ハロウィンの夜に殺人鬼が死体を..."Huluならでは"の恐怖のアンソロジー『Into the Dark』

米Huluで公開中の『Into the Dark(原題)』は、全12話からなる1話完結型のアンソロジー。感謝祭、クリスマス、大晦日など、各話は祝日をテーマに進行。旬の祝日を各放送回の核として、一月に1話ずつ、一年かけて公開するという趣向だ。ホラー映画の製作として評判の高いジェイソン・ブラムが指揮を執る。

■死体を隠すならハロウィンの夜に
ハロウィンにちなんだ第1話は、とある高級マンションの一室からスタート。そこには、金で動く冷酷な殺し屋の男ウィルクス(トム・ベイトマン)の標的となった無残な死体が転がっている。犯行後も悠々と留まるウィルクスは、被害者のワインとチーズを好きなだけ食い漁るなど、常軌を逸した行動を続ける。カース・マルツゥと呼ばれるそのチーズの断面に大量のウジが...。

ひと仕事終えたウィルクスは、死体の処分という最後の仕上げへ。死体を袋に詰めると、ハロウィンで盛り上がるナイトパーティーへと足を運ぶ。すっかりお祭りムードの参加者たちにとって、血まみれの服も死体の詰まった大きな袋も、おそらくは仮装の小道具に見えているのだろう。殺人鬼が側にいるとは露知らず、一夜限りのイベントは盛り上がりを見せる。難なくパーティーに溶け込み人々との会話を楽しむウィルクスだが、ともにグラスを傾けた一部の参加者が死体に勘付き、それを持ち去るという計算外のアクシデントが。盗んだ者を突き止めてその口を封じるため、夜の街を殺人鬼が彷徨う。

■共感できない主人公
第1話の主人公ウィルクスは、決して視聴者の同情を誘うような人物ではない。むしろ、その振る舞いには思わず嫌悪感を覚えるほどだと米Varietyは表現。演じるトムは普段はカリスマ性を放つ俳優だが、今回ばかりはそのオーラも消え失せ、完全に冷酷無比な男として登場。ロボットを彷彿とさせるぎこちない動きになっているが、それもホラー性を高めるための演出だろうか。好き嫌いがはっきりと別れる作品だが、好きな人は一瞬で気に入るだろうと述べている。

ほぼ同じ点を指摘する米The Daily Dotは、冷酷な主人公に共感を持つ視聴者はいないだろうと断言。作中のあちこちに潜むユーモアも、観る者に親近感を抱かせるまでには至っていないようだ。ただし主役以外では好感を持てるキャストも。マギー役のレベッカ・リッテンハウスはその代表格で、ダークな性格を隠そうとするが滲み出てしまうパソコンおたくを演じる。良い芝居を披露しており、最も惹き込まれるキャラクターだと同メディアは賞賛する。

■低予算ホラーの仕掛け人
プロデューサーのブラムは、低予算ホラーの腕利き製作者として有名な人物。オスカー賞受賞の映画作品『ゲット・アウト』などの指揮を執ってきた。同氏によるB級スタイルの本作は、Huluというプラットフォームと非常に相性が良い、とVarietyは指摘。Amazonが家族向け作品のラインナップを強化し、Netflixが世界的知名度を誇るスターたちを揃えるなか、Huluはスティーヴン・キング原作の『Castle Rock(原題)』など、根強い人気を持つホラージャンルに投資してきた。限られた予算で収益性につながる作品を志向するHuluのスタイルは他のストリーミング・サービスとは異なっており、本作はその路線にマッチする立ち位置だ。

もちろんすべてがチープなわけではなく、第1話終盤の展開についてDaily Dotは、伝統的なホラーのスタイルを継承したソリッドな作りだとコメント。葬儀場で起こる一連のシーケンスが恐怖感を煽る。さらに11月2日(金)公開の第2話『Flesh & Blood』はタイトで、緊張感にも磨きがかかった一本。家族の一人を亡くした一家が迎える感謝祭の物語だ。2話目について同メディアの評価は高く、盲目の老人の家に押し入った3人の強盗が老人によって身の危険に晒される映画『ドント・ブリーズ』を彷彿とさせると述べている。

旬のイベントが不安を掻き立てる『Into the Dark』シリーズは、米Huluで配信中。前述の映画『ドント・ブリーズ』は、日本でもNetflix、Amazon Primeなどで配信中。(海外ドラマNAVI)

Photo:トム・ベイトマン
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