今年も様々な海外ドラマが放送されたが、心に残った一本はどの作品だっただろうか? 折しもアメリカでは米各紙が、それぞれお勧めする年間ベストドラマを発表。複数のリストに重複して登場するドラマも多く、今年愛された作品の傾向が鮮明になっている。お気に入りの作品が掲載されているか、ぜひチェックしてみよう。
♦コメディとスリラーが記憶に残る一年
コメディ作品が好調だった2018年。それに加え、スリラーの秀作も各紙のランキングに多く取り上げられる傾向に。リラックスしたい瞬間から刺激に飢えた日々まで、あらゆるシーンをドラマが潤してくれる年となった。
米紙の挙げる5つのランキング中、最多の登場回数となったのは『バリー』と『キリング・イヴ/Killing Eve』(5ランキング中、4つに登場)。『バリー』は、暗殺任務中に演技の楽しさを知ってしまった殺し屋が、無謀にも俳優の道との両立を目指すクライム・コメディ。『キリング・イヴ』は一転、MI5の職員がロシアのスパイに命を狙われる、緊張感あふれる国際スリラーとなっている。
ランキングへの登場回数で両作を追うのが、FXのコメディ『アトランタ:略奪の季節』と、スパイ・スリラー『ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ』(5ランキング中、3つに登場)。前者は音楽での成功を夢見る男とその仲間たちの、ダメダメな日常を描く。シュールでブラックなユーモアの効いたシリーズだ。後者は、米郊外に身を隠すロシア人スパイ夫婦がFBIに追われる、リアリティたっぷりのスパイ・ドラマ。犯罪、コメディ、スパイ、スリラーなど、前述の2作と重なる要素が多い。コメディとスリラーに恵まれた一年という、2018年の傾向が浮き彫りになった。
♦各紙のベスト作品
ここからは、各紙の発表するランキングを紹介しよう。3つの部門を設けているのはNew York Times紙。2018年のベスト・ドラマ部門では、僅差の作品もあるため厳密な順位づけはできないとし、順列を設けずに原題のアルファベット順で発表している。ベスト10作品は以下の通り。『バリー』と『キリング・イヴ』は表裏一体だとしており、都合11作品のリストとなった。
・ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ
・America to Me(原題)
・アトランタ:略奪の季節
・バリー
・キリング・イヴ
・ボージャック・ホースマン
・The Good Fight/ザ・グッド・ファイト
・Homecoming(原題)
・Lodge 49(原題)
・Pose(原題)
・KIZU -傷-
同紙は米国外のドラマを対象とした、ベスト・国際ドラマの部門を別途設けている。ランキングの詳細は以下の通り。7位タイの2作はどちらも、ロンドン出身の女優・ニコラ・ウォーカーが主演。8位には日本製アニメーション・シリーズ『宇宙よりも遠い場所』がランクインを果たした。こちらは女子高生グループが南極で繰り広げる冒険の物語だ。
1位:英国スキャンダル〜セックスと陰謀のソープ事件
2位:THE BRIDGE/ブリッジ
3位:このサイテーな世界の終わり
4位:Babylon Berlin(原題)
5位:Detectorists(原題)
6位:ペーパー・ハウス
7位:埋もれる殺意
7位(7位タイ):The Split(原題)
8位:宇宙よりも遠い場所
9位:Manon 5 Years On(原題)
10位:ハワーズ・エンド
同紙の新作部門のランキングは、以下のような結果となった。今年サービス開始したFacebook Watchから、『Sorry for Your Loss(原題)』が7位に食い込んでいる。
1位:バリー
1位(1位タイ):キリング・イヴ
3位:Lodge 49(原題)
4位:America to Me(原題)
5位:クィア・アイ
6位:YOU --君がすべて--
7位:Sorry for Your Loss(原題)
8位:Corporate(原題)
9位:カップケーキ&ダイノのなんでも屋/Cupcake & Dino: General Services
10位:Pose(原題)
※別著者によるランキングのため、タイ以降の順位の扱いが異なる。
(以上New York Times紙より。)
USA Today紙は25位までの比較的長いリストを公開。他紙が触れていない『アメリカを荒らす者たち』に3位の座を与えている点が特徴的だ。ドキュメンタリー映画の制作班が、高校で起きた落書き事件の真相を追う同作。視聴者は真面目なドキュメンタリーを観ているはずが、いつの間にか笑いを堪えられなくなっていること請け合い。その他、ランキングの全容は次のようになっている。
1位:ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ
2位:The Good Fight/ザ・グッド・ファイト
3位:アメリカを荒らす者たち
4位:Escape at Dannemora(原題)
5位:キリング・イヴ
6位:ワンデイ -家族のうた-
7位:グッド・プレイス
8位:アメリカン・クライム・ストーリー/ヴェルサーチ暗殺
9位:クレイジー・エックス・ガールフレンド
10位:Super Store(原題)
11位:バリー
12位:アトランタ:略奪の季節
13位:YOU --君がすべて--
14位:Trial & Error: Lady Killer(原題)
15位:インセキュア
16位:マーベラス・ミセス・メイゼル
17位:このサイテーな世界の終わり
18位:ドクター・フー
19位:ビッグマウス
20位:クィア・アイ
21位:ジェーン・ザ・ヴァージン
22位:ブルックリン・ナイン-ナイン
23位:ボージャック・ホースマン
24位:GLOW: ゴージャス・レディ・オブ・レスリング
25位:マニアック
(以上USA Today紙より)
最後に紹介するのは、昨今公開されるドラマの数の多さに驚きを隠さないWashington Post紙。批評家と言えどとても全作を観るのは不可能、と本音を打ち明ける。特に心に響いたものをまとめたというランキングは、USA Today紙とおおむね似た傾向だが、5位の『Kidding(原題)』が目新しい。私生活で不幸の続くテレビ司会者が、カメラの前でだけは明るく温厚なキャラクターを維持するという、切なくもコミカルな一本。主演のジム・キャリーがここ数年で一番印象的な演技を見せている、と同紙は太鼓判を押している。同作を含め、ランクインしたのは以下の全10作品だ。
1位:バリー
2位:ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ
3位:キリング・イヴ
4位:Escape at Dannemora(原題)
5位:Kidding(原題)
6位:インセキュア
7位:The Fourth Estate(原題)
8位:マーベラス・ミセス・メイゼル
9位:アトランタ:略奪の季節
10位:フォーエバー ~人生の意味~
(以上Washington Post紙より)
以上46作品(重複のぞく)が、米紙3紙の勧める今年のベスト・ドラマ。面白そうなシリーズが見つかった方は、年末年始の休暇にどっぷりと浸ってみるのも一案だ。(海外ドラマNAVI)
Photo:
『キリング・イヴ/Killing Eve』
(c) Sid Gentle Films
『ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ』
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