大ヒットドラマ『NCIS ネイビー犯罪捜査班』の第2弾スピンオフとして人気を博している『NCIS:ニューオーリンズ』。シーズン4がスーパー!ドラマTVにて11月29日(木)より独占日本初放送となる本作の魅力を伝える、なかざわひでゆき(映画・海外ドラマライター)のコラムをご紹介しよう。
ニューオーリンズの歴史と文化を散りばめた『NCIS:ニューオーリンズ』
『NCIS ネイビー犯罪捜査班』『NCIS:LA 極秘潜入捜査班』に続く、『NCIS』シリーズ第3弾としてスタートした『NCIS:ニューオーリンズ』。本国アメリカでは今年9月よりシーズン5の放送も始まった人気番組だが、その大きな特徴の一つが舞台となる街ニューオーリンズの歴史と文化を散りばめたローカル色の豊かさだ。
アメリカ南部でも屈指の観光都市として知られるニューオーリンズ。もともとルイジアナ州がフランス領だった18世紀初頭に設立され、その後一時期はスペイン領となった。さらにそこへ、西アフリカからカリブ諸島を経て多数の黒人奴隷が流入したことから、フランス・スペイン・アフリカ・カリブの文化が融合して独自の発達を遂げ、アメリカの他の地域とは明らかに違うエキゾチックな伝統文化が生まれたのである。ニューオーリンズが「アメリカで最もユニークな都市」と呼ばれる所以だ。
そして、奴隷たちの持ち込んだアフリカ音楽からジャズが生まれ、やがてリズム&ブルースやロックンロール、そしてヒップホップへと進化していく。「ジャズ発祥の地」として有名なニューオーリンズだが、同時にアメリカにおける黒人音楽の聖地でもあるのだ。また、フランス・スペイン・アフリカ・ネイティブアメリカンの食文化を融合した南部特有の「ケイジャン料理」は、ニューオーリンズに住む富裕層によって洗練されたヨーロッパスタイルの「クレオール料理」へと発展。今でもニューオーリンズは音楽と美食の街として知られ、フランス植民地時代の名残を色濃く残す歴史地区フレンチ・クォーターには、ジャズやリズム&ブルースの生演奏を聴かせるバー、ガンボやジャンバラヤなどの郷土料理を提供するレストランが軒を連ねる。リオのカーニバルと並び称されるニューオーリンズ名物のカーニバル「マルディグラ」も、こうした一種独特の風土が生み出したものだと言えよう。
実際にニューオーリンズの現地でロケ撮影されている『NCIS:ニューオーリンズ』にも、それらの魅力あふれる地元文化が盛りだくさんだ。例えば音楽。これまでにも、ニューオーリンズ・ジャズの伝説的鬼才ドクター・ジョン(シーズン2)やアメリカン・ロックの女王シェリル・クロウ(シーズン3)など、数々のミュージシャンがゲスト出演してきたが、最新のシーズン4でも第1話にニューオーリンズの生んだ大物R&Bバンド、ネヴィル・ブラザーズのシリル・ネヴィルやカントリー・ロックの大御所ジミー・バフェット、ブルース・ギタリストのサニー・ランドレスらが登場。ほかにも女性シンガー・ソングライターのミア・ボーダーズ(第5話)や人気ロックバンド、X・アンバサダーズ(第9話)が出演し、劇中でパフォーマンスを披露してくれる。音楽通ならずとも、本場のお洒落で渋いサウンドにしびれること間違いなしだ。
そもそも、NCISニューオーリンズ支局のリーダー、プライドが大の音楽好き。加えて大の料理好きということもあって、本作には美味しそうなケイジャン料理やクレオール料理もたびたび登場する。時にはプライド自らが、仲間たちに自慢の手料理を振る舞うことも。また、「マルディグラ」をはじめとするカーニバルやフェスティバルが舞台となるエピソードも少なくない。そして、ニューオーリンズをこよなく愛するNCISメンバーは、自分たちの誇りである地元の音楽や食事、お祭りを一緒に楽しむことで、まるで家族のような人間関係を築いていく。
この「疑似家族」とも言うべき密度の濃い関係性は、『NCIS ネイビー犯罪捜査班』や『NCIS:LA 潜入犯罪捜査班』にも共通する要素だが、しかし中でも『NCIS:ニューオーリンズ』は特に顕著だ。こうした地元愛に根差す強固な絆がきっちり描かれているからこそ、一丸となって凶悪犯罪に立ち向かう彼らのチームワークに説得力が生まれ、悲喜こもごもの人間ドラマにも豊かな温かみが備わる。全米で本作が愛されている理由は、そこにあるのかもしれない。(海外ドラマNAVI)
Photo:『NCIS:ニューオーリンズ』シーズン4
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