TVドラマ史上最も官能的? 衝撃のBBC新ドラマ『ワンダーラスト』 仲の良い夫婦がそれぞれの相手と...

英BBC OneとNetflixとの共同製作ドラマ、『ワンダーラスト: 幸せになるためのセラピー』。セラピストのジョイ(トニ・コレット)と、その夫で英語教師のアラン(スティーヴン・マッキントッシュ)が、長年連れ添った相手を裏切って不倫の道に走る。英Daily Mailが「TVドラマ史上最も官能的!?」と触れ込む本作は、エロティックなシーンだけでなく、しっかりとしたメッセージ性を備えた作品だ。

■愛してる。けれど体の相性は...
中年夫婦のジョイとアランは、高い道徳観に根ざした結婚生活を長年送ってきた。お互いを愛し合っている二人だが、夫婦の営みは必ずしも順調ではない。バイク事故に遭い松葉杖で生活する妻ジョイは、シャツを脱ぐ様子もぎこちない。行為を楽しめないジョイに、夫アランは、自分の技巧は問題ないはずだとこぼす。「はいはい手練れの職人さん」とジョイは明るく返すが、二人のムードは盛り上がらず、途中で投げ出してしまう。

やり切れないジョイはアランが仕事に出た後で一人慰めるが、年頃の息子トム(ジョー・ハースト)が帰宅したことで中断。そんな彼女の意識は、セラピーに訪れた患者マーヴィン(ウィリアム・アッシュ)に向かう。ロンドン警視庁で犯罪捜査をしているというマーヴィンが「調子はどう?」と尋ねると、ジョイは一言、「濡れてる」。二人は再会の約束を交わす。

一方、職場の学校に到着したアランは、同僚のクレア(ゾウイ・アシュトン)が男性下着のカタログを片手に自慰行為に耽っているところを目撃してしまう。奇妙にも、これがきっかけで二人は親密な仲に。6話構成の本シリーズは、相手を欺き合う中年夫婦を通じて、一夫一婦制ではない別の愛の形を世に問う作品だ。

■エロティック。しかし軽薄ではない
息の合ったコンビだが、ベッドでの相性は今ひとつの夫妻。親密さとセックスの相性が必ずしも比例せず、それこそが『ワンダーラスト』のテーマだ、と英Guardianは語る。艶かしい数々のシーンを通じて、パートナー以外との性交渉は許されないのか、というモラル上の問題に切り込む。

赤裸々なセックスをコメディとして扱った、人々を元気づけるようなシリーズだ、と評するのは英Telegraph。中年夫婦の二人ともが性に奔放になってゆく本作を、「セックス・コメディ」と表現する。脚本は、2011年英国ブッカー賞に輝いた、記憶と時間をめぐる小説「終わりの感覚」(ジュリアン・バーンズ著)を映画化した『ベロニカとの記憶』でもペンを執ったニック・ペインで、体液、女性のマスターベーションなど踏み込んだ描写でTVドラマ界を揺るがす。しかし、刺激的なシーンだけが売り物の底の浅い作品かと言うと、決してそうではない。劇中のジョイのセリフ通り、人々は性生活を公に語りたがらないが、このドラマをきっかけに多くの議論が起こることだろうと同メディアは述べている。ただし、浮気については読者のご家庭では試さないでください、との注意喚起も忘れていない。

■心情をセリフなしに表現
心情の機微を描いた本作において、気になるのは主演の演技力。Telegraphは夫婦両方のキャストを絶賛している。妻役のトニは、自在に変化する表情をフルに活かし、複雑な心中を表現。バイク事故に遭い、激しいセックスは禁忌と医者から告げられるが、もうそんなチャンスはないのだという言葉が喉まで出かかって飲み込む。セリフなしに表現する技量は見事。夫役のスティーヴンも、不貞を働きつつ妻の行為のほうが悪いのだと信じ込むろくでなしを、完成度の高い演技でこなす。

物語の展開がややじれったい、とGuardianは脚本に難をつけるが、それを除けば役者のパフォーマンスは素晴らしいと評価。夫婦二人とそれぞれの不倫相手はもちろんのこと、息子のトムやジョイの患者など脇役も粒ぞろいだと賞賛している。

センセーショナルな内容でドラマファンの注目を集める『ワンダーラスト: 幸せになるためのセラピー』は、英BBC Oneで9月4日(火)から放送中。日本では、Netflixで10月19日(金)より配信スタート。(海外ドラマNAVI)

Photo:『ワンダーラスト: 幸せになるためのセラピー』
(C) Matt Squire/Netflix