州ブリタニアが誕生した。当時、ブリテン島に住んでいたのはケルト系ブリトン人。ケルト人は部族国家を形成していたが、好戦的で体中にイレズミを入れ、戦車を使って激しい戦いを行う民族だったと伝えられている。
The Romans are here, America. Do you want to be civilised?! All eps of #Britannia available on @PrimeVideo today! pic.twitter.com/bG4NCXCcgk
— Britannia TV Series (@Britannia_TV) 2018年1月26日
では、話をドラマに戻そう。ドラマに登場するキャラクターは、大きく分けて、ローマ軍、ケルトの対立し合う部族カンティイとレグニ、そしてケルトの神事・占いを司る聖職者のドルイドの3つ。物語の焦点は、ブリタニアにやってきたローマ軍をケルト人たちがどのように迎えるのか?である。抗戦か、協定か、果たしてケルト人の運命はいかに?
2... pic.twitter.com/aOQ7EpfMtR
— Britannia TV Series (@Britannia_TV) 2018年1月16日
ローマ軍の総督、アウルス・プラウティウスに扮するのは、『ウォーキング・デッド』の総督役をはじめ、映画やTVで活躍するデヴィッド・モリッシー。ケルトの文化や習慣に戸惑いつつ、ローマ軍人としての誇りとプライドですべてをゴリ押ししようとするパワフルな総督を演じる。カンティイ王の娘ケラにケリー・ライリー(『犯罪捜査官アナ・トラヴィス』)。ローマ軍やドルイド僧とも対等にやり合うたくましさと、父王に疎まれた悲しみが共存する魅力的な女戦士である。また、異界と繋がることができる不思議な力を使って人々を支配する、ドルイドの教祖ヴェランはマッケンジー・クルック(『パイレーツ・オブ・カリビアン』)。本人とはわからないほどの変貌ぶりで謎のドルイド僧を怪演している。ほかにも、レグニのアンテディア女王にゾーイ・ワナメイカー(『名探偵ポワロ』)など、芸達者が揃う。
#KellyReilly stars as Kerra, Princess of Cantii in the new series #Britannia that premieres TODAY on @skyatlantic and @NOWTV! ⚔️#NoOneWantsToBeCivilised pic.twitter.com/SZsOhU040j
— Kelly Reilly Web (@kellyreillyweb) 2018年1月18日
個人的には、ケルトの世界観の描き方が興味深かった。部族の生活は信仰と共にある。彼らは人身御供もするし呪術も行う。軍として統率され、洗練された文化を持つローマ人にとって、ケルトの暮らしはさぞかし原始的・野蛮で、怪しげな魔法を操る未知の世界に映ったことだろう。ケルト人は霊魂を信じ、木や森、川などの自然を信仰の対象にしていたという。チェコのプラハとウェールズで行われた撮影では、そんな緑豊かで神々しいブリトン島が再現されている。
戦闘や宗教儀式のシーンがリアルに描写され、暴力とセックス満載、ミステリアスでオカルト的な要素もあり、というと、やはり『ゲーム・オブ・スローンズ』が引き合いに出されるが、架空の世界を舞台にした『ゲーム・オブ・スローンズ』と大きく異なるのは、本作が史実をもとにしているところ。しかし、物語が展開するにつれ、これは実際にあったことなのか?誰が架空の人物なのか?という部分が曖昧になっていく。歴史に忠実ではない、時代考証が甘い、という批判も一部にあるようだが、本作は歴史ドキュメンタリーではなく、あくまでファンタジードラマであり、ブリタニア侵攻を素材にしたフィクションとして、多いに楽しみたいと思うのである。
『ゲーム・オブ・スローンズ』は英国史をモデルにした描写も一部あるとはいえ、基本的にはフィクション
シリーズ1は全9話構成。脚本はジェズ・バターワース(『007 スペクター』)と彼の兄トム(『バースデイ・ガール』)、リチャード・マクブライエン(『刑事ヴァランダー 白夜の戦慄』)が共同で手掛けている。テーマソングは、スコットランド出身のフォーク歌手、ドノヴァンの1968年のヒット曲「Hurdy Gurdy Man」。サイケデリックでふわふわした摩訶不思議なチューンが、ミスマッチなようでしっくり耳に残る。
すでにシーズン2の製作が決定しており、今後の物語の展開が楽しみである。
(文/Yoshie Natori)
Photo:『ゲーム・オブ・スローンズ』
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