12月4日(火)、Netflixオリジナル映画『バード・ボックス』のロサンゼルス・ジャンケットに登場したサンドラ・ブロックは、同作の主演女優兼製作総指揮を務める。実生活でも二人の子どもの母親であるサンドラは、「産むつもりがなかったのに出産が直前に迫ったシングルマザー」役を演じるにあたり、「子どもを愛おしいと思わない主人公マロリーの気持ちを理解することが本当に難しかった」と語る。母親としての、マロリーと自身の違いからインタビューは始まった。
――マロリーとあなたは母親として非常に異なるタイプのようですが?
子どもを欲しいとは思っていなかったマロリーは、私からしたらとても遠い存在に思えたわ。だからこそ、この役を演じることに面白みを感じたのも事実。(実際、子どもを産んだ後のマロリーに対して)確かに彼女は子どもたちに厳しく当たる母親ね。しかし、子どもたちとの絆は確固たるものなの。私自身が、一人の母親としてマロリーにアドバイスするとしたら? 私自身、常に育児でアップアンドダウンしているから、どんなアドバイスもできないと思う(笑)
――この映画では、将来に対して悪夢のような世界が展開しますが、実際そういう状況になったら、あなたは楽観的に受け止めますか?それとも悲観的になりますか?
両方のタイプの性格が私の中にあるわね。だけど、常に、最悪の状況を設定して警戒はしている。私の子どもたちは(マイノリティである)アフリカ系なので、余計に心配にもなる。でも、家族みんなで協力して子どもを育てているの。私の義理の母(義兄の母)は日本人なんだけど、彼女もまた家族の中で重要な役割を占めている。素晴らしい家族だと誇りに思っているのよ。また、心配性な私にとっては、子どもといかに楽しい時間を過ごすかが一番私優先順位が高いことなの。映画も一緒に見るわよ。子どもたちが好きな映画? 「オズの魔法使い」。昔の映画で特殊効果もとてもシンプルだけど、シンプルなことがいかにパワフルかがよくわかる。あの映画は子どもの創造性を喚起するわね。
――謎の敵の姿を見ると自殺に向かって暴走してしまう、つまり外に出るときは目隠しをしなければならないという困難な役柄でしたが、役作りのために訓練をしたのですか?
目隠しをして行動できるように、目が不自由な専門のコーチから訓練を受けたのよ。彼から、いかに視覚に頼ることなく、それ以外のセンスを呼び起こすかを学んだわ。彼は私の家に入ってきて、壁がどれくらい先にあって天井がどれくらい高いかを当てたの。視覚を使わないでどうやって勘で感じるのか、私から見たらとても不思議だった。トレーニングの際に、彼は直感を使って多くのことがわかることを証明してくれた。たとえば、指を何かに近づけた時、触らなくてもそこに物があることが彼にはわかるの。オートバイにだって乗るのよ。
――マロリーは子どもと共に生き残るために見えない敵と必死に戦いますが、あなた自身はサバイバルに自信はありますか?
私自身のサバイバルスキル? それはもう自信があるわよ。私の家には、緊急時に必要なものをまとめて置いたステーション(基地)があるの。ブランケットや食料や、それから犬に必要なものまで揃えてある。緊急事態になったら、どこの窓を破って家から脱出するかというプランも立ててあるのよ。
――25年近くにわたって、ハリウッドでの地位を保持していますが、この業界でのサバイバルスキルは何でしょうか?
それはユーモアのセンス、これしかないわね。ハリウッドは本当にクレイジーなビジネスよ。でも、一番根本にあるのは現場で皆一緒に働くということ。作品に取り組んでいる時は、外の世界、例えば最低のマスコミなんかは関係ない。あ、あなたたちは別よ(笑)とにかく、真剣に働いて成果を出して、そしてまた別の作品でチームを組む。一度きりじゃなくて、しばらくしたらまた現場に戻ってくるのよ。つまり、また一緒に働きたいって思ってもらえるように仲間には親切でいないといけないってこと。女王様気取りではいけない。仕事とは繰り返されるもの、その積み重ねなの。
――スサンネ・ビア監督と一緒に組んでみていかがでしたか?
スサンネのような才能のある女性監督と一緒に仕事ができてラッキーだったと思っているわ。彼女は素晴らしい監督というだけでなく、人間的にも素晴らしい人。また、私は女性と一緒に現場で働けることに幸せを感じる。そして今、ハリウッド業界は女性の活躍に対して変化の時を迎えている。いい兆候ね。
――共演者でパートナーを演じたトレバンテ・ローズについては?
彼は素晴らしい父親像を演じてくれた。まさに私が父親に求める理想の姿そのままだった。スサンネが人間として素晴らしいように、彼もまた本当にいい人なのよ。私たちは一緒に働く仲間としてとてもうまくいったと思う。他の共演者とも、チームワークが良かった。特に目隠しして行動しなければならないのだから、互いを信頼する必要があったの。『ゼロ・グラビティ』では何カ月も、たった一人で何かが見えているフリをして演技しなくてはいけなかった。そんな孤独と比べたら、共演者とやりとりできて、彼らと絆を築けたことが嬉しかったわ。
――次に取り組むプロジェクトはどんな作品ですか?
私は自分が見たいと思う映画を作りたい。科学者ではないから、感情に訴える作品がいいわ。その点、『バード・ボックス』も、サバイバルドラマであると同時にヒューマンドラマでもある。次の作品? 実はコメディを演じたくてうずうずしているのよ。しばらくコメディから離れていると、やりたくなる。だって見る人を幸せにして喜びを与えるでしょう? それが女優としての醍醐味でもあるわね。
――女優、プロデューサー、母親と大忙しですが、自分の時間は持てていますか?
自分の時間って何(笑)? 気分転換に外出するかって? いいえ、私は普段はあちらこちらに出かけないの。旅行は大好きだけど。子どもといる時はいつも彼らのことを心配しているから、今みたいに取材を受けている時が自分の時間かもしれない。それから寝ている時間。それに子どもたちより早く起きて、朝の30分だけでもコーヒーをゆっくり飲みながら、一人だけの静かな時間を過ごしている時。私は自分でなんでもやりたいタイプなので、リラックスするためにマッサージでもと思っても、そんな時間もない。子どもたちと過ごしている時は彼らを優先するから、彼らの時間ね。そんな忙しい生活だけど、最高に幸せ。母親になって変わったこと? 我慢強くなったかもしれないけど、もっともっと我慢が必要ね。私はとても心配性なのよ。その心配のレベルを下げる必要があると思うわ。
仕事以外では子どもが生活の中心だという、良き母親の顔をインタビュー中に何度ものぞかせたサンドラ。『バード・ボックス』では、本来の自身とは程遠いながらも、主人公マロリーが過酷な状況を生き抜きながら母性に目覚めるまでを見事に演じきっている。
Netflixオリジナル映画『バード・ボックス』は12月21日(金)より全世界同時ストリーミング。
(文・取材:福田恵子)