Netflix『Baby/ベイビー』、二人の少女が危険な大人の世界に...実話の売春事件から着想

Netflixオリジナルシリーズ『Baby/ベイビー』は、2013年にイタリアで起きたBaby Squillo(少女売春)事件にインスパイアされて制作された。昨年の11月末からシーズン1(全6話)が独占配信中だ。

Baby Squillo事件とは、ローマ郊外の富裕層が住むパリオリ地区の14歳と15歳の少女二人が売春をしていたというもので、顧客として名を連ねたのは政治家、国連の職員、弁護士、銀行員など、エリート中年男性約50人。とくに、当時警察官であり、ムッソリーニの孫娘の夫であるマウロ・フロリアーニが執行猶予付き1年の懲役刑と罰金刑を受けたことで、スキャンダルはイタリア中の話題となった。

そんな実話から発想を得て、イタリアの新進気鋭の作家やプロデューサーたちが手掛ける『Baby/ベイビー』は、10代の若者たちの心の闇と葛藤を正面から描くドラマとなっている。

◆何の不満もない上級階級での暮らしは、水槽のなかの魚?

ローマのパリオリ地区。大使館や富裕層の住宅が並ぶ閑静な住宅街で、この地区に住む子どもは生まれながらにして幸福な生活が約束されている。この地域には学力優秀な名門校があり、そこに通うキアラも上流階級の子女。

何の不満もないが、代わり映えもない生活を送っているキアラは、水槽のなかの魚のように酸欠状態。そんな彼女の生活に唯一新風を巻き起こしているのが、転入生のダミアーノだ。彼は、決して裕福ではなかったイタリア人の母親と死に別れ、大使として仕事をするアラブ系の父親のもとに引き取られたため転校してきた。自由な外の空気をダミアーノから感じるキアラは、彼に惹かれていく。

同時に、同じ学校のルドと話をするようになったキアラは、ほかの同級生と異なるルドを気に掛けるようになる。ルドの母親はシングルマサーで、名門校に通えているのは別居している父親のおかげだ。ルドはそんな境遇から逃げるように大人の世界に足を運ぶ。そして、両親の不仲を目の当たりにしたキアラは、ルドと共にその秘密の世界を共有するようになるのだった。

◆セクシーすぎずエンターテイニング シーズン2にも期待

要所要所で流れるChromaticsによる「Girls Just Want To Have Fun」のカバー曲が、美しくも儚い、若さゆえの間違いを彷彿とさせるスタイリッシュな本作。

レビューでは、トラブルを起こす上流階級ティーンのスペイン版『エリート』や、アメリカ版『ゴシップガール』と比べているものが多いことが目に付く。DECIDER誌は、Netflixはまるで世界中の「トラブルに巻き込まれるティーン」を集めているようだとコメントしているほどだ。実話の未成年売春事件をベースにしているため、売春を美化しているように見えると非難もある同作だが、よく見ると実は肌の露出は少ない。DECIDER誌は、肌を必要以上に露出せず、演技と脚本で魅せるエンターテイメント性のあるドラマになっていると評価する。

Hollywood Reporter誌も、「魅力的な若いキャストを悪用することなくヌードを完全に避け、(配信に堪えないものは)見せていない」と書く。そして、それでもエンターテイニングであるとの総合評価を与えている。もちろん、それは脚本とディレクター、俳優陣の力であるが、Hollywood Reporter誌は映像の美しさに注目。ちらりと背景に見えるローマの観光名所、絵ハガキで見たことがあるような風景もドラマの魅力の一つとなっている。

シーズン2では、いよいよ主人公の二人が夜の秘密の世界にはまっていく。二人はどう変わっていくのか、セクシーシーンが増えるのか、それとも、上品で美しい路線を守るのか、期待を持って観たいシリーズである。

(海外ドラマNAVI)

Photo:『Baby/ベイビー』Francesco Berardinelli/Netflix