欧米で社会現象の「リラとわたし」の映像化『My Brilliant Friend』 少女たちの50年以上続く友情

『My Brilliant Friend(原題)』は二人の少女の友情の軌跡を描くミニシリーズ。欧米で大ブームを巻き起こしたイタリアの小説「リラとわたし」を原作としている。二人の貧しい少女の間に不思議な友情が芽生える。ヴェネツィア国際映画祭で9月にプレミア上映された本作は、米HBOで11月18日から放送される。

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◆貧しい日々がめぐり逢わせた、50年来の大親友

本で埋め尽くされた部屋に座る老女エレナが、おもむろにコンピューターの電源を入れる。大親友のリラが消息を絶った今、彼女と過ごした忘れがたい日々を書き留めようとしているのだ。その思考は、本人がまだ小学生だった1950年へと時を遡る。

当時危険がそこかしこにありながら、それでも輝いていたナポリ。優等生のエレナと悪知恵が得意なリラは、大親友でありながら最大の敵という奇妙な絆で結ばれている。それぞれ安アパートに暮らす家庭に生まれた二人は、華やかな少女時代を送ったわけではない。二人の仲違い、進学をめぐるエレナの両親の激しい口論、地元の不良とのトラブルなど、日常生活に襲い来るつらい出来事と、幼い子の心情を文学的に綴った作品だ。

◆幼い子供の現実を、美化も誇張もせず丹念に描く

原作小説を書いたのは、イタリア人作家のエレナ・フェッランテ。2016年、米TIME誌の「世界で最も影響力のある100人」に選出されている。その原作に忠実なドラマ版が、身の周りで起きる出来事に当惑する子供たちの心理を上手く映し出している、と称賛するのは米Variety誌。文学作品としての高い品質を維持しながら、TVドラマとして成立するよう相当な努力をもって翻案されている、と分析。優等生のエレナに対してリラは時に反感を抱き、紙くずを投げつけることも。小学生のエレナは深く傷つくが、それでも二人の絆が絶えることはない。

米Hollywood Reporter誌は、本作は美しく繊細なノスタルジーでもなければ、かといって惨めさを押し売りするわけでもないと述べる。学校では暴力に晒され、家では進学をめぐり両親が激しく口論するなど、心の痛む毎日を送っていたエレナ。それでも子供の時分には、それほど最悪の生活だと感じたことはなかった、とのちに回顧する幼い頃の暮らしを丹念に写し取っている。

◆抜群にナチュラルな子役の演技

シリーズ中盤では10代に成長した二人の姿を見ることができるが、冒頭数話で主役を務めるのは小学生時代を演じるエレナ役のエリサ・デル・ジェニオとリラ役のルドヴィカ・ナスティ。芸達者な二人はそろって絶賛されている。要所要所で挿入される老女エレナによるナレーションは、子役の演技が十分でない場合に備えた保険かもしれないが、それは杞憂だったとHollywood Reporter誌。純真で子供らしい魅力にあふれた二人の演技、エリサの落ち着いたトーンとルドヴィカの活発で社交的な性格が合わさり、脚本以上の価値を生み出したと絶賛する。

二人の演技にはVariety誌も好感。ルドヴィカはいたずらっぽい笑いがトレードマークで、対するエリサは憎たらしい視線でこれに応戦する。子供時代の真っ只中にいながら、ひたすら不遇の時が過ぎ去るのを待っているかのような、子供らしからぬエレナの態度が印象的だとしている。(海外ドラマNAVI)

Photo:『My Brilliant Friend』
(C) Capital Pictures/amanaimages