『エターナル・サンシャイン』監督&ジム・キャリーが贈る『Kidding』 「ジムの最高作」と好評

米Showtime で8月31日(金)から放送中の『Kidding(原題)』。子ども番組の司会者を長年務めてきた一人の優しい男に人生の試練が訪れ、家族との私生活は崩壊寸前に。困難に苦しみながらも、アメリカ中の子どもたちを笑顔にしようと、スタジオで笑顔を貫く。しかし度重なる心労に精神は限界に達し...。『マスク』『トゥルーマン・ショー』で知られるジム・キャリー主演の注目の最新作だ。

優しい司会者、スタジオに絶望は持ち込まない

ジェフ(ジム)は、30年以上子ども番組を進行してきたベテラン司会者。番組の顔である「ミスター・ピクルス」として、優しくて聡明な人物像で親しまれている。仕事上のパートナーでもある父親セブ(フランク・ランジェラ)からは、1億ドル産業の顔なのだというプレッシャーもしばしば。

しかし私生活では、息子の一人を痛ましい交通事故で亡くし、家族の絆は崩壊寸前。別居中の妻ジル(ジュディ・グリア)は身体にタトゥーを入れたうえに新しい恋人ピーター(ジャスティン・カーク)との関係をスタートし、息子のウィル(コール・アレン)は不良とつるみ始める。根っから温厚なジェフだが、私生活の軋みに加え、番組では笑顔を保とうと自身に強いてきたことで、ストレスはピークに。ついには髪の毛を剃ったり、家の水道の蛇口をハンマーで壊したりといった奇行に出始める。徐々に狂いを見せる温和なジェフが哀しくも可笑しいコメディ・シリーズとなっている。

最高のジム・キャリー

積み重なる悲しみにフラストレーションを爆発させるジェフだが、ひとたび番組の子どもたちの前に立てば、ミスター・ピクルス印のブランドは健在。ひどい心痛にも、そのキャラクター像は決して揺るぎを見せない。こうした複雑なキャラクターを演じるジムについて米Entertainment Weeklyは、ここ数年で最高の仕上がりだと絶賛、主役としての技量を讃えている。また、同メディアは不安定なジェフに振り回される周囲のキャラクターにも注目。暴走するジェフに困り果てた父セブは、番組のパペット制作を取り仕切る娘のデイドラ(キャサリン・キーナー)に、ちゃんと出演してくれる新しいキャラクターを作るよう頼み込むが、一体どこまで本気なのやら...。

陽気なキャラクターと、生身の人間としての感情の間で引き裂かれそうになるジェフの葛藤を米Varietyも取り上げる。主演のジムは、二つの側面を持つ番組司会者を好演。スタジオの外では息子を事故で亡くした悲しみに暮れるが、30年以上も司会を務めてきた番組の撮影が始まれば、お決まりの人当たりの良い笑顔を崩さない。「元気かい?」と「キミは素晴らしい存在だ」と「なるほど!」を合わせたような表情、と同メディアはその優しいスマイルを表現している。

『エターナル・サンシャイン』を彷彿

深い悲しみが霧のように周囲を支配するなかで、頑なにポジティブな姿勢を貫こうと奮闘するジェフの姿が、可笑しくも同情を誘う本作。Varietyは、名作映画『エターナル・サンシャイン』と共通する要素があるのではと指摘する。記憶を失くした男女の恋愛を描いたこちらの映画でも、突飛な状況設定と、キャラクターにとって過酷なトーンがベースになっていた。実は『エターナル・サンシャイン』も、ジムと、本シリーズで監督を務めるミシェル・ゴンドリーによる作品。今作は、こちらの映画に続き14年ぶりの再タッグとなる。

そんな二人が再度現場で顔を合わせた本作は、困難な状況でも安易な解決に頼らないストーリー運びが特徴になっている。怒りを爆発させて周囲の注意を引くこともできるが、そうしないのが本作主人公の美点だ、とEntertainment Weeklyは述べている。代わりに、シリーズのエグゼクティブ・プロデューサーでもあるゴンドリー監督は、子ども番組というテーマをうまくシーンに導入し、複雑なトーンを漂わせる。ジェフが暗がりに隠れて妻と子どもたちの夕食を見つめるシーンには、まるで絵本のような遊び心と、一編の詩のような物哀しさが漂う。

子どもたちのヒーローであり続けようという努力がかえって笑いと涙を誘う『Kidding』は、米Showtimeで放送中。同監督&同主演俳優による2004年の恋愛ドラマ『エターナル・サンシャイン』は、日本でもNetflix、Hulu、Amazon Prime Videoなどで配信中だ。(海外ドラマNAVI)

Photo:ジム・キャリー(C) babiradpicture - abp