『Sorry for Your Loss(原題)』は、米Facebookが手掛けるヒューマンドラマ。夫を亡くした妻とその家族の胸に、振り払いきれない思い出が去来する。苦しみを乗り越えようとして何度も挫折する妻に、周囲は表面上、優しい言葉をかけるが...。9月のトロント国際映画祭でプレミア上映された本作は、現在Facebook Watchで配信中。
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■心の支えをなくし、周囲にも頼れず
ロサンゼルス郊外でエアロビクスのインストラクターを務めるリー(エリザベス・オルセン)は、夫のマット(マムドゥ・アチー)を若くして亡くし、悲しみの真っただ中にいる。完璧とは言えない結婚生活だったが、いざ先立たれると、とめどない涙が...。二人で住んだ思い出のアパートにはついに戻ることができず、母アミー(ジャネット・マクティア)の家に身を寄せることに。
母とともに暮らす妹のジュール(ケリー・マリー・トラン)もショックを受けているはずだが、辛い心情ばかり口に出すのも憚られ、苦難の時を共にしているはずの家族間のコミュニケーションはどこかちぐはぐに。周囲の人物は言わずもがなで、お悔やみを口にするものの、その態度にはあからさまな距離感が漂う。誰にも頼ることのできないリーは、いつか事実を受け入れられる日が来るのだと信じ、前へ進み続けようと決意する。
■悲しみの大波
1話が30分という短さの本シリーズだが、この世に残された者だけが知る悲しみがぎっしりと詰め込まれている。いい意味で観るのが辛いという珍しいタイプの作品、と米Vultureは表現する。死別という悲劇を非常に入念に観察しており、その上に構築された繊細なドラマになっている。過去に妻を亡くしていると打ち明ける前述のVultureライターは、作品を視聴する中で自身が辛さに耐えた月日を思い出したとのこと。真に迫る心理描写は折り紙付きだ。特に身の回りの些細なものが残酷にも数々の記憶を蘇らせる点には、リアリティが感じられるという。シェーバー、シャツ、スケッチブックなど、取り留めのない品によって運ばれる日常風景の追憶が、残された主人公と視聴者の心を締め付ける。
これだけ悲哀を強調したストーリーでありながら、「お涙ちょうだい」の明け透けな演出が感じられないのは流石。エピソード時間の短さも観やすさに繋がっているのでは、と米Hollywood Reporterは述べる。また、笑顔の絶えない過去のシーンも程よいバランスで配合。ロマンチックだったり愉快だったりと、幅広いトーンで魅了してくれるシリーズだ。
■温度差
お悔やみの言葉「Sorry for Your Loss(=お悔やみ申し上げます)」をタイトルに据えた本作は、その言葉に本心は宿っているのか、という鋭い着眼点を感じさせる。周囲に頼れず苦しむ主人公リーだが、身内でさえ必ずしも同情的とは限らない。Vultureは、リーの義弟に当たるダニー(ジョヴァン・アデポ)の言動をピックアップ。傷心のリーに対し再婚すれば忘れると持ちかけるなど、家族の間にも心情のすれ違いが感じられる。
Facebook Watchで配信されていることを念頭に、Hollywood Reporterは少し意地悪な持論を展開。上部だけの感情表現が行き交うFacebookというプラットフォームと、形だけのお悔やみが頻出する本作は似ている、と指摘。やや斜に構えた視点を提示するものの、全体の評価としては非常にうまく構成されており、観る価値のあるドラマだと同メディアは述べている。
夫を失った妻が温かな過去を振り返りながら、幸せへの道を手探りで進む『Sorry for Your Loss』は、Facebook Watchで英語版が配信中(日本語字幕未提供)。(海外ドラマNAVI)
Photo:エリザベス・オルセン
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