大ヒットとなった『バーフバリ』2部作など、キラキラの衣装に歌と踊りというボリウッド・エンターテインメントが印象に強いインド映画。しかし、Netflixが8月24日(金)から世界同時配信を開始したインド発の自信作『GHOUL/グール』は、ボリウッドムービーの固定観念を根本から覆すミニシリーズとなっている。
■女性尋問官が収容所で見た恐ろしい事実とは
舞台は、政府により思想の自由が奪われた近未来のインドと思われる国。政府の最大の敵でありテロリストとしてアリ・サイードという男が秘密収容所に連行された。
その収容所に尋問員として配属された新人のニーダ。国への忠誠を誓い、自らの父親をも反政府の活動家として密告した彼女は、なんとか上司に自分の力を認めてもらいたいとアリ・サイードの尋問に向かう。
しかし、アリ・サイードの尋問を通してニーダは、彼の中にこの世のものではないものが存在することを確信する。
■『GHOUL』はただの化け物ホラーではない
ホラーや超自然的なエレメンツと、インドのナショナリズム、テロリズムが新鮮なまでに混合させている作品だと評するのは、カナダ・トロントのNow誌だ。トロント市にはインドからの移民が多い。そのような都市で発行されている雑誌だけに、インドが国家として直面している社会問題や政治問題についても明るく、それを暗に指し示すようなこのミニシリーズを高く評価している。
脚本・監督を務めるパトリック・グレアムは英国人だがムンバイを中心に活躍しており、自身が見た夢をもとに脚本を執筆。そのため、目の当たりにしているインドの社会事情が夢に現れ、問題が対処されない場合の行きつく先として近未来が舞台となったのかも知れない。
そして、そこにある心理的な恐ろしさは、『GHOUL』を化け物ホラーとは一線を画する作品として視聴者を恐怖に陥れる。
■インド現地の新聞も絶賛、意図された偶然
また、インドのHindustan Timesは、メインストリームの映画が触れないトピックをカバーしているとして評価し、『GHOUL』を、今年作られたもののなかで指折りの"勇気ある"作品であり、第一話は全体を通して良い意味で対立を引き起こすような不注意さに溢れていると指摘している。
ここでいう不注意とは、舞台はインドであると明言を避けているにもかかわらずインド人俳優を使い、ヒンディー語とウルドゥ語が飛び交う作品としたこと。そして、犯罪者として投獄されているのはムスリムだけであるという、偶然を装った、決して偶然ではない舞台設定のことだ。現在のインド批判や将来への危惧だけでなく、1億3000万人以上いる契約者の目前で屈辱を与えるかのような、強い作品であるとしている。
■様々な恐怖が折り重なるベビーな3話
歴史上、世界中で幾度も繰り返されてきた宗教や思想の当局による支配の異常さと、心理的に追い詰められる恐怖を、目を背けたくなるような残酷なシーンとともに描く本作。アル・サイードによって、自分の心の闇を暴露され、心理的に翻弄される女性尋問員。秘密収容所という独特の切り離された空間で、自分の消したい過去を暴露され、誰を信じていいのか分からなくなる狂気。仄暗い尋問センターの明かり、むき出しのコンクリ壁に飛び散る血がさらにムードを盛り上げる。
実際にグールが登場するのは2話からで、ストーリー展開にもたつきがあるという批評もある本作だが、ソファーから飛び上がってしまうようなホラーが見たい人はぜひチェックしたい作品だ。
エンディングは、視聴率次第ではシーズン2が作られる可能性もあるかと気になる形で締めくくられている。
『GHOUL/グール』は、シーズン1、全3話がNetflixで全世界一斉配信中。(海外ドラマNAVI)
Photo:Netflix『GHOUL/グール』