自閉症スペクトラム障害を抱える高校生サムを通して、愛と自立の意味をコメディタッチで描く『ユニークライフ』はNetflixオリジナル作品。他の高校生と比べるとさまざまなことが困難、生きにくいと感じているサムが一念発起しガールフレンドを作ると決めたため、家族を巻き込んで様々なハプニングが...。『スニーキー・ピート』『それいけ!ゴールドバーグ家』などの製作にも携わるセス・ゴードンが監督陣に名を連ねるファミリードラマ。
■よりテーマに接近 各キャラクターから目が離せない
シーズン1では、自閉症がゆえに人とコミュニケーションを取ることが苦手で、ときにまっすぐ過ぎる発言や行動が思いもよらず人を傷つけてしまうサムを主人公に、彼のガールフレンド探しが物語の中心であった。しかしシーズン2では、サムの両親や妹、カウンセラーのそれぞれの人生の選択にもスポットライトが当てられる。『Atypical』(典型的でない)という本作原題や、そしてシーズン1でサムの妹ケイシーのボーイフレンが呟いたセリフ「普通の奴なんてどこにもいないさ」という、このドラマのテーマにより近づいた展開となっている。もちろん、自閉症ゆえのユニークな笑いも見どころだ。
シーズン1で浮気がばれてしまった母親は、サムのことを心配しながらも夫に許してもらえず家を出る。また、同じ学校に通い、ぶっきらぼうながらもサムをサポートする妹も自らの将来を見据えて別の学校に通い始める。サムを守ってくれていた女性が二人とも身近からいなくなり、不器用ながらもサムと心を繋げようとする父親が残った。そして、シーズン1で顔を出した自立への芽は、この父親と息子との男同士らしい交流からしっかり心の中に根付き始めるのだった。
■見る者の共感を呼ぶ「典型的」でない家族ドラマ
「多くの支持を獲得したシリーズ1の、ユニークな目線、鋭いユーモア、そして共感を呼ぶストーリーはシーズン2にも引き継がれている」と米Los Angeles Timesは述べる。キャストの一人、母親エルザ役のジェニファー・ジェイソン・リーのインタビューを合わせて掲載。ジェニファーは、エルザの浮気に対して「(息子のサムが自立への一歩を踏み出し)必要とされなくなったことで、自分の場所を見つけようとしていただけ。(このような感情は)子どもが自閉症スペクトラム障害であろうがなかろうが、すべての親が感じるのではないでしょうか」と語っている。浮気するかしないかは別として、このような"普通"の感情を丁寧に拾い上げたキャラクター構成が、見る者の共感を呼んでいるようだ。
また、自閉症スペクトラム障害という、テレビ的な笑いに結び付きにくいテーマを扱うことについて、クリエイターのロビア・ラシードからのコメントも紹介。ドラマ中の自閉症に関するユーモアを、自閉症への理解を深め、かつ楽しいものにする努力を評価している。
そして、米Forbesは、シーズン2を「すべての面で前(シーズン1)よりベター」であり「Netflixのベストショー」であると大絶賛している。典型的な他の家族ドラマと比べてシナリオには取り立てて複雑なところはないが、他の似たような番組が失くしてしまった真に迫ったもの、つまり、臨場感が『ユニークライフ』にはあると書いている。コメディとしてもっと別のアプローチをしたほうが笑いは取れた、としながらも、サムをはじめとする各キャラクターに共感し、彼らと一緒に一喜一憂できるところにストーリラインを置いたことに称賛を隠さない。
『ユニークライフ』は、自閉症スペクトラム障害を持つ青年が主人公だが、自閉症のドラマではない。障害とは関係なく、誰もが感じる疎外感や人生の岐路に立ったときの不安な気持ちを、ユーモアを交えながら描いている。少し風変りだが、深く共感できるコメディドラマを見たいなら、『ユニークライフ』をおいて他にぴったりのドラマはないだろう。
『ユニークライフ』シーズン1と2はNetflixにて配信中。ぜひ、シーズン1から順番に見て、登場人物の心の成長を感じて欲しい。(海外ドラマNAVI)
Photo:『ユニークライフ』
(C) Beth Dubber/Netflix